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第二幕 回避の為=世界の為
vs25 回避するには
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ギルベルトとは明日、宝物殿へ行く約束をした。
その夜はお風呂から上がると疲れてしまい、すぐに眠りに落ちた。
マリミエドの代わりに、ギルベルトの夢の中にリュミエリーナが現れる。
「いい?何も言わずに聞きなさい」
「あ、女神だ」
「何も言わずに!」
「いや、だって無理だろう。女神像が生身で居たら驚くし」
「驚いてないじゃないの!」
「いや、俺の女神はリュミだけど、リュミエリーナの事じゃないし」
「ムカつく…なんでこんな男を〝代理人〟にしたのかしら…」
リュミエリーナはイライラしながら呟いて、ギルベルトを睨み付ける。
「とにかくそのリュミの為だから聞きなさい!この世界を正しい方向へ導く決心をしたなら、世界樹にこう言うの。〝私は代わりに世界の理を正す〟と、いいわね?!」
翌日。
夢も見ない程に熟睡して目が覚めると、マリミエドは起き上がって背伸びをする。
「ん~~…よく眠れたわ…」
「おはようございます、マリミエドお嬢様」
「おはよう、エレナ、アメリア」
挨拶を交わしていつものように身支度を整える。
「今日はお兄様と宝物殿に行くわ。ワンピースは…そうね、神殿だからラベンダーでお願い」
「はい」
着替えた所にノックの音がする。
「リュミ…いいかい?」
「どうぞ」
座ったまま声を掛けると、ギルベルトが眠そうな顔で入ってくる。
「おはようリュミ…リュミからの伝言があるんだ」
「お兄様、眠れなかったの?リュミはわたくしよ」
「ああ、寝不足でね。ええと…リュミエリーナだ、女神の。何だか知らんが夢を見てね…〝世界を正しい方向へ導く決心をしたら世界樹にこう言え、〝私は代わりに世界の理を正す〟と〟って言う伝言なんだが…意味が分かるかい?」
「ーーそういえば、昨日夢でリュミエリーナさまにお会いしましたわ。とても美しくてお綺麗で…」
「リュミの方が綺麗だったよ…」
そう言ってギルベルトはマリミエドに抱き着いてその膝に頭を乗せて目を閉じる。
「お兄様、寝ては駄目よ。朝食は?」
「んん…。女神が夢に何度も出るんだよ……リュミを攫っていこうとしたり、何故か叩いてきたり…」
「まあ…それは喜べないわね。さあお兄様、朝食に行きましょう」
マリミエドはギルベルトを押してから腕を引っ張った。
「分かったよ…」
まだ眠そうに目をこすってから、ギルベルトはマリミエドをエスコートした。
馬車に乗って宝物殿に行く間に、女神の言葉について話し合う。
「世界を正しい方向へ、などと言っていたが…何故そんな大事になったんだろうか?」
「分かりませんわ…」
「女神や世界樹の言葉では、斬首刑の回避には世界そのものを変えなければならない、という事になるな」
「ええ…」
「その覚悟をしろというのか…」
呟いてギルベルトは考え込む。
「世界樹に会って、それを聞かなくてはなりませんわ」
マリミエドの言葉にギルベルトが頷く。
宝物殿に行くと、何故かユークレースが待っていた。
「ユークレース…どうした?」
「分からんが、何故か来なくてはならない気がして。で、来てみたらお前達の馬車が見えたから待っていた」
ユークレースがそう言う。
「ああ…では入ろうか、ユークレース」
「…ん?俺が記録しろと?」
「ああ」
ギルベルトが満面の笑みで答える。
「…仕方が無い」
ユークレースが神官に申し出て記録をする。
ギルベルトはマリミエドをエスコートシたまま中に入る。
それにユークレースと、エレナ、アメリアが続く。
マリミエドが一人にならないように一塊となって移動していた。
「リュミ、どの辺りにあったんだい?」
「確かこちらですわ」
この前あった場所にくるが、やはり何も無い。
ふと、白い光が見えてマリミエドが手を離して歩き出す。
「リュミ!」
ギルベルトが咄嗟に手を掴み、エレナがマリミエドの左手を握った。
「ああ、ほら場所が変わっただけでありますわ…よ?」
振り向くとギルベルトが居なくなっていた。
しかしエレナは隣りに居たので安心する。
「エレナ、ほら嘘じゃないでしょう?」
そう聞くと、エレナは驚いて辺りを見回す。
