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第一幕 断罪からの始まり
vs42 世界樹のお話
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晩餐の後で、珍しく妹達が本を抱えてマリミエドに寄ってきた。
「リュミお姉様! このご本読んで下さいませ!」
そう言い差し出した本は、聖書にもある〝世界樹〟のお話。
マリミエドはにっこり笑って頷く。
「ええいいわ。それではあちらのソファーに行きましょうか」
そう言い姉妹でラウンジのソファーに行くと、ギルベルトが付いてくる。
マリミエドはくすっと笑いながら、2人の妹達に読み聞かせる。
「昔、この世界の天はその重みで地とくっついていました。風の精霊達が頑張っても、国一つ分の空を持ち上げるのが精一杯でした。そこで初代皇帝シャルル・ノワルは世界樹を探す旅に出る事を決意します。世界樹は、精霊界の神の力の宿る樹で、見付けたら一つだけ願いを叶えてくれると言われていたからです」
嵐の中の船旅にも挫けず、襲い来るアンデッドの群れも蹴散らし、皇帝の率いる一隊は砂漠を乗り越えてやっと、〝この世の果て〟に辿り着く。
〝この世の果て〟でシャルル・ノワルはついに精霊界への扉を見付けた。
世界樹を見たシャルル・ノワルは枝に触れて言う。
「どうか、天を支える存在となって欲しい」
とーーー。
その言葉の後、世界樹は天を支えて今の広い世界が生まれたのだ。
「おしまい」
マリミエドが言い本を閉じる。
「世界樹はどうして天を支えたの?」
妹が聞く。
「シャルル・ノワル陛下がそう願ったからよ」
「願いはなんでもいいの?」
「何でも叶うとされているわ」
「何故叶えるの?」
「何故………何故かしらね」
言われてみると不思議だ。
何故願いを叶えてくれるのだろう?
「…今度調べておくわ」
マリミエドがそう言った所で、母がやってくる。
「さあ、良い子はもう眠る時間よ。リュミも、夜更かしは駄目よ」
「はぁい」
妹達が答えて駆けていく。
マリミエドはお辞儀をした。
「はいお母様。おやすみなさいませ」
「…おやすみなさい」
答える母は、何処かぎこちない。
去っていく母を見つめながらギルベルトが思った。
〈接し方が分からないのかな…〉
やはり、接近を禁じた家庭教師が悪いだろう。
今は公爵家の指導をしているらしい。
確かに淑女になるのだから、引く手あまただろう…。
ギルベルトは紅茶を飲んでマリミエドに話す。
「リュミ、明日の授業は?」
「数学と歴史学と魔法で…あーーー」
また魔法の授業があるが、校庭に魔物の子が迷い込んで、殺される事があった筈…。
「明日は体力を使う授業があるので、先に寝ますね」
「ん…おやすみ、リュミ」
「おやすみなさい、お兄様」
マリミエドは笑って言い、部屋に行く。
そして、ネグリジェに着替えてエレナも下がると魔物の図鑑を取り出した。
「氷の狼だったような…それともフェンリル…?」
確かどちらかに見えたのだが、マリアとユークレースが倒してしまったので分からない。
その子供を殺した数日後に、魔物の襲来があるのだ。
それを阻止したい。
「あの子を救いたいわ…」
図鑑にも、氷の狼やフェンリルは凶暴で高慢で人を殺すのを楽しんでいる、とは書かれているが…どうも納得出来ない。
マリミエドは学院に行ったらすぐに探そうと決意して布団に入ったーーー。
「リュミお姉様! このご本読んで下さいませ!」
そう言い差し出した本は、聖書にもある〝世界樹〟のお話。
マリミエドはにっこり笑って頷く。
「ええいいわ。それではあちらのソファーに行きましょうか」
そう言い姉妹でラウンジのソファーに行くと、ギルベルトが付いてくる。
マリミエドはくすっと笑いながら、2人の妹達に読み聞かせる。
「昔、この世界の天はその重みで地とくっついていました。風の精霊達が頑張っても、国一つ分の空を持ち上げるのが精一杯でした。そこで初代皇帝シャルル・ノワルは世界樹を探す旅に出る事を決意します。世界樹は、精霊界の神の力の宿る樹で、見付けたら一つだけ願いを叶えてくれると言われていたからです」
嵐の中の船旅にも挫けず、襲い来るアンデッドの群れも蹴散らし、皇帝の率いる一隊は砂漠を乗り越えてやっと、〝この世の果て〟に辿り着く。
〝この世の果て〟でシャルル・ノワルはついに精霊界への扉を見付けた。
世界樹を見たシャルル・ノワルは枝に触れて言う。
「どうか、天を支える存在となって欲しい」
とーーー。
その言葉の後、世界樹は天を支えて今の広い世界が生まれたのだ。
「おしまい」
マリミエドが言い本を閉じる。
「世界樹はどうして天を支えたの?」
妹が聞く。
「シャルル・ノワル陛下がそう願ったからよ」
「願いはなんでもいいの?」
「何でも叶うとされているわ」
「何故叶えるの?」
「何故………何故かしらね」
言われてみると不思議だ。
何故願いを叶えてくれるのだろう?
「…今度調べておくわ」
マリミエドがそう言った所で、母がやってくる。
「さあ、良い子はもう眠る時間よ。リュミも、夜更かしは駄目よ」
「はぁい」
妹達が答えて駆けていく。
マリミエドはお辞儀をした。
「はいお母様。おやすみなさいませ」
「…おやすみなさい」
答える母は、何処かぎこちない。
去っていく母を見つめながらギルベルトが思った。
〈接し方が分からないのかな…〉
やはり、接近を禁じた家庭教師が悪いだろう。
今は公爵家の指導をしているらしい。
確かに淑女になるのだから、引く手あまただろう…。
ギルベルトは紅茶を飲んでマリミエドに話す。
「リュミ、明日の授業は?」
「数学と歴史学と魔法で…あーーー」
また魔法の授業があるが、校庭に魔物の子が迷い込んで、殺される事があった筈…。
「明日は体力を使う授業があるので、先に寝ますね」
「ん…おやすみ、リュミ」
「おやすみなさい、お兄様」
マリミエドは笑って言い、部屋に行く。
そして、ネグリジェに着替えてエレナも下がると魔物の図鑑を取り出した。
「氷の狼だったような…それともフェンリル…?」
確かどちらかに見えたのだが、マリアとユークレースが倒してしまったので分からない。
その子供を殺した数日後に、魔物の襲来があるのだ。
それを阻止したい。
「あの子を救いたいわ…」
図鑑にも、氷の狼やフェンリルは凶暴で高慢で人を殺すのを楽しんでいる、とは書かれているが…どうも納得出来ない。
マリミエドは学院に行ったらすぐに探そうと決意して布団に入ったーーー。
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