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28.シバという人

785.惨事の後は  (sideジョン)

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まだホールの空気は汗臭くて、吐瀉物と排尿臭がして気持ち悪い空気のままだけど
着替えたりシャワーを浴びて帰ってきた人達も集まったみたいで


朝一でホールに集めやれたときとは明らかに違う雰囲気になっている中で、アキラがまた壇上でにこやかに喋りだした


「皆さん、お疲れ様です。
ほとんどの人達は疲労困憊ですね?
ははっ…酷い臭いですね…」


アキラがパチンッと指を鳴らすと、ホール全体の淀んだ空気が一瞬で清々しい空気に変わっていく
清浄魔法だ…しかもかなり大々的にかけられた。
周りの訓練生の体に緊張が走っていく


「僕が魔法が使えないって思っていた方々、がほとんどなんじゃないかな?
まぁ…そうですよね、この見た目に普段の様子だと、そう思われて舐められてもしかたがない…
でもねぇ、僕はある条件下なら使えるんですよ…こんな魔法もね?……舞え、清姫」


アキラの左手に黒い炎の蛇が現れる。
催眠状態で見せられた魔法よりもずっと小さいけど…それでも本物はやっぱり威圧感がすごい…
ホールの訓練生達の体がカタカタと震えていく、真っ青な顔色は今にも卒倒しそうな人達ばかりだ


「条件が変われば、僕みたいな力のない人間でも豹変するんですよ…
今回だって、ここがダンジョンだったら?敵地だったら?一団総崩れで全滅でしたよね?
見た目で舐めないでください!物事の本質を捕らえろえてくださいよ…
冒険者がこんだけ集まってるのに、この体たらくはお笑いですね…」


アキラが左手を振り払って炎の蛇が消えていく、朝の訓練生とは打って変わってアキラの言葉をひたすらシンッと静まり返って聞いていく
そこにはアキラへの恐怖と敬意が見えていて


「僕はあなた達に強くなってもらわなきゃいけない、無駄死になんてしてもらいたくないんですよ!誰一人としてね…
羽虫?モルモット?冗談じゃない…そんなんで終わってもらったら困るんですよ!
あなた達は我が社を背負って立ってもらわないといけない!
我が社の立派な社員として、強い冒険者になってもらわないといけない!!
そのために常に本質を見る目を養ってください、先ずは生き残るために!よろしいですね?
今日の講義は以上です。ありがとうございました。」


アキラがペコリっと頭を下げると、訓練生は皆バッと頭を下げていった。
すごい変わり身だなぁ…僕も周りに合わせながら頭を下げてアキラが壇上から降りていくのをチラ見している。


カズマさんとシノダ教授を引き連れて普段通りに歩く姿は、どこかやっぱりピリピリしていて…
たぶん普段より不安定な気がする。
魔力を吸収しているからかな?
大丈夫かな?
心配だけど…僕にできるのはアナウンスに従って、順番に退室していくだけだった。
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