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11.そして動き出す
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「お疲れ様です、ドボス、慣れない社交は疲れたでしょう?それにすいません、無様な姿ばかりを見せてしまいましたね」
「いや、そんなことはない!ピッペはずっと俺を守ってくれていただろう?それにしても妖精族にも身分や家制度とかあるんだな、はぁ…俺はもっと妖精族についての勉強が必要だな?」
「私だってドワーフのことについては、まだまだ知識不足ですよ?それにエルフの長の時はありがとうございます。危うく妖精族間戦争になるところでしたよ、エルフの物言いは難しいです」
「ははっ…あのエルフの長には、少し困ってしまったな!」
今は挨拶の列が一通り履けたため、二人で奥の控室で軽食をとりながら休憩をしている。しかし、お披露目パーティーがこんなに疲れるものだったとは知らなかった。
ピッペも少し疲労が顔に出ているが、俺ほどではない、俺はもうぐったりとしている。
「挨拶は一通り済みましたから、あとは個別に談話するくらいです。ドボスは奥の部屋で休んでいてください、本当は私もドボスの側にいたいのですが…すいません」
「あぁ、ピッペ…ありがとう、ピッペはすごいなぁ、まだ談話をするのか…俺も早く慣れるようにするからな!
あと談話なら、一人だけ俺も伝えたい事があるんだか…いいだろうか?」
ピッペの許しを得てから俺はお披露目パーティーで、うろちょろと色んな方に話しかけまくっていた工房長を呼び出してもらった。
「工房長、どーも!いい客は見つかりましたか?こんなとこまできて営業とかやめてくださいよ!」
「おう、ドボス!ははっ…お前には世話になり通しだよ!もう話しかける方が皆、上質な方々でな!もう俺の腕が鳴るってもんだぜ!!」
「はぁ…まったく工房長は相変わらず金の臭いに敏感だこと…ただ、あのリシュテンリッヒ候の仕事は受けないほうがいい、たぶん何か嫌がらせを仕掛けてきますよ」
工房長の眉間にシワが寄る。俺がリシュテンリッヒ候が息子を妖精王候補として推していたこと、そしてその息子を愛人としてピッペに献上し、それを跳ね除けられたことを伝える。
たぶん俺の周りのこともすでに調査済みだろう、工房が嫌がらせを受けてもおかしくないのだ
「はっ!さすがピッペレーネ様だぜ、こんなおっさんドワーフを溺愛するだけはあるねぇ
即座に跳ね除けるなんざ、いい旦那じゃねえか?
だがなドボス、そりゃ聞けない相談だぜ?」
「はい?嫌がらせで無茶なイチャモンつけられるかもしれないし、詐欺られるかもしれないんだぜ?」
「それでもだ!もし俺の工房が最初に被害にあえば、それをしっかりと商業ギルドに報告すりゃ他の工房は被害は出ねえよ!
そういう輩は、最初にしっかりと対処しないとドンドンと被害を広めてくからな!だったら事情がわかって、そこそこ被害を被っても耐えられる俺の工房で被害を食い止めるんだよ!仲間のドワーフには手を出させねぇよ!!」
そうだった。工房長のこういう男気が強いところに憧れて、ずっとこの人の下で働いて来たんだった。
ふんっと鼻息荒く胸を張る姿は、かなり勇ましくてやはりかっこいい…
「まぁ、しっかりと報告して検挙されればギルドからの奨励金もでるし、何かされれば賠償金と慰謝料もしっかりと請求するし、ガハハ…こりゃいい金づるがあっちから来てくれるぜ!
ありがとうな、ドボス!上手くいったら、また可愛い姉ちゃんのパイパイを揉ませてくれる店につれてってやるからな!!」
前言撤回だ!やっぱりこの人はかっこよくはない!!
