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第二幕 回避の為=世界の為
vs04 図書館にて
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ランチにはパスタのレストランを選んだ。
マリミエドが楽しみだと言うので、3人でレストランに入る。
「羊肉のソテーとトマトパスタかな」
メニューを見ながらギルベルトが言う。
「ムニエルとラザニアで。…君は?」
ユークレースが注文してからマリミエドに聞く。
「迷いますわ……鶏肉のリゾットもいいし、鴨肉のポワレやパニーニも美味しそうで…」
「ではそれらと…後は任せよう」
ギルベルトがそう注文する。
前菜が運ばれたので、ハムを食べながらギルベルトが言う。
「明日はテストだったな…学年一位は誰になるやら」
「去年は誰でしたの?」
チーズを食べながらマリミエドが聞くと、ユークレースがサラミを食べながら言う。
「ギルベルトだな。…今年は妹に負けるのか」
「一点差で君に負けるかもな」
笑いながらギルベルトが言う。
冗談を言い合える仲なのだなとマリミエドは微笑ましく見つめた。
「そういえば、アルビオンは来るのかね」
ギルベルトが問い掛けると、ユークレースは唸る。
「あいつも君と同じく宰相の息子だからな…君が来れば来るさ」
「何だか意味深に言うな。俺はアルビオンとは張り合わないよ」
「向こうは張り合うだろう?どちらの家が主権を握るか決まるかもしれないんだから」
ユークレースが言った所でサラダやリゾット、スープとパスタが運ばれる。
トマトパスタを食べながらギルベルトが笑って言う。
「学院のテスト如きで主権が握れるなら、容易い国だな」
「握れるだろう?向こうの家は軍事にまで手を出しているらしいからな。国でも乗っ取る気じゃ無いのか?…おっと、ご令嬢の前で話す事では無かったな」
ユークレースがスープを飲んで言うと、マリミエドがリゾットを食べながら言う。
「いいえ大丈夫ですわ。お兄様が未来の宰相でしたら、安心ですわね」
「…どうかな」
ユークレースが否定気味に言うと、ギルベルトが微笑んで言う。
「どうだろうな。…噂をすれば何とやら、あそこにいるのはアルビオンじゃないか」
見ると、向かいのカフェテリアにアルビオンとフォンディ男爵令息のライアン、フレーズベルグ辺境伯令息のクリフォードが居た。
「クリフォードの奴は顔が広いな」
ユークレースが苦笑して言う。
〈確かに、友好が幅広いわ〉
マリミエドが思う。
この前もレアノルドと共にお茶会に来ていた。
クリフォードと共にいる2人とは、まだ会話も出来ていない…。
マリミエドは鶏肉を食べながら、その3人を見つめる。
〈もうマリアさんとはお話してるでしょうね…〉
もうマリアの味方なのだろうか?
しかし、前と違う。
ベルンハルトは夏の海のパーティーでマリアと出会う筈だったのに、基礎体力の授業で出会っている。
もしかしたら、前とは違う道を歩んでいるのかもしれない。
〈そうだとしたら、予測が出来ないわ…〉
そう考えているとギルベルトの声がする。
「大丈夫か?」
「え?何がです?」
「…リュミの好きなティラミスが来ているのに、一口も食べずに考え込んでいるから心配になってね…まだ具合が悪いんじゃないか?」
「そんな事は…いただきますわ」
何かを言い掛けてティラミスを見て、〝美味しそう〟だと思い、素直に食べる事にした。
そんな所が、まだ14歳の少女らしかった。
ギルベルトとユークレースは微笑してマリミエドを見る。
ユークレースはハッとして自分もティラミスを食べた。
ランチの後、マリミエドが王立図書館に行くと言ったら何故かギルベルトとユークレースが付いてきた。
「さて…何を調べるんだ?」
ギルベルトが聞くと、マリミエドが答える。
「世界樹と魔物についてですわ」
「世界樹と…」とギルベルトが言い、
「魔物?」とユークレースが聞く。
マリミエドは手を頬に当てながらためらいがちに答えた。
「世界樹は何故一つの願いを叶えるのかーーーその答えをわたくしは知りません」
「…確かに分からないな」
ユークレースが呟く。
「魔物は………あの、怒らないで下さいね?何故、魔物を倒すのかが分からなくて調べますの」
