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8月

115.過ぎゆく夏

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「それでは、この書類でこの群れと雇用契約を結んだっということになるからな?
よろしく頼むぞ?リーダー牙狼さん!」


リーダーさんもグルルっと喉を鳴らすとおじいちゃんに近付いてきて
ペロリっと口元を一舐めした。


「うぉ!なんじゃ?今のは
ジョン君、説明してくれ…これは」

「あははっ、牙狼の口元を舐める行為は敬意を表します。
おじいちゃんを主と認めたみたいですよ?
頭とか首とかを撫でてあげると、その気持ちを受け取ったことになりますから、やられる度に撫でてください」


おじいちゃんが嬉しそうにリーダーさんの首をワシャワシャっと撫でると、リーダーさんも尻尾をかなり激しく振っている。


「ふふっ、なるほどの…やっぱりジョン君が仲介役をやってくれて良かったわい!
ワシだけじゃったら、意味がわからずに困惑して終わりじゃったよ」


嬉しそうな二人を見ていると僕も嬉しくなってしまうけど、もうすぐ夏休みが終わってしまう





すごく楽しかったおじいちゃんのうちの夏休みはあっと言う間に終わってしまって
それでも、僕はこの夏に素晴らしいモノをたくさん得ることができたから


「はぁ……、寮に帰りたくないね
ずっとここで暮らしていたい。
ジョン君と、誰にも邪魔されないで…何にも縛られないで暮らしていたい」


でもそれはおじいちゃんの加護の下で為せることだから
だからそれじゃあ駄目なんだ
いつまでもおじいちゃんに頼ってはいられないから


「僕はアキラさんから離れませんから、どんなことがあってもあなたと一緒にいますから」


きっと一緒なら耐えられるから、遠いけど見えない未来じゃないから…
微かだけど確実にそれは光って見えるから…


「あっちでは、あんな大きな声でジョン君を恋人だって叫べないし
愛してるって普通に声を言えないけど……」

「大丈夫ですよ、耳元なら何回だって言えるし、その方がアキラさんに密着できて嬉しぃから」


あなたはそんなに不安な顔をするけど、僕はあなたがいてくれたら、それだけで幸せだから……


「あっちではあんまりヱッチなこともできないよ?
僕っジョン君ともっといっぱいしたいのに…」

「ふふっ、嬉しぃ、大丈夫ですよ
声を抑えてしましょうね?
いっぱいキスをしながらすればいいんですよ?」


ほらっこんなにあなたは僕を求めてくれるかな、例えどこでも僕は怖くないから


「ジョン君……僕を見つけてくれてありがとう、君に会えたから僕は生きたいって思える。
君が愛してくれるから、僕は未来が描けるんだ」


そんなこと、僕は貴方に出会えた瞬間から貴方に救われたのに
貴方がいない世界なんて、酷く冷たくてつまらなくてただ過ぎていくだけの物だったのに


アキラさんを抱き締めて、優しいキスをして


「大丈夫ですよ、二人ならどこでも僕たちは幸せを感じられるから……いつかの未来を描けるんだから……愛していますアキラさん」


過ぎてゆく夏の儚さを惜しみながら、あと僅かな時間をひたすらにアキラさんを感じることに費やした。
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