もう頭はハゲだしてるし、髭に見せかけて鼻毛もでてるし、絶対にかっこよくはない!ただ…
「とりあえずは何か動きがあったら逐一、ギルドに報告だな!書類等の不備にも気をつけねえとな、ドボスも何があれば関係各所に連絡を頼む!相手が妖精族の良家だからな、ドワーフ族の上層部を味方につけて、ドワーフ族の問題にしてやればいい、一緒に戦うぞ!ドボス」
間違いなく逞しいのだ!意気揚々と出ていく背中を見送りながら、今日のことを振り返る。
できることならセルジオ様をどうにかできないだろうか、リシュテンリッヒ候と離したいが、あの様子では無理だろう…
当のセルジオ様が自分から動く気がないのだ、相当な教育をされているのだろう
できることは、ピッペが直々にセルジオ様を召し取りたいとして所望の旨を伝えるか…あのリシュテンリッヒ候は黙っていないだろうな…
でも、あのピッペの様子は、きっと何かセルジオ様には思い入れがあるのだろう
お披露目パーティーでわかったことは、ピッペには味方がそう多くはない、特に妖精の良家の中ではピッペへの扱いはあまりよいモノではないようだ
良家の中には妖精王へ挨拶すら来なかった家もあった。
『貧弱な王…偽りの王だと言う者もいます…』
ピッペの言葉を思い出す。きっとピッペは良家の妖精達からしたら、とても妖精王になるとは思われていなかったのだろう
妖精の良家にはそれぞれが後ろ盾になっている妖精王候補がいるらしい、それがどの良家にも見向きもされていなかったピッペが妖精王になったものだから、良家達は思案しかねているというところか?
それもこれも妖精王はドワーフ王やエルフの長、ましてや人間族の王のようには選ばれない
ドワーフの王は、全ドワーフの投票で選ばれた議員が集まる議会で選任される。今のドワーフ王は確か三選されている。
エルフの長は、200年ごとに里の持ち回りの当番制らしい、担当する里は大変に面倒がっていているとお客のエルフが行っていた。
人間族は血筋で受け継がれていくと聞いたが、あまり親しくは付き合ったことがないからわからない
そして妖精王は、世界樹が選ぶのだ
前妖精王が崩御すると世界樹に妖精王の遺体が返され、その後、次世代に最もあった王に世界樹が王冠を授けるのだとか…
世界樹の選定基準はよくわからなく、記録では三代前の妖精王は女性でかなりの年配者だったらしい
ただその代は長い妖精の歴史の中でも、かなり平穏で争いのない時代だったと記録にある。
ピッペは神殿の管理人のロルフさんが世話役で両親の紹介も受けていないし、まったく話にもでてこない、たぶん主だった良家の血筋ではないのだろう
下手をしたら在名してないのかもしれない
「よし、少し様子を探るか…」
そこまで思考を巡らせてから、独り言を漏らして、付いていてくれた従者に先導されながら部屋を後にした。
「いや、そんなことはない!ピッペはずっと俺を守ってくれていただろう?それにしても妖精族にも身分や家制度とかあるんだな、はぁ…俺はもっと妖精族についての勉強が必要だな?」
「私だってドワーフのことについては、まだまだ知識不足ですよ?それにエルフの長の時はありがとうございます。危うく妖精族間戦争になるところでしたよ、エルフの物言いは難しいです」
「ははっ…あのエルフの長には、少し困ってしまったな!」
今は挨拶の列が一通り履けたため、二人で奥の控室で軽食をとりながら休憩をしている。しかし、お披露目パーティーがこんなに疲れるものだったとは知らなかった。
ピッペも少し疲労が顔に出ているが、俺ほどではない、俺はもうぐったりとしている。
「挨拶は一通り済みましたから、あとは個別に談話するくらいです。ドボスは奥の部屋で休んでいてください、本当は私もドボスの側にいたいのですが…すいません」
「あぁ、ピッペ…ありがとう、ピッペはすごいなぁ、まだ談話をするのか…俺も早く慣れるようにするからな!
あと談話なら、一人だけ俺も伝えたい事があるんだか…いいだろうか?」
ピッペの許しを得てから俺はお披露目パーティーで、うろちょろと色んな方に話しかけまくっていた工房長を呼び出してもらった。
「工房長、どーも!いい客は見つかりましたか?こんなとこまできて営業とかやめてくださいよ!」
「おう、ドボス!ははっ…お前には世話になり通しだよ!もう話しかける方が皆、上質な方々でな!もう俺の腕が鳴るってもんだぜ!!」
「はぁ…まったく工房長は相変わらず金の臭いに敏感だこと…ただ、あのリシュテンリッヒ候の仕事は受けないほうがいい、たぶん何か嫌がらせを仕掛けてきますよ」
工房長の眉間にシワが寄る。俺がリシュテンリッヒ候が息子を妖精王候補として推していたこと、そしてその息子を愛人としてピッペに献上し、それを跳ね除けられたことを伝える。
たぶん俺の周りのこともすでに調査済みだろう、工房が嫌がらせを受けてもおかしくないのだ
「はっ!さすがピッペレーネ様だぜ、こんなおっさんドワーフを溺愛するだけはあるねぇ
即座に跳ね除けるなんざ、いい旦那じゃねえか?
