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第三章「侍女ですが、○○○に昇格しました。」

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「なら、なぜ俺の妃になるのを躊躇う」

 確かにばっちりと愛を打ち明けてしまっている。あんなに大胆になれることは二度とない気がした。

「あ、あれは……」

 出生への後ろめたさと告白した気恥ずかしさが、心の中でないまぜになり目を逸らす。だが、またすぐに頬を押さえられ上向かされてしまった。

「俺が望むものはお前だ。お前の父でも母でもない」

 誤魔化しが一切ない、真摯な眼差しを注ぎ込まれ息を呑む。

 アルフレッドが「ソランジュ」と囁くように名を呼んだ。

「……お前といると心が安らぐ」

 呪われた身で魔に侵される半生であっても、今まで安らぎを求めたことなどなかった。なのに、一度知ってしまうと手放せなくなったと呟く。

「お前のいない明日が考えられなくなった」

 ソランジュのいない世界など想像するだけで恐ろしい――それは初めて聞くありのままのアルフレッドの恐れの感情だった。

 戦にも、呪いにも、魔にも、小説「黒狼戦記」のラストシーンでみずから命を絶とうとした時にすら、一切の恐怖を見せなかったのに。

 アルフレッドの手に力が込められる。

「……どうか俺から離れないでくれ」

 すべてをかなぐり捨てた、一生をかけての懇願だった。そんな思いをどうして拒絶できるだろうか。

「わ、私は……私は……」

 なのに、実の父の身元への不安が答えを躊躇わせる。今すぐにでもアルフレッドの胸に飛び込みたいのに。

 アルフレッドはソランジュの迷いを見て取ったのか、「なら、はいと言わせるまでだ」とその黒い瞳を煌めかせた。

「俺はお前を諦めはしない」

 上着とシャツを脱ぎ捨て裸身になる。

「お前しか抱きたくはない」

「あっ……」

 驚く間もなく体を反転させられる。

 俯せにされ背後のお仕着せのボタンを次々外され、シュミーズをずり落とされ、鞭で打たれた傷跡の残る背に唇を押し当てられる。

「んんっ……」

 体がビクリと大きく震える。

 そのまま背筋をなぞられると熱い息が喉の奥から漏れ出た。腹の奥がたちまち熱を持ち隘路を潤わせる。

「――ソランジュ」

「あ……あっ……」

 俯せのまま生まれたままの姿にされ、髪を掻き分けられ、項を強く吸われながら思う。

 自分もアルフレッドから離れたくないが、それが許される身の上なのか。

 しかしそうしたぐるぐる回る悩みも迷いも、背後から閉ざされた足の狭間を割られ、わずかに潤んだ蜜口に肉の楔を押し当てられると、その灼熱に解かされていってしまった。

「んっ……あ……あぁっ……」

 思わず両目をギュッと閉じ、両手でシーツを掴む。

「……っ」

 アルフレッドの分身がゆっくり、ゆっくりと隘路に押し入ってくる。熱、大きさ、そしてソランジュが自分のものだと思い知らせるかのように。

 最奥まで徹底的にじっくりと征服される生々しい感触に、頬をシーツに押し当てながら耐え切れずに喘ぐ。

「あっ……あ……あぁっ……あ、つい……」

 アルフレッドの心の熱と同じだけの熱さである気がした。

 このまま身も心も燃やし尽くされて、何も考えられなくなって、白い灰になってしまえばいいのに――そんなソランジュの願いが叶えられることはもちろんなかった。

 繋がったまま腹に手を回され、そのまま力任せに腰の上に抱き起こされ、アルフレッドの裸身の胸筋に剥き出しの白く細い背が密着する。

「んあぁっ……」

 蜜口から最奥にかけて垂直に貫かれることで、その衝撃に脳髄にまでキンと電流が走った。子宮口を押し上げられ、それ以上声を出せなくなる。

「……っ」

 もう何も考えられなくなり、途切れ途切れの息を吐き出すことしかできなくなる。アルフレッドの腕の中でぶるりと背を仰け反らせる。行き場をなくした豊かに実った乳房がふるふると上下に揺れた。

 アルフレッドはそんなソランジュの胸と腹に手を回した腕に力を込め、背後から抱き寄せた。振り返らせて涙の零れ落ちた頬に口付け、耳に口付け、華奢な肩に顎を乗せてあらためて強く抱き締め、最後に溜め息を吐くようにこう呟く。

「愛している」

 お前だけを愛していると繰り返す。

「……っ」

 ソランジュはすべてを忘れてアルフレッドのその言葉だけを聞いていた。

 愛している――。
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