「…は?」
ギルベルトが思わず言う。
「そんなの、我々に危害を加えるからに決まっているだろう」
ユークレースが当然のように言うと、マリミエドが反論する。
「果たしてそうでしょうか?」
「何?」
「もしかしたら、我々が何かを侵してしまったのではありませんか?自然を破壊し、領土を広げているのは我々のみです」
「それは、しかし…」
「人間は偉くはありません。太古から生きているのは魔物も同じですわ」
「……分かった。その理論で調べるのなら納得だ」
ユークレースが言い、ギルベルトも頷いてくれた。
〈良かった…怒られるかと思ったわ〉
魔物は倒すべき存在だという意見が当然なのだ。
3人同じテーブルで、それぞれ世界樹と魔物についての本を調べていると、先程のアルビオン一行がやってくる。
「これはこれはメイナード家の麗しいご兄妹と魔道師どの。お勉強会ですかな?」
「………」
誰も返事をしない。
アルビオンはカッとして言う。
「挨拶くらい出来ないのか?!」
「ヴィルヘルム令息、お静かに願えますか?ここは図書館ですわ」
マリミエドが言うと、アルビオンはグッと言葉を詰まらせる。
するとマリミエドが立ち上がってカーテシーをして挨拶をする。
「ご機嫌よう、ヴィルヘルム令息、フレーズベルグ令息、フォンディ令息」
「ご機嫌よう、メイナード令嬢」
そう返したのはクリフォードだ。
クリフォードはポンポンとアルビオンの肩を叩く。
「まあ落ち着いて。挨拶もしたし、我々は隣りの博物館へ行こうか」
そう言い促すと、アルビオンとライアンは歩き出す。
〝した〟という言い回しは、アルビオンにとって、マリミエドが挨拶をしてきたという上位に立っている意味を表していた。
…クリフォードはただ単に〝アルビオンが挨拶した〟という意味で言っていたが、ちょうどいい言葉だった。
クリフォードは苦笑いをして小声で言う。
「騒がせて済まない」
「いや問題ない」
ギルベルトが答え、ユークレースも頷くのを見てから、クリフォードは2人に続いた。
「…そんなに挨拶したかったとはな」
ギルベルトが呟くと、ユークレースがクッと笑う。
勿論そうではなく、馬鹿にしにきたのは知っているのだ。
それを知らないマリミエドが尋ねる。
「お兄様はヴィルヘルム令息と仲が悪いのですか?」
「仲が悪いというか…絡まれるというか……」
「いがみ合ってはいらっしゃらないのですね?」
「ああ。上手くかわしているよ」
ギルベルトの返事を聞いてホッとして、マリミエドはページをめくる。
「載ってないな…」
ユークレースが呟いて本を閉じた。
「何故願いを叶えるのか書いている本などあるのか?」
「それを探す為に調べているのですわ」
マリミエドが本を読みながら答える。
「こういう事は使用人にやらせたらどうだ?」
「使用人には使用人の仕事があります。わたくしは自分で調べたいのです。それに、皆も手伝ってくれてますわ」
そう言い見る先に、メイド2人と騎士達がテーブルに山と積まれた本を見ている姿がある。
「そういえば、アメリア君は卒業したらしいな」
アメリアが会釈したのを見てユークレースが言う。
「ええ、わたくしのメイドとして働いております」
「…まあ、聖女なんてならない方がいいだろう。タダ働きだし、平民にはキツイ」
それには答えようがなく、マリミエドは本を閉じて違う本を探しに行く。
〈…王室の閲覧許可が必要な場所は…?〉
ふと思う。
王室の宝物殿になら、何か隠してあるのでは無いか、と…。
国に都合の悪い物や秘密の何かがーーー。
それは3人共思って、マリミエドが話そうとテーブルに戻ると2人が口を開いた。
「宝物殿ならーーー」
ギルベルトとユークレースが共に言い、顔を見合わせて続けて2人で言う。
「あるんじゃないか?」
「ふふ」
2人で息ぴったりに言うので、マリミエドは思わず笑って口元を押さえた。
すると2人共真っ赤になって互いを見る。
「なんでお前が言うんだ」
「君こそ俺のセリフを取るな」
クスクスとマリミエドに笑われて、2人は顔を反らした。
マリミエドは座って言う。
「宝物殿は貴族といえど閲覧は月に一度です。けれど、何かあるのなら…見たいですわ」
「…あるかもな。どうする?」
ユークレースがギルベルトに聞く。