だがなドボス、そりゃ聞けない相談だぜ?」
「はい?嫌がらせで無茶なイチャモンつけられるかもしれないし、詐欺られるかもしれないんだぜ?」
「それでもだ!もし俺の工房が最初に被害にあえば、それをしっかりと商業ギルドに報告すりゃ他の工房は被害は出ねえよ!
そういう輩は、最初にしっかりと対処しないとドンドンと被害を広めてくからな!だったら事情がわかって、そこそこ被害を被っても耐えられる俺の工房で被害を食い止めるんだよ!仲間のドワーフには手を出させねぇよ!!」
そうだった。工房長のこういう男気が強いところに憧れて、ずっとこの人の下で働いて来たんだった。
ふんっと鼻息荒く胸を張る姿は、かなり勇ましくてやはりかっこいい…
「まぁ、しっかりと報告して検挙されればギルドからの奨励金もでるし、何かされれば賠償金と慰謝料もしっかりと請求するし、ガハハ…こりゃいい金づるがあっちから来てくれるぜ!
ありがとうな、ドボス!上手くいったら、また可愛い姉ちゃんのパイパイを揉ませてくれる店につれてってやるからな!!」
前言撤回だ!やっぱりこの人はかっこよくはない!!
もう頭はハゲだしてるし、髭に見せかけて鼻毛もでてるし、絶対にかっこよくはない!ただ…
「とりあえずは何か動きがあったら逐一、ギルドに報告だな!書類等の不備にも気をつけねえとな、ドボスも何があれば関係各所に連絡を頼む!相手が妖精族の良家だからな、ドワーフ族の上層部を味方につけて、ドワーフ族の問題にしてやればいい、一緒に戦うぞ!ドボス」
間違いなく逞しいのだ!意気揚々と出ていく背中を見送りながら、今日のことを振り返る。
できることならセルジオ様をどうにかできないだろうか、リシュテンリッヒ候と離したいが、あの様子では無理だろう…
当のセルジオ様が自分から動く気がないのだ、相当な教育をされているのだろう
できることは、ピッペが直々にセルジオ様を召し取りたいとして所望の旨を伝えるか…あのリシュテンリッヒ候は黙っていないだろうな…
でも、あのピッペの様子は、きっと何かセルジオ様には思い入れがあるのだろう
お披露目パーティーでわかったことは、ピッペには味方がそう多くはない、特に妖精の良家の中ではピッペへの扱いはあまりよいモノではないようだ
良家の中には妖精王へ挨拶すら来なかった家もあった。
『貧弱な王…偽りの王だと言う者もいます…』
ピッペの言葉を思い出す。きっとピッペは良家の妖精達からしたら、とても妖精王になるとは思われていなかったのだろう
妖精の良家にはそれぞれが後ろ盾になっている妖精王候補がいるらしい、それがどの良家にも見向きもされていなかったピッペが妖精王になったものだから、良家達は思案しかねているというところか?
それもこれも妖精王はドワーフ王やエルフの長、ましてや人間族の王のようには選ばれない
ドワーフの王は、全ドワーフの投票で選ばれた議員が集まる議会で選任される。今のドワーフ王は確か三選されている。
エルフの長は、200年ごとに里の持ち回りの当番制らしい、担当する里は大変に面倒がっていているとお客のエルフが行っていた。
人間族は血筋で受け継がれていくと聞いたが、あまり親しくは付き合ったことがないからわからない
そして妖精王は、世界樹が選ぶのだ
前妖精王が崩御すると世界樹に妖精王の遺体が返され、その後、次世代に最もあった王に世界樹が王冠を授けるのだとか…
世界樹の選定基準はよくわからなく、記録では三代前の妖精王は女性でかなりの年配者だったらしい
ただその代は長い妖精の歴史の中でも、かなり平穏で争いのない時代だったと記録にある。
ピッペは神殿の管理人のロルフさんが世話役で両親の紹介も受けていないし、まったく話にもでてこない、たぶん主だった良家の血筋ではないのだろう
下手をしたら在名してないのかもしれない
「よし、少し様子を探るか…」
そこまで思考を巡らせてから、独り言を漏らして、付いていてくれた従者に先導されながら部屋を後にした。
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