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本編
王女様救出大作戦!(2)
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人の姿に戻って道行く人に聞いたところ、リンナの王都までは馬車で二日くらいらしい。思ったより近くて胸を撫で下ろした。
ちなみに、この辺りの街や村は王都からのアクセスも景色もいいので、たくさんの王侯貴族やお金持ちが別荘を立てているみたいだ。専用の一泊金貨ウン枚のお高い宿屋やレストランもあって、それらの収入で全体的に裕福になったのだとか。
ちなみにあのおっさんの猫屋敷も別荘らしい。おっさんはやっぱりお金持ちでエラい人らしく、何年か前に別荘を建てて、年に何ヶ月かあそこに住んでいるのだとか。でも、正確な名前や身分はわからないと、住人は口を揃えて言っていた。なるほど、ただの猫好きのおっさんではなく、変態レベルの猫好きで親切、かつミステリアスなおっさんなのか。……修飾語がやたらと多いおっさんだわ。
まあ、とりあえずおっさんについてはここまでにしてと、私はまた猫に変身して馬車道を見回した。何台か停車している中に黒塗りの馬車を見つけ、中に積み込まれた荷物を見る。やっぱり貴族の高級車みたいだ。
リンナの貴族はカレリアとは違って領地がない。国が狭くて山だらけなので、配分できるだけの平地が少ないからだ。貴族は皆王都に本宅を構えていると聞いたことがある。数日分の旅支度からして、多分この貴族はバカンスを終えて、リンナの王都へ帰るのだろう。
私は馬車の屋根に飛び乗った。しばらくして身なりのいいお婆さんが、従者に支えられて馬車に乗り込む。私はそれから王都に到着するまで、香箱座りで無賃乗車の旅を楽しんだ。
うん、こういう時には獣人って便利だわ。
リンナの王都は規模こそカレリアには敵わないものの、碁盤の目のように区画整理された街並みが綺麗だった。やっぱりモスグリーンの屋根に石造りの建物が多い。
王宮は冬の雪の重さに耐えるためか、横広がりの二階建てだった。高くするより広さで勝負らしい。屋根の真ん中にはリンナの国旗がはためいてた。
それにしても、当然なのだろうけど警備が厳しい。鉄柵で囲まれているだけではなく、見張りの衛兵の数も半端ではない。
アト子様はどうやって王宮に潜入するのだろう。これだけ厳重だと変装も通じなさそうだ。
ともあれ、まずはアト子様たちの姿を探すことにする。私よりちょっと早いくらいに王都に到着しているはずだけど……。
私は近くにある集合住宅らしき建物の屋根に登った。見晴らしの素晴らしさに感動しつつアト子様たちを探す。
きっと王宮の警備を調査しに、この辺りに来ると思うんだけど……。
そうして三時間ほどキョロキョロしていただろうか。視界の片隅に見間違えるはずもない、長身のフェロモン美女が登場した。部下の魔術師の一人とどうもカップルのふりをして、地上にあるレストランのテラス席で食事を取るつもりみたいだ。なるほど、あのレストランなら王宮が目に入るし、不自然にならずに観察できるものね。
私は屋根から屋根を伝い、アト子様が椅子に腰掛けたのを見計らって、えいやっとばかりに飛び降りた!
「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャンニャーン!!」
呼ばれてないのにジャジャジャジャーン!!とばかりにアト子様の胸に飛び込む。
アト子様はすぐに私の鳴き声に気付いて顔を上げた。
「あ、アイラ!?」
アト子様のびっくりした……と言うよりは、ぎょっとした顔を見たのは初めてではないかしら?
アト子様がとっさに手を広げる。
さすがマイスイートダーリン! 今、あなたの胸に飛び込んでいくわ!
数秒後、私はアト子様の胸に見事着地した!――はずだったのだけれども、ああ、なんということでしょうか! あの無駄に精巧な疑似おっぱいに、ボヨヨンと撥ね飛ばされてしまったのだ!
さすがにこの事態を予測していなかった私は、アト子様の足元の石畳にモロに顔から着地した。
「ブニャッ!!」
「アイラーッ!!」
ああ、笑顔のお星様が脳内をグルグル回っている……。
こうして私は鼻血を流しつつではあったものの、アト子様と再会できたことにほっとしたのだった。
――無茶をして追い掛けてきた私を、アト子様は長々と説教したあとで、当然カレリアに戻そうとした。嫌ニャ嫌ニャと駄々をこねる私に言い聞かせる。
「いいですか。リンナは敵地です。君を危険な目に遭わすわけにはいかない」
そんなことはわかっている。でも、嫌な予感がしてならないのだ。
頑固に言うことを聞かない私に、アト子様が「やれやれ」と溜め息を吐いた。
「仕方がない。こうなればもう一度キャリーバッグに詰めて……」
「……副総帥、お待ちください」
ずっと黙っていたアト子様の部下が、テーブルに手をついて立ち上がった。
「奥様のその大きさの体なら、あの警備と結界を掻い潜ることが可能なのでは?」
んん? 結界ってなんのこと?