ギルベルトはしばし顎に手を当てて考えてから、ピンと閃いて言う。
「アルビオンを使おう!」
マリミエドが楽しみだと言うので、3人でレストランに入る。
「羊肉のソテーとトマトパスタかな」
メニューを見ながらギルベルトが言う。
「ムニエルとラザニアで。…君は?」
ユークレースが注文してからマリミエドに聞く。
「迷いますわ……鶏肉のリゾットもいいし、鴨肉のポワレやパニーニも美味しそうで…」
「ではそれらと…後は任せよう」
ギルベルトがそう注文する。
前菜が運ばれたので、ハムを食べながらギルベルトが言う。
「明日はテストだったな…学年一位は誰になるやら」
「去年は誰でしたの?」
チーズを食べながらマリミエドが聞くと、ユークレースがサラミを食べながら言う。
「ギルベルトだな。…今年は妹に負けるのか」
「一点差で君に負けるかもな」
笑いながらギルベルトが言う。
冗談を言い合える仲なのだなとマリミエドは微笑ましく見つめた。
「そういえば、アルビオンは来るのかね」
ギルベルトが問い掛けると、ユークレースは唸る。
「あいつも君と同じく宰相の息子だからな…君が来れば来るさ」
「何だか意味深に言うな。俺はアルビオンとは張り合わないよ」
「向こうは張り合うだろう?どちらの家が主権を握るか決まるかもしれないんだから」
ユークレースが言った所でサラダやリゾット、スープとパスタが運ばれる。
トマトパスタを食べながらギルベルトが笑って言う。
「学院のテスト如きで主権が握れるなら、容易い国だな」
「握れるだろう?向こうの家は軍事にまで手を出しているらしいからな。国でも乗っ取る気じゃ無いのか?…おっと、ご令嬢の前で話す事では無かったな」
ユークレースがスープを飲んで言うと、マリミエドがリゾットを食べながら言う。
「いいえ大丈夫ですわ。お兄様が未来の宰相でしたら、安心ですわね」
「…どうかな」
ユークレースが否定気味に言うと、ギルベルトが微笑んで言う。
「どうだろうな。…噂をすれば何とやら、あそこにいるのはアルビオンじゃないか」
見ると、向かいのカフェテリアにアルビオンとフォンディ男爵令息のライアン、フレーズベルグ辺境伯令息のクリフォードが居た。
「クリフォードの奴は顔が広いな」
ユークレースが苦笑して言う。
〈確かに、友好が幅広いわ〉
マリミエドが思う。
この前もレアノルドと共にお茶会に来ていた。
クリフォードと共にいる2人とは、まだ会話も出来ていない…。
マリミエドは鶏肉を食べながら、その3人を見つめる。
〈もうマリアさんとはお話してるでしょうね…〉
もうマリアの味方なのだろうか?
しかし、前と違う。
ベルンハルトは夏の海のパーティーでマリアと出会う筈だったのに、基礎体力の授業で出会っている。
もしかしたら、前とは違う道を歩んでいるのかもしれない。
〈そうだとしたら、予測が出来ないわ…〉
そう考えているとギルベルトの声がする。
「大丈夫か?」
「え?何がです?」
「…リュミの好きなティラミスが来ているのに、一口も食べずに考え込んでいるから心配になってね…まだ具合が悪いんじゃないか?」
「そんな事は…いただきますわ」
何かを言い掛けてティラミスを見て、〝美味しそう〟だと思い、素直に食べる事にした。
そんな所が、まだ14歳の少女らしかった。
ギルベルトとユークレースは微笑してマリミエドを見る。
ユークレースはハッとして自分もティラミスを食べた。
ランチの後、マリミエドが王立図書館に行くと言ったら何故かギルベルトとユークレースが付いてきた。
「さて…何を調べるんだ?」
ギルベルトが聞くと、マリミエドが答える。
「世界樹と魔物についてですわ」
「世界樹と…」とギルベルトが言い、
「魔物?」とユークレースが聞く。
マリミエドは手を頬に当てながらためらいがちに答えた。
「世界樹は何故一つの願いを叶えるのかーーーその答えをわたくしは知りません」
「…確かに分からないな」
ユークレースが呟く。
「魔物は………あの、怒らないで下さいね?何故、魔物を倒すのかが分からなくて調べますの」
「…は?」
ギルベルトが思わず言う。
「そんなの、我々に危害を加えるからに決まっているだろう」
ユークレースが当然のように言うと、マリミエドが反論する。
「果たしてそうでしょうか?」
