猫に転生(う)まれて愛でられたいっ!~宮廷魔術師はメイドの下僕~ 

東 万里央(あずま まりお)

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本編

*下僕失格(5)

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 アトス様は唇だけではなく、私の体中にキスをした。頬にも、首筋にも、鎖骨にも、お腹にも、太ももにもだ。膨らみの頂に薄い唇が触れた時には、私はつい「いにゃんっ」と妙な声を上げてしまった。

 くすぐったくて、気持ちがよくて、そこから快感が広がって、耳がプルプルと震える。更に強く、弱くと吸われ、耐え切れずに顔を逸らしてシーツを掴んだ。

「あとす、さま、そこ、だめ……です」

 アトス様は顔を上げると、「何が駄目なんだい?」と聞いて笑った。その間にも濡れた胸の先を弄っている。おまけに指先でピンと軽く弾かれて、私は「んぁっ」とまた叫んでしまった。

「そこ、よわい……わたし、だめ……だから……」

 体に痺れが走って力が抜け落ちてしまう。けれども、アトス様はやめるどころか、今度は左右の頂を一緒にきゅっと折り曲げたのだ。

「にゃぁんっ……」

 そこだけではなくお腹の奥がカッと熱くなって、とろりとした何かが足の間から漏れ出てくる。

「だめって、いったのにぃ……」

 呼吸も声も途切れ途切れになって、息苦しいのか気持ちがいいのかわからない。アトス様はまだ私の胸を弄んでいる。

「こんなにフェロモンを出しておいて駄目? アイラ、素直になるといい。楽になる」

 私はいやいやと首を振った。

「だあって……え……」

 身を捩る私の腰を押さえながら、アトス様が「仕方がないな」と呟く。

「なら、素直になってもらうしかない。君に気持ちがいいと言ってもらわないと、それこそ下僕失格だからね」

 不意に足に手を掛けられ、大きく広げられた。大切なところがひやりとした空気に触れ、反射的に閉じそうになったものの、アトス様の手がそれを許してくれない。アトス様は私の肩脚を持ち上げ、ひょいと肩に載せてしまった。こちらからは見えないものの、アトス様の視線がそこに注がれていることを、嫌と言うほど感じてしまう。

「ほら、もう潤んでいる」

「……っ」

 何がとは聞くまでもなくわかる。直後にそこを優しく触れられ、続いて長い指を一瞬で根元まで入れられたので、つい手の甲で口を押さえた。

「んんっ……」

 痛みも圧迫感はまったくない。それどころか内側を繰り返し擦られて気持ちがよく、「にゃんっ」とあられもない喘ぎ声が出てしまった。お腹の中が引き攣れるような感覚を覚える。

「感じているだろう? こんなに私の指を締め付けている」

「や……はずかし……」

「アイラ、もっと本能に身を任せるといい」

 アトス様の指が私の弱いところを掻いた。

「ひゃあっ……」

 ベッドの上で体が大きく跳ねて腰が揺れる。

「気持ちいいだろう?」

「んっ……やっ……あっ……」

 指で中を掻き回される音が聞こえる。ぐちゅぐちゅと嫌らしくて、その音に感じてまた体の奥から蜜が出てきた。

「あっ……きもち……いぃ……」

 一度言葉にしてしまうと、もうどうなってもいいと、恥ずかしさが消えていく。

「もう達きそうだね。でも、いい子だから少しだけ待つんだ」

 霞がかった頭にアトス様の声が届き、潤んで熱を持ったそこに、かたい何かが押し当てられる。少しだけってどれだけなのかと考える間もなく、一気に奥まで貫かれてしまった。

「あっ……!」

 全身を雷で撃たれたようだった。体が内側から熱せられて、数秒後に限界を超えた快感がやって来る。

「いやぁああああああんっ……」

 爪先が死にかけの魚となって痙攣する。続いて何度も奥まで突かれて、私は気持ちよさに体を仰け反らせるしかなかった。
 
「あとす、さま、わたし、だめ……い、っちゃう」

「……私もだ」

 アトス様が苦しそうに顔を顰める。額からは一滴の汗が流れ落ちていた。

「アイラ……愛している」

 囁きのような声でそう告げられ、一際強く突かれた次の瞬間、熱いものが体の中が放たれる。同時に頭が真っ白になって、私は声にならない声を上げた。

 アトス様はそれからも小刻みに腰を動かし、私の中に熱を送り続けていたけれども、しばらくしてようやく気が済んだらしく顔を上げる。そして、まだぼうっとしている私に優しくキスをしてくれた。

 キスって不思議な行為だと思う。唇を触れ合わせるだけで、言葉以上に気持ちがわかる。

 アトス様の腕の力がふっと緩んで、やっと唇を離すまでには、身も心もすっかり与えられた激しさと甘さに酔っていた。このまま焼け死んでも構わないから、もう一度愛してほしいとすら感じている。

 ほんの少しまでの強引さが嘘のように、間近に見るアトス様の瞳は甘く、優しかった。

 そんなアトス様が愛おしくて仕方なくなり、今度は私がアトス様の首に手を回して、そっとそのご尊顔を引き寄せて口付ける。

 アトス様みたいにうまくはないし、色気たっぷりにともいかない。でも、恥ずかしさよりも、自分からしたい思いが勝った。

「アトス様の唇、好き……」

 甘くて、熱くて大好き。すると、それを聞いたアトス様は、微笑みを浮かべて私の目を覗き込んだ。

「マタタビよりも好きでいてくれるかい?」

 ううっ……なかなか答えにくいことを聞いてくれる。すると、アトス様は笑いながら私の腰を掴んだ。

「なら、世界で私が一番好きだと言わせて見せようか」

 ええっ、何をされちゃうの!?
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