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第一幕 断罪からの始まり
vs38 学院長
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翌日。
学院長に会うので、マリミエドはドレスを着た。
公爵家の令嬢としての戦闘服だ。
白いドレスと帽子、スカートの部分は藤色にグラデーションが掛かっている上品なドレスだ。
マリミエドは玄関でギルベルトのエスコートを受けて、共に馬車に乗る。
「リュミ、今日は話し合いの後にディラルカの家を尋ねるのだろう?」
「はい。投資先の子供達に会わなければ、話が始まりませんわ。有望でしたら、お兄様は雇って下さる?」
「…そうだな……男爵家辺りに養子縁組をすれば大丈夫かな。伝統あるメイナード家だからね」
ギルベルトはそう言って微笑む。
それは分かっているので、マリミエドも微笑む。
…初代皇帝の側室の兄、ベルナール・メイナードーーーそれが、祖先だと言われている。
王族ではないので、公爵家ではなく、侯爵家なのだ。
しかし、歴史ある家なので王族の信頼は厚い。
他の2つの侯爵家もまた同じように初代皇帝の代からある家だ。
学院に着くと、2人はメイナード家の令息と令嬢として学院長に謁見を申し入れた。
するとすぐに応接室に案内されて、エレナと近衛隊長を伴いアメリアと共にソファーに座る。
威風堂々と座るギルベルトに、凛と座るマリミエド。
そして、緊張しているアメリア…。
そこに学院長が現れる。
「本日はーーーいかがなされましたかな?」
「学院長、アメリア・ディラルカくんは我がメイナード家の預かりとなった。そこで、学院の卒業証書を頂きたいのだがーーーどうかな?」
「はい…?」
学院長が近寄ろうとして止まり、ちらりとアメリアを見た。
「あ、ああ平民の…。卒業証書…ですと?」
「ああ、卒業証書だ。彼女は聖女候補なのだから、休日は平民の治療を無料で行っていた筈。聖女候補は、確かサンリエド中等学院から行うな。…充分に勤めは果たしたと思うのだが…どうかな?」
ギルベルトは侯爵さながらにニヤリとして言う。
マリミエドの方は何も言わないが扇子を口元に当てて、ただじっと学院長を見ていた。
対して学院長は冷や汗をかきながら、少し後ずさる。
「その…まだ2年生ですし」
「3年生よ」
冷たくハッキリとマリミエドが言う。
すると学院長は更にたじろいで言う。
「そ、そうでしたな、はは…」
「どうなのだ、出来るのか出来ないのかハッキリしたまえ」
ギルベルトに言われて、学院長は何かの本を取り出して慌てた様子でページをめくる。
恐らく、卒業の条件に関する資料を探しているのだろう。
それを察して、ギルベルトは懐中時計を取り出して針を見る。
「…5分待とうか、マリミエド」
「はい、お兄様」
兄妹は揃って注ぎたての紅茶を飲む。
懐中時計を取り出した時点で察したエレナが、あらかじめ毒見をしておいた紅茶を注いでおいたのだ。
時計の針の音と、ページをめくる音が響く。
緊迫した空気の中で、侯爵家の2人だけが優雅に見えた。
「5分ーーー経ったが…」
ギルベルトはパチン、と懐中時計の蓋を閉めて言い、スーと目を細めて続けた。
「〝学院に2年通い、かつ学院の名誉の為に一年以上、無料奉仕をした学生は、卒業とする〟ーーー千56ページの卒業に関しての決まり第2条だよ、学院長」
そうギルベルトが言うと、アメリアは驚き、学院長は愕然としてページをめくる。
ギルベルトはきちんと卒業に関する事項を調べておいて、わざと待っていたのだ。
この学院長が本物の学院の長たり得る人物かどうかを見定める為に。
「たっ、確かにそうでしたな!いやはや、最近少々忘れっぽくなりましてな…」
ハハハと笑って誤魔化しながら、学院長は控えている副院長に指示を出す。
副院長が慌てて水晶を持ってくると、学院長は咳払いをする。
「コホン。それでは卒業の証として、アメリア…アメリア…」
「ディラルカ」
低い声でギルベルトが言う。
「アメリア・ディラルカを卒業と認める!ここに手を!!」
学院長が涙目でアメリアを見た。
アメリアは学院長を哀れみながらも駆け寄って水晶に手を翳した。
すると、学院の紋章がアメリアの額に映されて、スゥーッと消えた。
「これで卒業と認められました、卒業証書は後でメイナード家にお送り致します…」
土下座するのではないかと思える程に一礼するので、ギルベルトは立ち上がってマリミエドをエスコートする。
「さあ行こうか。では学院長、これからもマリミエドを宜しく頼むよ。…後で謝礼も送っておこう」
「ありがとうございますっ!!」
そんな悲鳴にも似た声を背に院長室を出ると、ギルベルトはため息を吐く。
「はあー…卑屈な。…これだから、あの学院長は好きになれん」
「お兄様…しっ」
マリミエドが微笑んで静かにそう言うので、ギルベルトとアメリアがキュンとして胸を押さえた。
