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5.お互い体

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「こんな俺をピッペは本当に抱けるんだろうか?
俺だったら、抱きたいとはっ……思わんなぁ……」



風呂場で素っ裸のまま鏡の前に立ち、自分の姿をまじまじと見ながら独り言ちが漏れていく
入浴の手伝いをっと初日にきた従者は、さっさと断ったから俺には付かないことになっている。風呂は一人でゆっくり入るに限る。


鏡の中の自分の姿は、当にドワーフだ
真っ黒な短髪だが毛量が多いゴワゴワの髪に、顔半分は同じゴワゴワな髭があり、更にムキムキな胸筋にももっさりと胸毛が生えている。ゆっくり下に目をやれば、少し無毛な腹が続きヘソからまたモジャモジャな腹毛からそのままチン毛に続いている。足なんて言うまでもない…もう全身毛だるまだ…


おもむろに背中側を鏡に映したら、はぁ~っとため息しかでなかった。もうけつ毛がすごい…


ピッペは本当に、この俺を抱きたいと思うのか?自分で言うのもなんだが、俺なら無理だ!
抱くならせめて柔らかい体だったり、可愛らしい容姿だったり…それが無理でも、せめてけつ毛は薄くあって欲しい、こんなモジャモジャで尻タブまで毛が生えているのは本当に無理だ


もう自分ては尻穴の周りまで見る勇気はおきなかった。まぁウジウジ悩んでいても仕方がないのだ、ここはサクッと聞いてしまおう、もし抱けないなどと言われたら、せめて娼宿通いは許してもらおう





「えっ!!?あっ……あのっ…あわぁぁ!」

「えっと……大丈夫かっ?ピッペ?」



この屋敷に暮しだした日から、食後はピッペの部屋で二人でお茶をすることにしている。
メイド長の入れてくれる美味しい香草茶を飲みながら、お互いの事を少しずつ語り合っているのだ


ピッペのことを知れば知るほど好感は増していく
俺への真っ直ぐな好意に、物事を捉える柔軟さ、なによりも世間なれしていないのが可愛らしい


普段は冷静沈着で冷酷無比な妖精王と恐れられているらしいが、俺への優しい対応から、本当か?っと思ってしまうが、騎士たちはピッペに向ける緊張感と尊敬の念から、真実なのを感じる。



ただ今も俺の言葉に、顔を真赤にして両手で口元を押さえている
少し大きめなソファに隣同士で座っているが、ズリズリとなんとか俺から距離を取ろうと隅に寄っていってしまう



「えっと……その反応は、俺は抱く対象ではないということか?」

「そんなわけないじゃないですか!抱けますよ!!
もうめちゃくちゃ抱きたい!どんだけドボスをお嫁ちゃんにすることを夢見てたか、ちゃんと話したでしょう?でも……あのっ……」



よかった。距離を取られて、胸にズキリっと痛みが走ってしまった。自分でもかなりショックだったらしい…ただ本当に抱けるのか?



「そのっ…まだ結婚式もしてないし、そういうことは初夜でするものだと思ってました…だからっ……」



なんだ?こんな誰もがコロリっと簡単に落とせるような美丈夫なのに、体を小さくして、真赤な顔でもじもじと話す様は完全に…おい、まさかだが…、本当に?



「ピッペ…えっと……結婚式をあげてからってことは、ピッペは誰も抱いたことがないってことか?」

「ゔっ…ゔっ……だって!この前に話したでしょう?ずっとドボスのことが好きだったんです!ずっとドボスをお嫁ちゃんにすることを夢見て強くなってきたから……だから、他の人なんか触れたことすらないですよ!」



まじか?嬉しいような恥ずかしいような……とりあえず顔がニヤニヤしてしまう、確かに二人で話してて、ピッペがどれ程、俺を好いてくれて、苦しい鍛錬を積んできたかもわかっていたが…
それとこれとは話が別だ!ニヤニヤしてしまうほど嬉しいが……
 


