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23.逃げる君

611.暗示

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カズマさんがチッっと盛大に舌打ちをして首筋に手をやると、僕の噛み跡キスマークからにじみ出る血を見て、憎々しげに再度首に手を当てる。


小さく何かを呟くと、首筋の血は止まり噛み跡キスマークはなくなっていた。


「はぁ…、まさかジョン君がこんなに激し目にアキラを抱いてるなんてしらなかったよ
ははっ…ならさっきの抱き方も普段通りってことかな?」


さっきの抱き方?何のこと…??
そのとき脳裏に、泣き叫びながら蕾を引き裂かれて犯されていくアキラが映しだされる。


「本当にひどい抱き方だったもんね…アキラ可哀想に、泣き叫んでいたじゃないか…
なのにジョン君たら、ふふっあんなに興奮しちゃって、ひっどいよな…

ははっまさかまだ許されるとか思ってる?アキラの下に帰れるとか、思ってないよね?
あんな酷いことでしといて…」


次々に頭の中アキラが映しだされる。
殴られて、腕を折られて、足を折られて
腫れ上がっていく綺麗な顔、痛みに耐える呻き声、耐えられずに溢れる涙


「嘘だ……アレは、僕がやったの?
アキラを僕が、僕が殴って骨を折って犯したの?
だって……なんで?僕が…」

「覚えてるだろう?
あの惨めで可哀想な顔も
泣き叫ぶ無様な顔も
殴る感覚も衝撃も
無理矢理に分け入った中の熱さも
中に出した興奮も
あの脳が焼ききれそうな快感も
全部覚えてるだろう?
ははっ君じゃなかったら

……誰がやったっていうの?」



カズマさんの声が呪文のように、僕の頭に入って次々と酷い記憶が流れていく。
覚えている…
殴りつけた顔の骨の感触も
骨を折る時の振動も
無理矢理に引き裂いてねじ込んだ引きつる痛みも
アキラの中に出したときの快感も


アレは、僕がやったんだ……



「そんな君が、許されるわけがないよね?
もうアキラに触れるわけないよね?
どの面下げて会うっていうのさ?
もう一層……消えてしまった方が…いいんじゃない?」


そうだ、僕は許されない…もうアキラには触れない…

会えもしない…
消えてしまいたい……


「ふふっ…そうだよ、君は消えた方が幸せなんだよ?
もう、君は許されないのだから!!」


僕の頭にカズマさんが手をかざす。
そうだ…僕は……



ジョン…


遠くでアキラが僕を呼ぶ声がした。
優しいいつものアキラの声で

………僕が消えたらアキラは?
あのままなの?
あの傷ついた体のまま放置されて…
呼ばなきゃ!助けを呼ばなきゃ…
アキラが死んでしまう!!


歯を食いしばり、頭にかざされるカズマさんの腕を掴んで引っ張っり、腹に思いっきり蹴りを入れる。

 
「ぐはぁ!グックソッ、まだ正気が、残ってたか……イツッ」


腹を押さえ苦しむカズマさんに、そのまま体重をかけて首にエルボーを入れると、グハァっと声を出して動かなくなった。


僕は服も着ず靴も履かずに、ただただアキラの助けを呼ぶために、そのまま部屋から必死に駆け出していった。
僕の存在価値はもう、それしか残っていないのだから……
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