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34.二人の家に

1032.序章

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家に帰ってくると、シバが私に抱きついてすごくいい顔でグリグリと頭を擦り付けてくる。
まるで褒めてくれとせがむ犬ように


「ふふっ…しばらくゆっくりできますね!
もうバスターさんは軟禁しちゃいますからね、ベッドから一歩も出させませんからね!」

「ははっ、そうたな…シバのおかげで一週間も休みをもらえたもんな!本当にすごかったよ!ありがとうな、でも本当によかったのだろうか…」

=============


「番休暇を申請します。明日から俺とバスターさんは一週間は休ませていただきます!」

「はっ?番休暇って…あっ!先月の役員会でやってたのか、確か会社側に拒否権がなくて…うぅ~せめて明日はバスターさんの引き継ぎをお願いできませんか?明後日からとか…」

「駄目です!明日から休みます。番休暇は急になる場合もあるんだから、最初にとる俺達がロールモデルになるんだから!しっかりといただきます!」


番ってるとわかった私が、感極まってしまって堪えられずに泣き出してしまったから、皆さんが気を利かせて退席くださった。
しばらくシバに慰められてやっと落ち着いたところで、皆さんが呼び入れて笑顔で談笑していた和やかな雰囲気からの、シバがアキラさんに番休暇を申し出ている。
私はまだ少し恥ずかしいが、今更取り繕っても仕方ないだろう…


「ははっ…アキラさんがシバに負かされてるのは珍しいな、それにすいません、急な休暇申請なんて…私は今回、皆さんに甘えてばかりですね」

「バスターさん!番休暇は人狼にとっては大変に大切な休暇です。本来は無申請でも後からでも受付される休暇だし、人狼をリクルートするなら絶対に定めないといけない休暇です!我が社でも人狼のリクルートしていくなら推し進めなきゃ!アキラさんもさくっと通してください、綺麗なロールモデルにしてください!」

「あぁ…ぐぅの音もでない正論だ、さすがに人狼のリクルート部門を任されてただけありますね、わかりました。今日中に判をします。
バスターさんも気にしないで、今回のプロジェクトでは貴方が一番の我が社への貢献者なんですからね?
それにずっと働き詰めだったでしょ?もう残業時間も36協定とかヤバいじゃないですか!この際の溜まった代休も使い切ってくださいね!」


働き詰めと言っても、私はやりたくてやっていた仕事だし…
あとこの人狼公開決闘チャンネルがどれ程会社に貢献しているか、怪しいところだ…
下手したら赤字になってるかもしれないのに


「とりあえず、明日から一週間はお休みいただけます。その後は要相談かな?
うわぁ…最長で一ヶ月も取れるの?すごい休暇だなぁ」

「まあ、人狼の企業なら当たり前ですよ?
人狼自治区なら助成金が出ますし、定められてない企業は罰則があります。
もちろん人間族の会社も支所があれば出せますが、ありましたっけ?」

「…支所か……あっ!バスターさんのために借りた社宅用マンションをそのまま物置にしてる!
せっかくのロールモデルなら完璧なものにしたい、助成金の申請してみるよ!ありがとう、ダーク!」


アキラさんが気持ちを切り替えて、新しい仕事ができたとばかりにカリカリとメモを走らせていってくれて…


==============

もうあとは簡単な事務手続と、軽い引き継ぎをして帰ってきてしまったが…本当によかったのだろうか?

「ほらっ!バスターさん、そんな顔はしないでください、番休暇は当然の権利ですからね!
とりあえず、明日に番届を出しましょう!
ふふっ…これで俺達は完全に番ですね!」

「あぁ…ただ、その前にお母さんに電話をして謝らないといけないな…できれば休暇中にでも直接謝りに行きたいから、できるなら伺う約束を頼めるか?」


シバの嬉そうな顔が少し曇っていく、お母さんに番う許可を貰わないままに番ってしまったのだ…きっとご立腹するに違いない


「バスターさんが悪いわけじゃないから…俺がちゃんと説得するし、バスターさんが謝らなくても…」

「違うよ、シバ…こういうときは一緒に謝らないとな?番うのはシバだけじゃ番えないだろう?
二人で番ったのだから…二人の責任だよ、だから一緒に頭を下げに行こうな」

「うぅ…俺の雌は優しすぎるぅ、わかりました。とりあえず母ちゃんに電話して、……って!ヤバい、なんかめちゃ母ちゃんから着信がきてました。何?何かあったの?」


シバが慌てたようにお母さんに電話をかければ…


『もしもし…シバっ、アンタは何をやってるのよ!このバカ息子が!!』


受話器越しですら威嚇スキルが効きそうな、お母さんの声が響いてきた。
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