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9月

120.去っていく

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「お千代さん………、彼女は?
お千代さんの番の方は、今は?」


カズマさんが真っ青な顔で、床に頭をつけたままの千代丸さんの肩を抱いて問いかける。


「今は病院だ、魔法が解けてもそのときの恐怖から精神的に参ってしまって
暗闇を恐れて寝れなくなってしまって
カズマやアキラには悪いけど、俺は学園長が許せない!
ジョン君も…、本当にごめんよ、君にはお詫びもしよがない…」


「そんな…、当たり前のことだろう?番をそんなことされて…、俺の方こそ
俺の親が、本当に申し訳ない!」

「そうですよ…、僕だってアキラさんを盾にとられたら言いなりになる自信しかない…
千代丸さんは何一つ悪くありませんよ!」


そう、千代丸さんは何一つ悪くない…
それでも千代丸さんはひたすら僕を危険に晒したことを苦に思い
ひたすら謝って、それ以来生徒会には姿をみせなくなった。
退学届は受理されずに、休学という扱いになったらしいが…


「お千代さんは実家に帰って、彼女さんの側についているらしい…
あの人の行ったことを、学校に正式に抗議する準備と傷害罪の被害届を出すそうだよ
はぁ…あの人が学園長であるかぎり、もう学校へは帰ってこないだろうな
まったく、あの人は何を考えてるんだよ……」


真っ青な顔でカズマさんが呟いている。
ダークさんがおもむろに立ち上がって、カズマさんの前に立つと


「悪いですが、私も今日から休学させていただきます。
すいませんが、実家の都合で…」

「はっ?実家のって…えっ?
ダーク、だってお前は……」

「すいませんが、今私はココにいるべきではないと判断したのですよ!
カズマ、あなたもタイミングを逃してはいけませんよ?
泥舟にいつまでもしがみついていてはいけませんよ…」


ダークさんの言葉に息を飲む…
生徒会が泥舟だとでも言うの?
あなたは…、アキラさんの親友じゃなかったの?
そのアキラさんが大事にしている生徒会を泥舟だって……


「ダークさん!それは、どういう…」

「ジョン君!いいんだ、わかったよダーク、ご忠告ありがとう…
わかったよ、いつでも戻ってきてくれ、待ってるから……」


カズマさんは僕の言葉を遮って、ダークさんの退室を促した。
ダークさんは一礼をして、振り返ることなく生徒会室から去っていった。



「カズマさん……、これからどうなるのでしょうか?
なんで、アキラさんがいないときにこんな…」

「仕方ないよ…、アキラがいればきっと何とかしてくれるのかもしれないね
はぁ…、自分が嫌になる。
いつもは生徒会長ってふんぞり返ってるのに、アキラがいなけりゃこんなザマだよ
何が正解で、何が間違っているのかすら、わかりゃしない!」


カズマさんの悲痛な呟きに、僕はただ下を見て唇を噛むことしかできなかった。
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