「はい、ですが…」
「ほら、ガラスケースの中に本があるわ」
そう言ってマリミエドは本をめくる。
…しかし、選ばれてはいないエレナに、それは見えていなかった。
ただ真っ暗な空間の中でマリミエドが喋る。
「世界樹と話したいの」
すると目の前に金や銀の葉を付けた世界樹が現れる。
それはエレナにも見えた。
〈邪魔をしてはいけない!!〉
そう思い、エレナは声を出さないように左手で自分の口を塞いだ。
マリミエドは真顔で世界樹に言う。
「わたくしが未来の斬首刑を回避するには、世界まで変えなくてはならないの?」
『コノ世界そのものが、アル世界にゲームとして紹介されていた。それが呪縛となり、この世界はある一定の時間だけを刻んだ。その世界からやってきた転生者はコノ世界デ永遠のゲームをしたい、と言っていた。そして、コノ世界で永遠のゲームを楽しんだ…マリアと同じように』
「呪縛…転生者…」
『つい最近、やっと呪縛から解放されたが、最初ノ転生者の呪いが溢れてきている…そレを、封印しなくては、お前もまた時を繰り返すだけとなるだろう…』
「それは何処にあるのですか?」
『王家の秘境…』
「王家の…確か狩猟大会がそこで行われるわ」
『封印ノ際に転生者にターゲットのアイテムを捧げレば、満足して己の世界へ還る。奴らが消えレば時空の歪みの封印が出来るのだ』
「え…マリアさんは?」
『己の世界へ還るカーーーこの世界で生きていくか…アレはもう直時空の歪みニ囚われる定メ』
「あの…まだ理解が追い付かないのですが…」
『理解は後でイい。ソレまでにアイテムを集めロ。アイテムの事は、マリアのノートに書かれていよう……ソレと同時に、覚悟をシテ来い…話はソレからだ』
それだけ言い、世界樹は消えた。
そして景色も戻り、青ざめたギルベルトとユークレースとアメリアが居た。
「お兄様…」
「リュミ!」
ギルベルトはマリミエドをギュッと抱き締める。
「良かった…時空の狭間にでも落ちたのかと思った…」
「…あの…また透けてました?」
「忽然と消えていたんだ…何処にも居なかった」
ユークレースが真顔で言う。
「…心配を掛けてごめんなさい」
「いいんだ、リュミのせいじゃない。出よう」
ギルベルトはマリミエドを素早くエスコートしてその場を後にした。
他の者も続いて宝物殿を後にした。
その夜はお風呂から上がると疲れてしまい、すぐに眠りに落ちた。
マリミエドの代わりに、ギルベルトの夢の中にリュミエリーナが現れる。
「いい?何も言わずに聞きなさい」
「あ、女神だ」
「何も言わずに!」
「いや、だって無理だろう。女神像が生身で居たら驚くし」
「驚いてないじゃないの!」
「いや、俺の女神はリュミだけど、リュミエリーナの事じゃないし」
「ムカつく…なんでこんな男を〝代理人〟にしたのかしら…」
リュミエリーナはイライラしながら呟いて、ギルベルトを睨み付ける。
「とにかくそのリュミの為だから聞きなさい!この世界を正しい方向へ導く決心をしたなら、世界樹にこう言うの。〝私は代わりに世界の理を正す〟と、いいわね?!」
翌日。
夢も見ない程に熟睡して目が覚めると、マリミエドは起き上がって背伸びをする。
「ん~~…よく眠れたわ…」
「おはようございます、マリミエドお嬢様」
「おはよう、エレナ、アメリア」
挨拶を交わしていつものように身支度を整える。
「今日はお兄様と宝物殿に行くわ。ワンピースは…そうね、神殿だからラベンダーでお願い」
「はい」
着替えた所にノックの音がする。
「リュミ…いいかい?」
「どうぞ」
座ったまま声を掛けると、ギルベルトが眠そうな顔で入ってくる。
「おはようリュミ…リュミからの伝言があるんだ」
「お兄様、眠れなかったの?リュミはわたくしよ」
「ああ、寝不足でね。ええと…リュミエリーナだ、女神の。何だか知らんが夢を見てね…〝世界を正しい方向へ導く決心をしたら世界樹にこう言え、〝私は代わりに世界の理を正す〟と〟って言う伝言なんだが…意味が分かるかい?」
「ーーそういえば、昨日夢でリュミエリーナさまにお会いしましたわ。とても美しくてお綺麗で…」
「リュミの方が綺麗だったよ…」
そう言ってギルベルトはマリミエドに抱き着いてその膝に頭を乗せて目を閉じる。
「お兄様、寝ては駄目よ。朝食は?」
