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03.フェロモンとはなんだったのか
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私は現実逃避をしつつ辞世の句を詠んでいたのだが、そうこうしている間に画面の右端に砂時計のマークが浮かんだ。
「ん……?」
ハッ。
思い出した。
このゲームの選択肢には時間制限がもうけられていたのだ! 前門の虎、後門の狼、頭上からは事実上の弾道ミサイルって状況で、どれを選べって言うんじゃい!
「ああーああああー」
髪をかきむしってもだえる私に、ホアンが少々引きながらも微笑む。
「る、ルクレツィア、どうしたんだい? 具合が悪いなら医者を呼ぼうか?」
ホアン。ああ、ホアン。このゲームで唯一常識人のホアン。イケメンでさわやかでまじめなホアン。そんなあなたを生贄にしてはいけない……。
ー―とはまったく思わなかったんだよほんとゴメン。おうよ、自分のために生きて何が悪い。
私、やっぱり自分が一番かわいいテヘペロ! ホアンよ、あなたの尊い犠牲は忘れない。おとなしくコンクリ詰めにされてくれ!
私はさっそく「B:ふふっ、だって兄妹ですもの。ねえ、ホアンお兄様?」を選択しようとした。ところがなんとその前に砂時計のマークが赤に染まり、勝手に「A:まあ、そんなことはございませんわ」が選ばれてしまったのだ!
ノーーーッッッ! 心身ともにイッちゃった世界へGOOOOO!
私は一瞬ムンクの叫びの世界に転生した。
ああ、思えば私の前世もいつもこうだった……。
受験も、就職も、恋愛も、結婚も、ほんの一瞬タイミングが遅れたばかりに滑り止め、派遣、干物、行き遅れ。何ひとつ満足にこなせないままに死んでしまったのだ……。
「る、ルクレツィア?」
ハッ。
いかん、また現実逃避していた。
ともかく賽は投げられてしまったのだ。終わったことをギャーギャー嘆いてもしゃーない。ともかく全力でチェーザレルートからの逃亡を考えるのだ!
「ルクレツィア……」
ほれほれヤンデレ人もじわじわ迫ってきている!
私は再びその場からダッシュした。
「「ルクレツィア!!」」
深窓の令嬢の割にはこの肉体はやけに動きがいい。まさかエロスチル目当ての十八禁乙女ゲームではなく、敵から逃げ続けるアクションゲームだったのか?
ー―などと疑い始めたとたんに、今度は玄関で誰かに正面衝突してしまった。
今度は何なんだよ!
「おやおや、これはルクレツィア様ではないですか。どちらへお出かけですか? このペドロもご一緒しましょう」
妙にテカテカ黒々としたケツアゴの男だった。ボイスがエロくぬめっとしている。
なんじゃこの松崎し○るにソースとケチャップとオリーブオイルぶっかけたようなヤツは。
ブラウスは第七ボタンまではだけられわざわざ胸元を見せている。ズボンはぱっつんぱっつんで鍛えられた太ももが丸わかりだ。更にはチリチリした髪の毛にゴマ塩髭、分厚い唇……。
つまり濃ゆい。キャラも見てくれもどこまでも濃ゆい。一杯引っ掛けた後のとんこつラーメンだってこんなにコッテリしていない。今にもゲップが出そうである。
そんなしょうゆラーメン派の私は、男のある一点に目が釘付けになった。そう、はだけられた胸元である。
そこに黒々と渦巻くのはまさに、MU・NA・GE☆彡
あああ、この胸毛で思い出した! こいつは攻略対象の従者ペドロだ! どこまでもフェロモーンでラテーンなやつ!
そこでまたもやピコーンと選択肢の画面が浮かんだ。
A:庭で部屋に飾る薔薇を摘みたいわ
B:生まれた子馬を見に行きたいわ
C:犬のタロウの散歩に行きたいわ
ペドロは脅威の命中率を誇り、コイツにやられた女は確実に妊娠する……そんな設定のキャラなのだ。空気中にただようフェロモンで、もう息を吸って吐いただけで孕む勢いである。
暴走トラックの前に突き飛ばして、現代日本に転生させれば、きっと少子化は解決するに違いないーーそんなペドロのエンディングは次の三つである。
A:アオ○ンで妊娠する
B:騎○位で妊娠する
C:バッ○で妊娠する
……。
もはやどれがトゥルーでグッドでバッドなのかどうでもいいラインナップだ。
製作者のフェロモンの概念を問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。フェロモンとはなんだったのか。濃ゆくて胸毛だったらフェロモンなのか。
微妙に歴史を辿っているのもまたムカつく。あくまでトンデモ説なんだけど、ルクレツィアは一時期ペドロと愛人関係にあって、子どもを産んだと言われているのよね。
その間にもまたもや画面の右端に砂時計のマークが浮かんだ。
神よ、貴様はそんなにアタシが憎いのか!