「何?」
「もしかしたら、我々が何かを侵してしまったのではありませんか?自然を破壊し、領土を広げているのは我々のみです」
「それは、しかし…」
「人間は偉くはありません。太古から生きているのは魔物も同じですわ」
「……分かった。その理論で調べるのなら納得だ」
ユークレースが言い、ギルベルトも頷いてくれた。
〈良かった…怒られるかと思ったわ〉
魔物は倒すべき存在だという意見が当然なのだ。
3人同じテーブルで、それぞれ世界樹と魔物についての本を調べていると、先程のアルビオン一行がやってくる。
「これはこれはメイナード家の麗しいご兄妹と魔道師どの。お勉強会ですかな?」
「………」
誰も返事をしない。
アルビオンはカッとして言う。
「挨拶くらい出来ないのか?!」
「ヴィルヘルム令息、お静かに願えますか?ここは図書館ですわ」
マリミエドが言うと、アルビオンはグッと言葉を詰まらせる。
するとマリミエドが立ち上がってカーテシーをして挨拶をする。
「ご機嫌よう、ヴィルヘルム令息、フレーズベルグ令息、フォンディ令息」
「ご機嫌よう、メイナード令嬢」
そう返したのはクリフォードだ。
クリフォードはポンポンとアルビオンの肩を叩く。
「まあ落ち着いて。挨拶もしたし、我々は隣りの博物館へ行こうか」
そう言い促すと、アルビオンとライアンは歩き出す。
〝した〟という言い回しは、アルビオンにとって、マリミエドが挨拶をしてきたという上位に立っている意味を表していた。
…クリフォードはただ単に〝アルビオンが挨拶した〟という意味で言っていたが、ちょうどいい言葉だった。
クリフォードは苦笑いをして小声で言う。
「騒がせて済まない」
「いや問題ない」
ギルベルトが答え、ユークレースも頷くのを見てから、クリフォードは2人に続いた。
「…そんなに挨拶したかったとはな」
ギルベルトが呟くと、ユークレースがクッと笑う。
勿論そうではなく、馬鹿にしにきたのは知っているのだ。
それを知らないマリミエドが尋ねる。
「お兄様はヴィルヘルム令息と仲が悪いのですか?」
「仲が悪いというか…絡まれるというか……」
「いがみ合ってはいらっしゃらないのですね?」
「ああ。上手くかわしているよ」
ギルベルトの返事を聞いてホッとして、マリミエドはページをめくる。
「載ってないな…」
ユークレースが呟いて本を閉じた。
「何故願いを叶えるのか書いている本などあるのか?」
「それを探す為に調べているのですわ」
マリミエドが本を読みながら答える。
「こういう事は使用人にやらせたらどうだ?」
「使用人には使用人の仕事があります。わたくしは自分で調べたいのです。それに、皆も手伝ってくれてますわ」
そう言い見る先に、メイド2人と騎士達がテーブルに山と積まれた本を見ている姿がある。
「そういえば、アメリア君は卒業したらしいな」
アメリアが会釈したのを見てユークレースが言う。
「ええ、わたくしのメイドとして働いております」
「…まあ、聖女なんてならない方がいいだろう。タダ働きだし、平民にはキツイ」
それには答えようがなく、マリミエドは本を閉じて違う本を探しに行く。
〈…王室の閲覧許可が必要な場所は…?〉
ふと思う。
王室の宝物殿になら、何か隠してあるのでは無いか、と…。
国に都合の悪い物や秘密の何かがーーー。
それは3人共思って、マリミエドが話そうとテーブルに戻ると2人が口を開いた。
「宝物殿ならーーー」
ギルベルトとユークレースが共に言い、顔を見合わせて続けて2人で言う。
「あるんじゃないか?」
「ふふ」
2人で息ぴったりに言うので、マリミエドは思わず笑って口元を押さえた。
すると2人共真っ赤になって互いを見る。
「なんでお前が言うんだ」
「君こそ俺のセリフを取るな」
クスクスとマリミエドに笑われて、2人は顔を反らした。
マリミエドは座って言う。
「宝物殿は貴族といえど閲覧は月に一度です。けれど、何かあるのなら…見たいですわ」
「…あるかもな。どうする?」
ユークレースがギルベルトに聞く。
ギルベルトはしばし顎に手を当てて考えてから、ピンと閃いて言う。
「アルビオンを使おう!」
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