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第一章「一行モブ女ですが、容疑者に昇格しました。」

(6)☆

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「ん……んっ!」

 混乱して思わず身を捩るが、覆い被さる肉体は鋼のように強くしなやかで、女のか弱い抵抗程度ではびくともしない。

 剥き出しになった乳房が胸板に押し潰され、乳首が柔らかな肉にめり込む感覚に全身がびくりと震える。

 そのまま何事もなければ、わけがわからぬうちに抱かれていただろう。

 ところが、次の瞬間再び一際大きな雷が落ち、屋敷が床下からぐらりと揺れた。その拍子に窓辺に置かれていたランプが落ちて横倒しになる。

 あわや漏れ出た炎が絨毯に燃え移り、広がりそうになったところで、アルフレッドがギラリと目を光らせつつ体を起こした。

「……無粋な雷だな」

 窓辺に立ち足でぐいと踏み潰す。炎はジジ……と呆気なく消えた。

 時を同じくして嵐がたちまち弱まる。アルフレッドは天まで威圧できるのだろうか。

 強風で雲が払われたらしく、一条の儚い月光が窓から差し込んで来る。その光がガウンに包まれた筋肉質の肉体をそっと照らし出した。

 ソランジュはベッドに肘を突き、その広い背を呆然と見つめながら、ようやくこれは小説の出来事ではなく、我が身に起こっていることなのだと実感した。

 あるいは、先ほど走馬灯のように脳裏に過った光景は、前世の記憶などではなく、過酷な現実に耐え切れず、ついに狂った末に見た幻覚なのかもしれない。

 それでもよかった。

 恐らくこれからはずっと伯爵に娼婦の真似事をさせられる。終わりの見えない地獄のような日々が待っている。

 ならば初めてを捧げる人は、たとえ金で買われるのだとしても、憧れていたアルフレッドがよかった。

 ――きっとこれは神様のご慈悲なんだわ。

 なんの力もない、ちっぽけな自分に与えられた唯一の幸運だ。

 なら、この一夜で身も心もアルフレッドの色に染まりたかった。

 アルフレッドはしばし窓の外の月を見上げていたが、やがて荒く熱い息を吐きながらソランジュを振り返った。

「女、お前は不運だったな。……今夜はこの通り満月だ」

 声が一段と低くなっている。黒い瞳は飢えた狼さながらにギラギラ輝いていた。明らかに先ほどまでの余裕がなくなっている。

 アルフレッドはベッドに近付くと、ソランジュの腰を浚った。

「あっ……」

 二度ベッドに押し倒されてしまう。寝間着を引きずり下ろされてしまうと、もう体を守るものは何もなかった。

 思わず両手で身を隠そうとしたが、強引に手首を掴まれシーツに縫い留められてしまう。

 恐ろしいほどの力だった。決して逃すまいとするアルフレッドの劣情を感じ取り、背筋がゾクリとする。

 続いて首筋に噛み付かれ、歯を立てられたので、本当に喰らわれるのではないかとビクリとした。同時に、左の乳房を大きな手で鷲掴みにされる。かたい指先が軟らかな肉に深く食い込んだ。

「あ……あっ」

 男の無骨な手の平の中で乳房が縦に、横にと揉み込まれ、握り潰され、形を変える。淡く色付いた両の乳房の頂がピンと立った。

 そこでアルフレッドがすかさず胸の谷間に顔を埋め、すっかり敏感になった右の頂にむしゃぶりつく。前髪の先端が肌に刺さると背筋がゾクゾクとした。

「あっ……あっ……やっ……んぁっ……だ……めぇ……」

 ちゅうっと音を立てて吸い付かれると、赤ん坊を産んだこともないのに、頂から熱を吸い出される錯覚を覚える。時折尖った歯で囓られると、背筋から首筋に掛けて電流が走った。

「あっ……そんなに……強く……吸わない……で……あっ」

 腹の奥で凝った熱がとろりと溶け、蜜となってあらぬ箇所を淫らに濡らす。そんな自分が恥ずかしくて、思わず目を固く閉じると、すかさずアルフレッドに「俺を見ろ」と命じられた。

 恐る恐る目を開ける。

 アルフレッドがガウンを脱ぎ捨て、その眼差しでソランジュを射貫く。

 情欲の炎が燃え上がる漆黒の瞳が目の前にあった。ソランジュがその激しさに息を呑む間に、膝でぐっと足を割り開かれる。

「あっ……」

 反射的に体をずり上げて逃れようとしたが、腰をぐっと掴まれ引き寄せられてしまう。そして、足の狭間に禍々しく赤黒く凶暴で、劣情に熱く猛る雄の証が押し当てられた。

「ああっ……」

 黄金色の目が大きく見開かれる。

「あっ……ああっ……んあっ……」

 いやいやと首を横に振る。

 こんな太くかたいものが体の中に入るはずがない。

 だが、アルフレッドはソランジュを逃してはくれなかった。

 欲望に濡れた先端がぐぐっと蜜口に押し入る。

「あっ……」

 アルフレッドは体を起こすと、細くすらりとした片足を抱え上げ、ぐぐっとみずからの腰を強引に間に割り込ませた。

「あっ……あっ……あっ……」

 隘路が押し広げられる感覚と圧迫感に身悶える。息が止まりそうなのに喘ぎ声は漏れ出てしまう。

 やがて、止めとばかりにズンと肉の楔で貫かれると、体の奥でぶつりと何かが引き裂かれる痛みが走った。

「ああああっ……」
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