「ピッペ…そのっ知識はあるのか?男の抱き方とかは知っているのか?っというか先ず生殖行為は妖精には必要なのか?」

「えっ?もちろん、必要ですよ!お互いの想いを受け止める大事な行為です。
確かには繁殖としては…ちょっと違いますが、性行為なしの夫婦では子は生まれません!それに、ちゃんと閨の教育は受けてるから大丈夫ですよ!」



ものすごく不安しかないのだが、つまり妖精の繁殖自体には性行為は直結してなくて、しかもピッペは教育でしか性行為をしらないと……下手すると座学とかでしか習ってないのでは?



「そうかっ…それは男同士の教育か?ピッペがどこまでやりたいかによるけど、男同士でお互い初めてだと大事故もありえるんだが……」

「初めて同士?えっ?ドボスも初めてなの??
うぁぁ…私ってドボスの初めてをもらえるの??大事にします!すごくすごく優しく大事にしますから!!」

「えっと、初めてではあるんだが…大事とかはありがたいけど、本当に事故にだな…」



よく聞いてみれば、やはりピッペの知識は座学だけだった。男同士の性行為も知ってはいるみたいだが…



「えっ?本当に?普通は入れたらすぐにトロトロに濡れて、そのままトコロテンで射精して、気持ちいぃってアヘ顔になるんじゃないの?だって漫画ではそうだったのですが…」

「んっ?マンガ?トコロテン??アヘ顔???えっと…マンガとは教本のことか?それはかなり偏った教本だ、確かに淫魔とか性行為に特化した種族ならそうかもしれないが、俺はドワーフだから尻は濡れないし、快感を拾えるかもわからない、正直このまま初夜を迎えるのは、不安なんだが……」



ピッペの顔がサッと真っ青になっていく、俺は男を抱いたことはあるが男娼だったり一夜限りの遊びだったりしかない、まったく初めての相手は抱いたことはないし、ましてやお嫁ちゃんということは、俺が抱かれる側なわけだ…



「そこでだ、その、練習してみないか?急に本番をして大事故になったら大変だろう、それで、もしも…俺の体を見て抱けなかったら…」

「抱けないわけないでしょ!もうすぐにでも抱きつくしたい!ドボスをベッドに押し倒してグチョグチョに抱きたいんですよ……あっ、でもっ……あのっ……」



ピッペが部屋でくつろぐ時にいつも着ている薄いガウンを腰紐で縛ったような服の襟元をキュッと掴んでいる。まるで自分の身を守るように…
さっきの俺を抱きたい発言とは相違する行動だ



「ピッペ、どうかしたか?その…やはり俺なんかを…」

「違います!それはありえません!……そのっ…私の体を見せるのが恥ずかしくて、ドボスに貧弱な妖精王だと思われてしまいそうで」

「それこそありえないだろう!ピッペのどこが貧弱なんだ?」



俺の身丈の倍以上あり、肩幅は1.5倍はあるピッペが貧弱だと言うなら俺はどうなるのだ?
流石にその物言いは、ちょっとムッとするのだが…



「あっ!?違います。そういう意味じゃなくて…そのっ、でも確かにいつかバレることですよね…」


ピッペは俺のムッとした様子に慌てたようなパタパタと手を振る。そして下を向いて眉間にシワを寄せる。
そして人払いをすると、腰紐を下にずらして意を決したような顔で俺に向き直る。



「あのっ…ドボス、私は本当は弱い妖精で、本来なら王になれるような器ではなかったんだ…」

「あぁ、話は聞いているよ、ピッペは歴代の妖精王のなかでも誰よりも努力と鍛錬で妖精王にまで登りつめたっと皆が言っている。俺はそれをすごいとおもっている!」



ピッペの襟元を握る手がプルプルと震えている。痛々しいくらいに唇をきつく噛んでいて…



「どうか…どうか、この体をみて軽蔑しないで欲しい…どんなに醜い体になっても、どうしてドボスと結ばれたかったんだ…」



ピッペが襟元を緩めるとそこは黒く染まっていて、ピッペの綺麗な色白の肌とは対比的な黒、黒、黒…
俺の目は驚きに見開かれていった。



「ピッペっ…これって、魔法陣だなっ、体に墨で彫ってるのか?っっっ……ピッペ、これって……」



黒の正体は幾重にも彫られた魔法陣で、そう魔法に詳しくないドワーフの俺でも解読できるのは、魔法の流れを正すような文様だけで、それが幾重にも幾重にも重なりあって、真っ黒な肌になっている。


