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22.阻む君

589.不穏な音

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「ジョンっっ!!」


聞き慣れない何かがぶつかる音に、体の血が下がっていくのを感じる。
廊下に出て、ランドリールームには気配がないことを確認して
二階のベランダに駆け上っていく。


ベランダにもジョンの姿がなく、半分ほど残された洗濯物とはためくシーツに体が震えだす。
ベランダに飛び出て辺りを見回しても、まったく姿が見えなくて


「ジョンっ!どこだよ!!
返事をしてよ!!
ジョンっっ!!」


悲鳴のような自分の声に……



「は~い、こっちだよ!!ごめんね…落っこちちゃった……」

気の抜けるような声が、ベランダのすぐ下から聞こえた。



玄関の鍵を開けて、入ってきたジョンはちょっとした擦り傷と土埃に汚れてるだけで、特に大きな怪我をしてる様子もなくて



「なんで?なんで落ちたの?
僕っ、ジョンに何かあったかと思った!
何?鳥?蝶々?次は何に気を取られて落っこちたんだよ?
前もやらかしたよね!今度は何よ?」


「ごめん、本当にごめんなさい!違うの、風がね強くてね?
アキラのパンツがね、飛ばされちゃって追いかけたらちょっとバランス崩しちゃってね…、本当にごめんなさい」


「はぁっ?パンツ??僕のパンツなんかでベランダから落ちないで!
僕……本当に、ジョンに何かあったのかと思って……もぅ、心臓が止まるかと思ったよ!!」


涙まじりになりながら、僕が本気で怒れば…大きな体をシュンとしていく。
まぁ悪気はないだろうし、大きな怪我もなさそうでよかった


救急箱を持ってきて、体をざっとシャワーで綺麗にしてきたジョンの擦り傷に消毒液を振りかける。


「うひゃ!アキラ…もっと優しくしてよぅ
ちょっと沁みるよぅ」


「ちょっとは我慢して!
僕は怒ってるんだからね!プンプンなんだからね!」


「あぁ…ごめんなさい、ふふっでも怒ってるアキラも可愛いよ?
ずっと見てたくなっちゃうよ…」


甘い雰囲気で誤魔化そうとしても駄目なんだからって思いで、プシュップシュッっと擦り傷に消毒液を振りかければ
ヒャァァっと声が上がる。


もうっ!ちょっとは反省をするといい!!



僕がジョンを怒るのはすごく珍しいことだけど、いつも僕が怒られてばかりだけど
消毒液をかけた傷口をフゥ~フゥ~っと息をかけて、痛みを紛らわそうとしている姿に、力が抜けていく。


僕はあんまり怒りを持続させるのが得意ではないらしい…
ジョンは一度怒ると、かなりしつこくしなかなか許してくれないけど
たぶん怒るのにも体力って必要なのかもしれない…
なんて他事を考えていたら


「アキラ、コーヒー飲むでしょ?
コーヒーメーカー終わってるよ
ふふっ…一緒にコーヒー飲んで機嫌を直してよぅ…」


何が嬉しいのか、尻尾がちょっとパタパタなっているジョンに促されて席につく
確かにまだ少し気持ちが興奮したままだから、
コーヒーでも飲んだら落ち着くかもしれないし……


「はい、アキラ…どうぞ!」


向いに座ったジョンの手元を見て、血の気が再度引いていくのを感じた……
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