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第6章

優しさの十字架

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「礼拝室を使わせないですって?
そんな、どういうことですか?司祭様」

礼拝室は聖女にとってなくてはならない場所
歴代の聖女がその場で祈りを捧げ続け、神との繋がりが最も感じられる場所になっている。

「新しい聖女ロザリア様の修行のためです。
ロザリア様はまだ聖女としては成長期にあります。

そのため、私ができるかぎりの時間、あの礼拝室を清め、祈りを捧げ、ロザリア様がその後に祈りを捧げることにより。
さらに成長を促すのです。

ですので、シスタ様もご協力ください。」


礼拝室は教会内部にあり、管轄は教会に属する。
司祭が認めなければ、使うことはできないのだ


「しかし、毎日の私の礼拝がなくなり、神との繋がりがなくなれば。
神の加護も弱くなるやもしれません。短時間でもかまいませんから…」
「なりません。シスタ様が神と繋れば、その分だけ礼拝室の力が弱まります。
それともロザリア様の成長を邪魔されたいのですか?」


あまりな言い方な、シスタは言葉を失う。
引き下がるしかなかった。

打ちひしがれ、帰路につくとき一人のまだ若い修道女が走って来た。

「聖女シスタ様、お目にかかれて幸栄です。
もしよろしければこれを」

白い布に大事そうに包まれたそれは、十字架だった。
祈祷室に飾られている、何百本もの十字架の一つを持ち出してきてくれたのだ。

「あなた、これはもしバレたら」

「大丈夫です。私はもう他の地区に移ることが決まっております。
もし、何かシスタ様のお心が安らぎになればと…」

シスタは、強く十字架を握りしめた。
「ありがとうございます。今日から毎日、これに祈るようにいたします。本当にありがとう。
あなたに神の加護があらんことを」

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