夢から覚めるなら殺して〜虐待を受けてきた白狼、天才科学者はなんとか助け出すが、歪んだ性知識と無知な性知識、いつになったら幸せになれるの？

15.二人が一緒に歩むため

296.あるサキュバスの過ち

彼女は人間の中で育ち、人間と一緒に生活してきた。


自分がサキュバスだと自覚していたが、魅了をかけるどころか練習すらしたことがなかった。

彼女はあの講演会の司会を行っていた。アキラにはずっと憧れていた。

知的で優しくてスマートなアキラに
そんなアキラに近づくことができる、今回の仕事を本当に楽しみにしていたのだ。


なのにあの講演会の日、舞台袖で聞いてしまったのだ


『僕から離れないでくださいね？』　


憧れていたアキラの想い人への優しい言葉…

おもわず苛立のまま魅了をかけてしまったのだ。
魅了はただでさえ成功確率の低い状態異常だ

練習さえしてこなかった自分にかけられるはずがないと…
ただ少しの憂さ晴らしのつもりで…


アキラには何も変化がなく、普通に会場を後にした。
ホッとしながら、その日は少し枕を濡らして眠った。


次の日、アキラへの魅了の被害届が出されたことを知り、彼女は真っ青になって警察署に駆け込んだのだ。






「私の中では、魅了はただ幻覚を見せるだけの状態異常という認識でした。
しかも男が喜ぶようなね

だから、その程度なら被害届を取り下げるなんて、造作もないことだと思っていたんです。

でもアキラさんの怯え方をみて自分の認識が間違っていたと気づきました。
あれは簡単にすませられることじゃない

本当に申し訳ありませんでした。」

深々と悲痛な表情で頭を下げる蛇塚に今までの毒気など微塵もなかった。