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完.驚きの下手さ(当社比)
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小鳥の鳴き声がカーテンの隙間から聞こえる。なるほどこれが朝チュンと言うものか。ベッドの中で男と二人で並んで寝ている。
私はエムリスの腕を解きシーツの上に頬杖をついた。
エムリスと久々にヤッた感想は、端的に言えばこれしかない。
――いやぁ……。マリアちゃんって聖女か女神だったのね。これによく何年も耐えられたわ。
まあ、早い話が驚きの下手さなのである。雰囲気作りもテクもあったものではなく、ただひたすらがっついて来ると言った感じだった。
どうりで初夜や子作りの記憶がきれいさっぱり脳内デリートされているはずである。うわぁ……マジかよと呆然としてしまい、書き込まれることすらなかったのだ。
ところがエムリスにとっては新しい扉を開けた夜だったらしい。
「ユージェニー……」
再び腕を伸ばし私を胸に抱き締める。
「ユージェニー、初めて君を知った気がする。君さえ良ければ、もう一度夫婦としてやり直さないか?」
私は思わずはぁ?と声を上げた。こいつは何を言っているのだろうとまじまじとエムリスの顔を眺める。
「やり直すも何ももともと私達の間には何もないじゃないの」
この答えはエムリスにとって予想外だったらしい。切れ長の目をまん丸にして私を見つめている。
マリアちゃんはこの手の台詞で簡単に絆されていたんだろうなぁ。
「私は君の夫だぞ?!」
「両親が言うから結婚しただけよ。妻としての務めは果たしたんだから、それ以上を私に望まないでくれる?」
エムリスは私の返事に絶句している。
「ユージェニー……君は私を愛していたのではなかったのか?」
「あらやだ! それって白亜紀の話かしら?」
私はガウンを身に纏いベッドから起き上がった。
「都合のいい時だけに自分を受け止めてくれる女が欲しいのなら、新しいマリアちゃんでも探してくださいな。最も何も求めない女なんてこの世のどこにもいないでしょうがね?」
私こそが女と本音そのものですよ、と私は笑った。
エムリスの美貌に憧れた時期はとっくに過ぎているし、いい男なんて他にもいくらでもいる。私は今更一人に縛られたくはない。取っ替え引っ替えちやほやされる楽しみを奪われたくはない。
そんな妻の私が嫌ならさっさと離婚すればいい。とっくにお互いの家への義理は果たしているし、私は今すぐにでも構わない。そう告げるとエムリスは頭を抱え低く呻いた。
「私は、何もかもを間違えた……」
いや、間違えてなんかないよ?私はお肌ツヤツヤでハッピーだし!
*
――その後エムリスは別荘を訪ねてきては必死に私を口説くようになった。
愛の手紙もプレゼントも雨あられである。けれども私は小娘じゃあるまいし、花やドレスや宝石なんて見飽きている。第一、そんなものいくらでも自分で買えるしね。
愛の手紙?こんなものは一銭にもならない。言葉ほどあてにならないものはないでしょ。やっぱり貴族の男の価値は身体とテクよ。金や地位なんて全員が持っているんだから。
私は届いた手紙で紙飛行機を折ると、窓からそれを放り投げて風に乗せた。よく飛ぶ様に満足して窓を閉める。
まあ、とりあえずは逆ハーにオマケのオモチャが増えて、私がやっぱりハッピーなのには変わりがない。
完
私はエムリスの腕を解きシーツの上に頬杖をついた。
エムリスと久々にヤッた感想は、端的に言えばこれしかない。
――いやぁ……。マリアちゃんって聖女か女神だったのね。これによく何年も耐えられたわ。
まあ、早い話が驚きの下手さなのである。雰囲気作りもテクもあったものではなく、ただひたすらがっついて来ると言った感じだった。
どうりで初夜や子作りの記憶がきれいさっぱり脳内デリートされているはずである。うわぁ……マジかよと呆然としてしまい、書き込まれることすらなかったのだ。
ところがエムリスにとっては新しい扉を開けた夜だったらしい。
「ユージェニー……」
再び腕を伸ばし私を胸に抱き締める。
「ユージェニー、初めて君を知った気がする。君さえ良ければ、もう一度夫婦としてやり直さないか?」
私は思わずはぁ?と声を上げた。こいつは何を言っているのだろうとまじまじとエムリスの顔を眺める。
「やり直すも何ももともと私達の間には何もないじゃないの」
この答えはエムリスにとって予想外だったらしい。切れ長の目をまん丸にして私を見つめている。
マリアちゃんはこの手の台詞で簡単に絆されていたんだろうなぁ。
「私は君の夫だぞ?!」
「両親が言うから結婚しただけよ。妻としての務めは果たしたんだから、それ以上を私に望まないでくれる?」
エムリスは私の返事に絶句している。
「ユージェニー……君は私を愛していたのではなかったのか?」
「あらやだ! それって白亜紀の話かしら?」
私はガウンを身に纏いベッドから起き上がった。
「都合のいい時だけに自分を受け止めてくれる女が欲しいのなら、新しいマリアちゃんでも探してくださいな。最も何も求めない女なんてこの世のどこにもいないでしょうがね?」
私こそが女と本音そのものですよ、と私は笑った。
エムリスの美貌に憧れた時期はとっくに過ぎているし、いい男なんて他にもいくらでもいる。私は今更一人に縛られたくはない。取っ替え引っ替えちやほやされる楽しみを奪われたくはない。
そんな妻の私が嫌ならさっさと離婚すればいい。とっくにお互いの家への義理は果たしているし、私は今すぐにでも構わない。そう告げるとエムリスは頭を抱え低く呻いた。
「私は、何もかもを間違えた……」
いや、間違えてなんかないよ?私はお肌ツヤツヤでハッピーだし!
*
――その後エムリスは別荘を訪ねてきては必死に私を口説くようになった。
愛の手紙もプレゼントも雨あられである。けれども私は小娘じゃあるまいし、花やドレスや宝石なんて見飽きている。第一、そんなものいくらでも自分で買えるしね。
愛の手紙?こんなものは一銭にもならない。言葉ほどあてにならないものはないでしょ。やっぱり貴族の男の価値は身体とテクよ。金や地位なんて全員が持っているんだから。
私は届いた手紙で紙飛行機を折ると、窓からそれを放り投げて風に乗せた。よく飛ぶ様に満足して窓を閉める。
まあ、とりあえずは逆ハーにオマケのオモチャが増えて、私がやっぱりハッピーなのには変わりがない。
完
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