〈女神っ!〉
抱き締めたくなる衝動を抑え、ギルベルトは馬車までエスコートする。
学院長に会うので、マリミエドはドレスを着た。
公爵家の令嬢としての戦闘服だ。
白いドレスと帽子、スカートの部分は藤色にグラデーションが掛かっている上品なドレスだ。
マリミエドは玄関でギルベルトのエスコートを受けて、共に馬車に乗る。
「リュミ、今日は話し合いの後にディラルカの家を尋ねるのだろう?」
「はい。投資先の子供達に会わなければ、話が始まりませんわ。有望でしたら、お兄様は雇って下さる?」
「…そうだな……男爵家辺りに養子縁組をすれば大丈夫かな。伝統あるメイナード家だからね」
ギルベルトはそう言って微笑む。
それは分かっているので、マリミエドも微笑む。
…初代皇帝の側室の兄、ベルナール・メイナードーーーそれが、祖先だと言われている。
王族ではないので、公爵家ではなく、侯爵家なのだ。
しかし、歴史ある家なので王族の信頼は厚い。
他の2つの侯爵家もまた同じように初代皇帝の代からある家だ。
学院に着くと、2人はメイナード家の令息と令嬢として学院長に謁見を申し入れた。
するとすぐに応接室に案内されて、エレナと近衛隊長を伴いアメリアと共にソファーに座る。
威風堂々と座るギルベルトに、凛と座るマリミエド。
そして、緊張しているアメリア…。
そこに学院長が現れる。
「本日はーーーいかがなされましたかな?」
「学院長、アメリア・ディラルカくんは我がメイナード家の預かりとなった。そこで、学院の卒業証書を頂きたいのだがーーーどうかな?」
「はい…?」
学院長が近寄ろうとして止まり、ちらりとアメリアを見た。
「あ、ああ平民の…。卒業証書…ですと?」
「ああ、卒業証書だ。彼女は聖女候補なのだから、休日は平民の治療を無料で行っていた筈。聖女候補は、確かサンリエド中等学院から行うな。…充分に勤めは果たしたと思うのだが…どうかな?」
ギルベルトは侯爵さながらにニヤリとして言う。
マリミエドの方は何も言わないが扇子を口元に当てて、ただじっと学院長を見ていた。
対して学院長は冷や汗をかきながら、少し後ずさる。
「その…まだ2年生ですし」
「3年生よ」
冷たくハッキリとマリミエドが言う。
すると学院長は更にたじろいで言う。
「そ、そうでしたな、はは…」
「どうなのだ、出来るのか出来ないのかハッキリしたまえ」
ギルベルトに言われて、学院長は何かの本を取り出して慌てた様子でページをめくる。
恐らく、卒業の条件に関する資料を探しているのだろう。
それを察して、ギルベルトは懐中時計を取り出して針を見る。
「…5分待とうか、マリミエド」
「はい、お兄様」
兄妹は揃って注ぎたての紅茶を飲む。
懐中時計を取り出した時点で察したエレナが、あらかじめ毒見をしておいた紅茶を注いでおいたのだ。
時計の針の音と、ページをめくる音が響く。
緊迫した空気の中で、侯爵家の2人だけが優雅に見えた。
「5分ーーー経ったが…」
ギルベルトはパチン、と懐中時計の蓋を閉めて言い、スーと目を細めて続けた。
「〝学院に2年通い、かつ学院の名誉の為に一年以上、無料奉仕をした学生は、卒業とする〟ーーー千56ページの卒業に関しての決まり第2条だよ、学院長」
そうギルベルトが言うと、アメリアは驚き、学院長は愕然としてページをめくる。
ギルベルトはきちんと卒業に関する事項を調べておいて、わざと待っていたのだ。
この学院長が本物の学院の長たり得る人物かどうかを見定める為に。
「たっ、確かにそうでしたな!いやはや、最近少々忘れっぽくなりましてな…」
ハハハと笑って誤魔化しながら、学院長は控えている副院長に指示を出す。
副院長が慌てて水晶を持ってくると、学院長は咳払いをする。
「コホン。それでは卒業の証として、アメリア…アメリア…」
「ディラルカ」
低い声でギルベルトが言う。
「アメリア・ディラルカを卒業と認める!ここに手を!!」
学院長が涙目でアメリアを見た。
アメリアは学院長を哀れみながらも駆け寄って水晶に手を翳した。
すると、学院の紋章がアメリアの額に映されて、スゥーッと消えた。
「これで卒業と認められました、卒業証書は後でメイナード家にお送り致します…」
土下座するのではないかと思える程に一礼するので、ギルベルトは立ち上がってマリミエドをエスコートする。
「さあ行こうか。では学院長、これからもマリミエドを宜しく頼むよ。…後で謝礼も送っておこう」
「ありがとうございますっ!!」
そんな悲鳴にも似た声を背に院長室を出ると、ギルベルトはため息を吐く。
「はあー…卑屈な。…これだから、あの学院長は好きになれん」
「お兄様…しっ」
マリミエドが微笑んで静かにそう言うので、ギルベルトとアメリアがキュンとして胸を押さえた。
〈女神っ!〉
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