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第一幕 断罪からの始まり

vs39 兄とのデート

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まだ時間があったので、ギルベルトはマリミエドを連れてレストランに入る。
「お兄様、まだ晩餐には早いですわ」
「ただのお茶会と同じだよ。…貴族令嬢が入れる喫茶店は無いからね」
ギルベルトはそう言って奥の部屋にエスコートする。
 この世界の喫茶店は、お酒も販売しているので女性が入るには危険なのだ。
それに、男性が集って政治や世論の話をする場だと決まっていて、気軽に入れない。
お茶やケーキを楽しむには、レストランに入るしかないのだ。
奥は、貴族用の個室が幾つかある。
その内の白を基調とした上品な部屋を選んで入った。
マリミエドを座らせてからギルベルトが正面に座る。
「さて…リュミはベリータルトかな?」
「そんなに毎日食べませんわ。…好きですけど…」
マリミエドが照れたように言う。
ギルベルトは笑ってメニューを見せた。
「ほら、好きなお菓子を選んで」
「…もう」
いつもお菓子ばかり食べているような言い方にムッとしながらも、マリミエドはメニューを見た。
その中でも、コーヒーのムースや紅茶のシフォンケーキなどが目に付いて気になる。
フルーツケーキならよく見るが、コーヒーや紅茶を使ったケーキは見た事が無いからだ。
「この2つが気になります…」
「へえ…コーヒーか…甘くなければ俺も食べられるけど、どうかな?」
言いながらそのケーキと軽食としてサンドウィッチと紅茶を注文した。
「…リュミ、次の休みの歌劇はまだ初代皇帝だそうだよ」
「本当ですか?!」
「ほら、パンフレットを買ってきたから…」
そう言いパンフレットを渡すと、マリミエドは嬉しそうにページをめくる。
「まあ、忠実に再現されるのですね」
中のストーリーを見ている所に紅茶などが運ばれてくる。
「まあ…」
テーブルに並べられたコーヒーのムースにはチョコレートで作った花が飾られているし、紅茶のシフォンケーキには生クリームとシロップ漬けの果物が添えてあった。
マリミエドはコーヒーのムースを一口食べて言う。
「お兄様、このムースはほろ苦いから大丈夫だと思いますわ」
「本当かい?どれ」
ギルベルトは脇に置いてあるフォークでムースをすくって食べてみる。
「…うん、美味いな。こっちは?」
「あ、お待ちになって…」
マリミエドは慌てて紅茶のシフォンケーキを食べてみる。
「んん…美味しい!紅茶アールグレイの味だわ。これも甘くないからクリームが添えてあるみたいですわ」
「へえ…」
言いながらギルベルトはシフォンケーキを一口食べる。
「うん、いいね。俺も一つずつ貰おう。持ち帰って夜食に食べるよ」
そう言いギルベルトはケーキを注文した。
シフォンケーキはホールで幾つか注文し、メイド達への土産にする。
「ふふ…皆きっと喜ぶわ」
「そうだといいね」
ギルベルトは微笑んでマリミエドを見る。
嬉しそうなマリミエドを見られるだけで幸せな気持ちになれるのが不思議だ。
〈毎日こうしていたいな…〉
ギルベルトはマリミエドを見ながら、こんなデートを毎日する妄想をする。
対してマリミエドはパンフレットを大事そうにしまう。
「…お兄様、どなたをエスコートなさるのですか?」
「ん?」
「7日後の王女様のパーティです」
「勿論リュミだよ。あのバ…王太子はエスコートしに来ないだろう?」
ギルベルトがそう言うと、マリミエドは口に指を当てて思い出す。
「…さすがにその日は確か嫌そうな顔でエスコートしに来たと思いますわ。両陛下に言われたらしくて…けれど、城内では何処かに行ってしまわれましたが」
「城で居なくなるならエスコートにならんだろうに…仕方が無いな。城内でリュミをエスコートするよ」
「あら、お兄様は殿方にマリアさんをどう思われているか聞いて下さる約束ですわよ」
「それは分かっているよ。俺が言ったエスコートは、ダンスの事さ」
「それは…はい。ですが、お兄様ダンスはお嫌いだと…」
「ん? いや、嫌いじゃ無いが好きでもないな」
その返事にマリミエドはくすくすと笑う。
「それは嫌いという事と同じですわ」
「んー…自覚は無いが、そうなるのかな?でもリュミが相手なら別だよ。共に踊ってくれるね?」
「ええ…では楽しみにしてますわ」
まるでカップルのような会話をしてお茶会を楽しみ、その日は帰路に着いた。
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