「んん…。女神が夢に何度も出るんだよ……リュミを攫っていこうとしたり、何故か叩いてきたり…」
「まあ…それは喜べないわね。さあお兄様、朝食に行きましょう」
マリミエドはギルベルトを押してから腕を引っ張った。
「分かったよ…」
まだ眠そうに目をこすってから、ギルベルトはマリミエドをエスコートした。
馬車に乗って宝物殿に行く間に、女神の言葉について話し合う。
「世界を正しい方向へ、などと言っていたが…何故そんな大事になったんだろうか?」
「分かりませんわ…」
「女神や世界樹の言葉では、斬首刑の回避には世界そのものを変えなければならない、という事になるな」
「ええ…」
「その覚悟をしろというのか…」
呟いてギルベルトは考え込む。
「世界樹に会って、それを聞かなくてはなりませんわ」
マリミエドの言葉にギルベルトが頷く。
宝物殿に行くと、何故かユークレースが待っていた。
「ユークレース…どうした?」
「分からんが、何故か来なくてはならない気がして。で、来てみたらお前達の馬車が見えたから待っていた」
ユークレースがそう言う。
「ああ…では入ろうか、ユークレース」
「…ん?俺が記録しろと?」
「ああ」
ギルベルトが満面の笑みで答える。
「…仕方が無い」
ユークレースが神官に申し出て記録をする。
ギルベルトはマリミエドをエスコートシたまま中に入る。
それにユークレースと、エレナ、アメリアが続く。
マリミエドが一人にならないように一塊となって移動していた。
「リュミ、どの辺りにあったんだい?」
「確かこちらですわ」
この前あった場所にくるが、やはり何も無い。
ふと、白い光が見えてマリミエドが手を離して歩き出す。
「リュミ!」
ギルベルトが咄嗟に手を掴み、エレナがマリミエドの左手を握った。
「ああ、ほら場所が変わっただけでありますわ…よ?」
振り向くとギルベルトが居なくなっていた。
しかしエレナは隣りに居たので安心する。
「エレナ、ほら嘘じゃないでしょう?」
そう聞くと、エレナは驚いて辺りを見回す。
「はい、ですが…」
「ほら、ガラスケースの中に本があるわ」
そう言ってマリミエドは本をめくる。
…しかし、選ばれてはいないエレナに、それは見えていなかった。
ただ真っ暗な空間の中でマリミエドが喋る。
「世界樹と話したいの」
すると目の前に金や銀の葉を付けた世界樹が現れる。
それはエレナにも見えた。
〈邪魔をしてはいけない!!〉
そう思い、エレナは声を出さないように左手で自分の口を塞いだ。
マリミエドは真顔で世界樹に言う。
「わたくしが未来の斬首刑を回避するには、世界まで変えなくてはならないの?」
『コノ世界そのものが、アル世界にゲームとして紹介されていた。それが呪縛となり、この世界はある一定の時間だけを刻んだ。その世界からやってきた転生者はコノ世界デ永遠のゲームをしたい、と言っていた。そして、コノ世界で永遠のゲームを楽しんだ…マリアと同じように』
「呪縛…転生者…」
『つい最近、やっと呪縛から解放されたが、最初ノ転生者の呪いが溢れてきている…そレを、封印しなくては、お前もまた時を繰り返すだけとなるだろう…』
「それは何処にあるのですか?」
『王家の秘境…』
「王家の…確か狩猟大会がそこで行われるわ」
『封印ノ際に転生者にターゲットのアイテムを捧げレば、満足して己の世界へ還る。奴らが消えレば時空の歪みの封印が出来るのだ』
「え…マリアさんは?」
『己の世界へ還るカーーーこの世界で生きていくか…アレはもう直時空の歪みニ囚われる定メ』
「あの…まだ理解が追い付かないのですが…」
『理解は後でイい。ソレまでにアイテムを集めロ。アイテムの事は、マリアのノートに書かれていよう……ソレと同時に、覚悟をシテ来い…話はソレからだ』
それだけ言い、世界樹は消えた。
そして景色も戻り、青ざめたギルベルトとユークレースとアメリアが居た。
「お兄様…」
「リュミ!」
ギルベルトはマリミエドをギュッと抱き締める。
「良かった…時空の狭間にでも落ちたのかと思った…」
「…あの…また透けてました?」
「忽然と消えていたんだ…何処にも居なかった」
ユークレースが真顔で言う。
「…心配を掛けてごめんなさい」
「いいんだ、リュミのせいじゃない。出よう」
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