夢から覚めるなら殺して〜虐待を受けてきた白狼、天才科学者はなんとか助け出すが、歪んだ性知識と無知な性知識、いつになったら幸せになれるの?

モスマンの娘

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32.亀裂

961.逃げる 3  (sideシバ)

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「うぅ…はぁっ、寒いぃ…」

うわ言のような呟きに目が覚めていく、どれくらい寝られたのだろうか?
わからないけど、寝られたおかげで頭がすっきりしている。
薬の効果もマシになっていて、あの鬱々とした気分も今はなくて

そんな俺とは対照的にカズマさんが額に汗をびっしりかいて、ガタガタと体を震わせている。
絶対に体調が悪いんだ…体の傷が炎症して熱が上がってるのだろうか?それとも血を流しすぎて体温が上がらないのか?

とりあえず寒いなら、俺の体を擦り付けて腕が使えたら抱きしめれるけど、今は後ろ手で縛られてるからできないのがもどかしい、できるだけ体の面積をくっつけて、俺の毛で少しでも温められるように…


「あぁ…?なんだ?擦り寄ってきて…また薬が効いててきましたか?ふふっ…違うか、俺を温めようとしてくれてるのかな?
ありがとうございます。はぁ、シバさんの毛は温かくて、柔らかくて気持ちいいなぁ…」

「くぅ~、くぅ~?」

「はぁ、大丈夫ですよ…ふふ、本当に可愛いなぁ、でももう少し休ませてください、魔力を無理に使った反動ですから、大丈夫ですよ…死ぬようなことはないから…」


それでもゼェゼェと息を荒くしていて、きっと転移魔法なんて使える体調じゃなかったんだろうに…
なるべくカズマさんが休めるように、負担にならないように体をくっつけて擦るように体を揺らす。本当は背中を擦ってあげたいんだけど…


「はぁ…ふぅ…温かっ…」


それでも呟かれた言葉にほっとして、擦り付けるのを続けていれば、カズマさんからずぅ~ずぅ~っと寝息が聞こえてくる。
鼻詰まりのような寝息だけど、たぶん鼻の骨も折れてるんだろうな
せっかく綺麗な顔なのに、ひどく残念に思えるのは、さっきしてもらった情事のような処置で情が強まってるせいだろう、それでも寝れたならよかった…


ガンッ!ガンッ!ガンッ!


そんな静寂は扉を強く叩く音と、扉の外でガヤガヤとしゃべる複数人の声にかき消された…誰かがくる…
助けだったらいいけど、もしも追手だったら?

あの部屋から逃げ出したことは、すぐにバレるだろう
転移魔法で飛んだことがわかれば、通報されることを恐れて、すぐにこの拠点から逃げるだろうが、もしカズマさんが遠くまで飛べないっとわかっていたとしたら、俺ならすぐに建物内を隈なく調べ回るだろう…

カズマさんは、まだゼェゼェと荒い息のままでとても魔法なんて使えるとは思えない…
もし連れ帰らされたら、またあの気持ち悪いことをされる…考えるだけで毛が逆立った、あの手で触られる感触も、舌も息遣いも、中に入れられた熱も
全てを拒否するように、胃の内容物が込み上げてくるけど、今は吐いてる場合じゃない…

動かせる足を蹴って、ぐいぐいと背中で押してカズマさんの体をズラしていく、机の下に二人で小さく隠れながら扉の方を忍び見る。

もし助けなら冒険者だろうから大体は人間がくるだろう、追手ならあの優男とデブ小山以外は人狼しかいなかったから、たぶん人狼がくる…

人狼ならいけるかもしれない、俺の威嚇はそれなりに強いから声をだせなくても、同族ならポージングと覇気だけで効くかもしれない
カズマさんは自分の体を張って退路を作ってくれたんだ、今度は俺がカズマさんを守るんだ!

ガチャリっと開いた扉から入ってきたのは、人狼だった……
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