「ん……?」
ハッ。
思い出した。
このゲームの選択肢には時間制限がもうけられていたのだ! 前門の虎、後門の狼、頭上からは事実上の弾道ミサイルって状況で、どれを選べって言うんじゃい!
「ああーああああー」
髪をかきむしってもだえる私に、ホアンが少々引きながらも微笑む。
「る、ルクレツィア、どうしたんだい? 具合が悪いなら医者を呼ぼうか?」
ホアン。ああ、ホアン。このゲームで唯一常識人のホアン。イケメンでさわやかでまじめなホアン。そんなあなたを生贄にしてはいけない……。
ー―とはまったく思わなかったんだよほんとゴメン。おうよ、自分のために生きて何が悪い。
私、やっぱり自分が一番かわいいテヘペロ! ホアンよ、あなたの尊い犠牲は忘れない。おとなしくコンクリ詰めにされてくれ!
私はさっそく「B:ふふっ、だって兄妹ですもの。ねえ、ホアンお兄様?」を選択しようとした。ところがなんとその前に砂時計のマークが赤に染まり、勝手に「A:まあ、そんなことはございませんわ」が選ばれてしまったのだ!
ノーーーッッッ! 心身ともにイッちゃった世界へGOOOOO!
私は一瞬ムンクの叫びの世界に転生した。
ああ、思えば私の前世もいつもこうだった……。
受験も、就職も、恋愛も、結婚も、ほんの一瞬タイミングが遅れたばかりに滑り止め、派遣、干物、行き遅れ。何ひとつ満足にこなせないままに死んでしまったのだ……。
「る、ルクレツィア?」
ハッ。
いかん、また現実逃避していた。
ともかく賽は投げられてしまったのだ。終わったことをギャーギャー嘆いてもしゃーない。ともかく全力でチェーザレルートからの逃亡を考えるのだ!
「ルクレツィア……」
ほれほれヤンデレ人もじわじわ迫ってきている!
私は再びその場からダッシュした。
「「ルクレツィア!!」」
深窓の令嬢の割にはこの肉体はやけに動きがいい。まさかエロスチル目当ての十八禁乙女ゲームではなく、敵から逃げ続けるアクションゲームだったのか?
ー―などと疑い始めたとたんに、今度は玄関で誰かに正面衝突してしまった。
今度は何なんだよ!
「おやおや、これはルクレツィア様ではないですか。どちらへお出かけですか? このペドロもご一緒しましょう」
妙にテカテカ黒々としたケツアゴの男だった。ボイスがエロくぬめっとしている。
なんじゃこの松崎し○るにソースとケチャップとオリーブオイルぶっかけたようなヤツは。
ブラウスは第七ボタンまではだけられわざわざ胸元を見せている。ズボンはぱっつんぱっつんで鍛えられた太ももが丸わかりだ。更にはチリチリした髪の毛にゴマ塩髭、分厚い唇……。
つまり濃ゆい。キャラも見てくれもどこまでも濃ゆい。一杯引っ掛けた後のとんこつラーメンだってこんなにコッテリしていない。今にもゲップが出そうである。
そんなしょうゆラーメン派の私は、男のある一点に目が釘付けになった。そう、はだけられた胸元である。
そこに黒々と渦巻くのはまさに、MU・NA・GE☆彡
あああ、この胸毛で思い出した! こいつは攻略対象の従者ペドロだ! どこまでもフェロモーンでラテーンなやつ!
そこでまたもやピコーンと選択肢の画面が浮かんだ。
A:庭で部屋に飾る薔薇を摘みたいわ
B:生まれた子馬を見に行きたいわ
C:犬のタロウの散歩に行きたいわ
ペドロは脅威の命中率を誇り、コイツにやられた女は確実に妊娠する……そんな設定のキャラなのだ。空気中にただようフェロモンで、もう息を吸って吐いただけで孕む勢いである。
暴走トラックの前に突き飛ばして、現代日本に転生させれば、きっと少子化は解決するに違いないーーそんなペドロのエンディングは次の三つである。
A:アオ○ンで妊娠する
B:騎○位で妊娠する
C:バッ○で妊娠する
……。
もはやどれがトゥルーでグッドでバッドなのかどうでもいいラインナップだ。
製作者のフェロモンの概念を問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。フェロモンとはなんだったのか。濃ゆくて胸毛だったらフェロモンなのか。
微妙に歴史を辿っているのもまたムカつく。あくまでトンデモ説なんだけど、ルクレツィアは一時期ペドロと愛人関係にあって、子どもを産んだと言われているのよね。
その間にもまたもや画面の右端に砂時計のマークが浮かんだ。
神よ、貴様はそんなにアタシが憎いのか!
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