襟元の隠れるギリギリのところまで、ひたすらに魔法陣が描かれていて、俺の背筋に氷を当てられたような冷たいモノが走る。


本来ならこんなことはしない、冒険者が握力を強くしたいために魔法陣を腕に彫ることがあるが、それですら口に布を噛ませて暴れないように縛りつけて行うという


しかしピッペが彫っているのは自分自身の魔法回路に効果をだす魔法陣だ…そんなものを彫るなんて、神経に直接針を突き立てるようなモノで、それは拷問にも等しい行為で、それこそ痛みで発狂死してもおかしくない所業だ…



「私の魔力はすごく暴れん坊だったのですよ、魔力量は人一倍に多かったのですが、それを御することが私にはできなかったのです。
だからこのようなも魔法陣モノを使いました。このようにして妖精王になった私を偽りの王だと言う者もいます。」

「そんなわけないだろう!こんなっ…こんなっ、酷い、辛い、苦しみに耐えてピッペは強くなったんだろう!偽りなはずがないじゃないか!!」



なぜか涙が滲みそうになる。ピッペがどんなに頑張って妖精王になったか周りからは聞いていた。でも話に聞くと、目の前に見せられるとでは雲泥の差だ…



「ピッペは…ピッペは…本当に、すごい妖精王だよ!俺はピッペを誇りに思う。」

「あぁ…ドボスにそう言ってもらえたら、私の全てが報われた気がします。ふふっ…ありがとうございます。ドボス…貴方を好きになって、本当によかった。」



ピッペが目に涙を溜めながら嬉しそうに破顔していくから、俺の考えが恥ずかしくなってしまう…性行為ができないなら、娼宿に行きたいなど



「ところで、なんで私がドボスを抱けないなんて思ったのですか?反対ならまだしも、私の愛がまだ届いていなかったのですか?」

「いやっ…違う、ピッペがどれ程に俺を想ってくれているかは、本当にわかったから…ただ、生理的にな?俺はっ…そのっ…見た目で、毛が…」



首を傾げて、「毛っ???」っとしているピッペがなんだがすごく幼くて可愛らしく見える。
俺の理由はピッペのように痛くて、重いものなんてこもっていないし…最悪、毛深すぎて無理だと言われたら、ピッペの魔法で除毛してもらえばいいだろう


ただ、やはり拒否されるとちょっと傷つくだろうかっ…なんて少しまごまごしながらも、部屋着に着ている七分袖のシャツのボタンを外し、前をくつろげていけば…


ピッペの目がこれでもかっと見開かれて凝視されてるのを感じる。ゴクリッとでかい音が聞こえるほどに喉を鳴らして唾を飲み込んでいて…その反応が俺の指を震えさせる。



「えっと…そのっ…俺は体が毛だらけで、ピッペが生理的に無理かと……」



ピッペの反応は置いておいて、ピッペが見せてくれたのだから、俺のなんか隠すほどのモノでもないと無理矢理に結論付けて、もう躊躇なくバカッとシャツの前を開けば…



「あっ…えっっ…うそっ、ドボスのおっぱ……最高っ…ブボへッ!!?」

「うわっ!!?ピッペ、どうした?ピッペェェ!!?誰か来てくれぇぇ!!?ピッペかぁぁ!?」



ピッペが口元を抑えながら、ぷしゃっっ!!っと大量の血を噴出させて、座っていたソファからずり落ちるように床に倒れていった。
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