ちなみに、この辺りの街や村は王都からのアクセスも景色もいいので、たくさんの王侯貴族やお金持ちが別荘を立てているみたいだ。専用の一泊金貨ウン枚のお高い宿屋やレストランもあって、それらの収入で全体的に裕福になったのだとか。
ちなみにあのおっさんの猫屋敷も別荘らしい。おっさんはやっぱりお金持ちでエラい人らしく、何年か前に別荘を建てて、年に何ヶ月かあそこに住んでいるのだとか。でも、正確な名前や身分はわからないと、住人は口を揃えて言っていた。なるほど、ただの猫好きのおっさんではなく、変態レベルの猫好きで親切、かつミステリアスなおっさんなのか。……修飾語がやたらと多いおっさんだわ。
まあ、とりあえずおっさんについてはここまでにしてと、私はまた猫に変身して馬車道を見回した。何台か停車している中に黒塗りの馬車を見つけ、中に積み込まれた荷物を見る。やっぱり貴族の高級車みたいだ。
リンナの貴族はカレリアとは違って領地がない。国が狭くて山だらけなので、配分できるだけの平地が少ないからだ。貴族は皆王都に本宅を構えていると聞いたことがある。数日分の旅支度からして、多分この貴族はバカンスを終えて、リンナの王都へ帰るのだろう。
私は馬車の屋根に飛び乗った。しばらくして身なりのいいお婆さんが、従者に支えられて馬車に乗り込む。私はそれから王都に到着するまで、香箱座りで無賃乗車の旅を楽しんだ。
うん、こういう時には獣人って便利だわ。
リンナの王都は規模こそカレリアには敵わないものの、碁盤の目のように区画整理された街並みが綺麗だった。やっぱりモスグリーンの屋根に石造りの建物が多い。
王宮は冬の雪の重さに耐えるためか、横広がりの二階建てだった。高くするより広さで勝負らしい。屋根の真ん中にはリンナの国旗がはためいてた。
それにしても、当然なのだろうけど警備が厳しい。鉄柵で囲まれているだけではなく、見張りの衛兵の数も半端ではない。
アト子様はどうやって王宮に潜入するのだろう。これだけ厳重だと変装も通じなさそうだ。
ともあれ、まずはアト子様たちの姿を探すことにする。私よりちょっと早いくらいに王都に到着しているはずだけど……。
私は近くにある集合住宅らしき建物の屋根に登った。見晴らしの素晴らしさに感動しつつアト子様たちを探す。
きっと王宮の警備を調査しに、この辺りに来ると思うんだけど……。
そうして三時間ほどキョロキョロしていただろうか。視界の片隅に見間違えるはずもない、長身のフェロモン美女が登場した。部下の魔術師の一人とどうもカップルのふりをして、地上にあるレストランのテラス席で食事を取るつもりみたいだ。なるほど、あのレストランなら王宮が目に入るし、不自然にならずに観察できるものね。
私は屋根から屋根を伝い、アト子様が椅子に腰掛けたのを見計らって、えいやっとばかりに飛び降りた!
「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャンニャーン!!」
呼ばれてないのにジャジャジャジャーン!!とばかりにアト子様の胸に飛び込む。
アト子様はすぐに私の鳴き声に気付いて顔を上げた。
「あ、アイラ!?」
アト子様のびっくりした……と言うよりは、ぎょっとした顔を見たのは初めてではないかしら?
アト子様がとっさに手を広げる。
さすがマイスイートダーリン! 今、あなたの胸に飛び込んでいくわ!
数秒後、私はアト子様の胸に見事着地した!――はずだったのだけれども、ああ、なんということでしょうか! あの無駄に精巧な疑似おっぱいに、ボヨヨンと撥ね飛ばされてしまったのだ!
さすがにこの事態を予測していなかった私は、アト子様の足元の石畳にモロに顔から着地した。
「ブニャッ!!」
「アイラーッ!!」
ああ、笑顔のお星様が脳内をグルグル回っている……。
こうして私は鼻血を流しつつではあったものの、アト子様と再会できたことにほっとしたのだった。
――無茶をして追い掛けてきた私を、アト子様は長々と説教したあとで、当然カレリアに戻そうとした。嫌ニャ嫌ニャと駄々をこねる私に言い聞かせる。
「いいですか。リンナは敵地です。君を危険な目に遭わすわけにはいかない」
そんなことはわかっている。でも、嫌な予感がしてならないのだ。
頑固に言うことを聞かない私に、アト子様が「やれやれ」と溜め息を吐いた。
「仕方がない。こうなればもう一度キャリーバッグに詰めて……」
「……副総帥、お待ちください」
ずっと黙っていたアト子様の部下が、テーブルに手をついて立ち上がった。
「奥様のその大きさの体なら、あの警備と結界を掻い潜ることが可能なのでは?」
んん? 結界ってなんのこと?
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