71 / 86
【エイデン視点】本編58から60話 ③
しおりを挟む
「で? 結局どうするんだって?」
頭は痛いが悩んでいても始まらない。とりあえず手をつけられるところから始めるしかない。
「エイデン王がクリスティーナ様の風を抑え込んでくれたら、後は僕がクリスティーナ様の治療をします」
「治療って……お前は医者なのか?」
見るからに頼りなげだが大丈夫なのだろうか?
「いいえ。僕は医者じゃありませんよ。ただリフランスの力を持っています」
リフランス……癒しの力を使うということか?
リフランスは大国会議に参加する国の一つで、王族は癒しの力をもつとされている。癒しの力は薬や治療で治らないような傷や病気まで治せると言われているが、実際にその力を見たことなどない。確か国外の人間には力を使うことも、その様子を見せるのも禁じられていたはずだ。
「そうなんですけど……僕、王族じゃないんで構わないかなって」
「王族じゃない?」
王族じゃないのに癒しの力を持っているというのか?
「あっ。もちろん王族の血は入ってますよ。僕の父親は、現国王の父親である先の国王ですから」
先の国王って確かジジイと同じくらいじゃなかったか?
「何でも村を通りかかった父が母を気に入って、僕が産まれたって聞いてます」
ざっくりとした説明に、はぁ……としか答えようがない。
「リフランスでは正式な婚姻関係の元に産まれた子供のみが王族として認められるんです。なので僕はリフランス王家の人間ってわけじゃないんです。父は女好きだったようで、王族じゃない兄弟姉妹がたくさんいるみたいですよ」
そうか。だから顔に見覚えがなかったのか。
「それで何故王族でもないアランが大国会議に同行してるんだ?」
「あー、それはですね。ジョアンナ様がいらっしゃると聞いて、国王に無理言ってついて来たんです。王族ではありませんが、現在一番強力な癒しの力を持っているのは僕ですから、色々融通はきくんですよ」
へらへらっと笑いながらアランが嬉しそうに目を細めた。
「こんな時じゃないとジョアンナ様に会えないですからね」
その言葉にジョアンナが思いっきり顔をしかめた。
「あなたがいるって知ってたら、私は来なかったわよ」
「またまたぁ」
邪険にされても、アランはニコニコ顔だ。
全く物好きな奴もいたもんだ。こんな煩い女の何がそんなにいいんだか……
「あの、エイデン王……」
声の主に気がついて、「わかっています」と返事をした。ロナウドが俺の横で辛そうな顔をしていたのだ。いけない、いけない。アランの登場で色々なことが頭から抜け落ちるところだった。
気を引き締め直し、横たわるクリスティーナの様子を観察する。
「……で、俺がこいつを連れてクリスティーナ姫の側まで行ければいいってことだな」
「そうよ」
「そうです」
ジョアンナとアランが同時に返事をした。
「もし僕がクリスティーナ様を回復させる事ができたら、ジョアンナ様との結婚を認めてくれますか?」
「ああ。クリスティーナ姫が回復してレイナを助ける事ができたら、結婚でも何でも認めてやるよ」
アランの顔が文字通りキラキラと輝いた。反対にジョアンナがブスっとした顔を見せる。
「ちょっとエイデン、何言ってんのよ!! 私の結婚にあんたの許可とか関係ないじゃない」
まぁそれもそうなのだが……
ジョアンナの結婚には、王である俺よりもジョアンナの父である俺の祖父の許可が必要だろう。でも今はアランにやる気を出させることの方が重要だ。
アランについてくるよう指示し、意を決して部屋へ足を踏み入れる。
ひゅっ。風を感じた次の瞬間、パラリと髪の毛が数本床に落ちた。
あっぶねぇ……鼻がなくなるところだった。
「あっ。もし怪我しても僕が治しますんで、チャチャっと行っちゃいましょうよ」
アランのガッツポーズに何だか気がぬける。
「じゃあお前が切られて瀕死になったら誰が助けるんだ?」
「あ……」
どうやら自分が怪我をする可能性は考えていないらしい。緊張感のないアランに何だか不安が募る。
さて、どうするか……
だいたい家族でも近づけないのに、俺がクリスティーナに近づけるんだろうか? 元婚約者ったって形だけのもんだったんだ。クリスティーナが俺を好きだったかなんて分からないじゃないか。
それでも消えてしまって行方の分からないレイナのためには、どうしてもクリスティーナの意識が戻る事が必要だ。
「……クリスティーナ姫!!」
近づけないなら叫ぶしかない。ベッドに横たわるクリスティーナに大きな声で呼びかける。
「聞こえていますか? フレイムジールのエイデンです」
もちろんクリスティーナから返事はない。試しに一歩近づくと、小さな旋風が巻き起こった。
「クリスティーナ姫……あの時は婚約解消して申し訳ありませんでした。あなたを傷つけた償いを今させて欲しい。あなたを助けるために、私をあなたの側に行かせてくれ!!」
俺の言葉が届いたのだろうか? 旋風が消滅した。その隙にアランの腕を引き、クリスティーナのベッドサイドまで投げ飛ばす。アランは体制を崩しながらも、なんとかクリスティーナに触れられる位置にたどりついた。
アランが瞳を閉じた。合わせた手のひらに微かに光が集まってくる。皆が息をひそめ、アランの力の発動を待った。
「何してるのよ!!」
突然の甲高い声にアランの光が消滅する。見るとシャーナがクリスティーナの部屋に足を踏み入れようとしているところだった。
「きゃっ」
シャーナに反応したのか、クリスティーナの風が再び巻き起こる。荒れ狂うような風に阻まれ、体をよろけさせたシャーナをエメリッヒが抱きとめた。
「くそっ」
これじゃ俺達も微塵切りにされちまう。
「アラン。俺の体が持つ間に、さっさとやってくれ」
男を、というよりレイナ以外を抱きしめるのは嫌だが仕方ない。アランが切り刻まれないよう覆いかぶさる形で盾になる。
激しい風の音に混じり、シャーナとエメリッヒ国王の声が聞こえてくる。
「シャーナ、大丈夫か?」
「わたくしは大丈夫です。それよりあんな怪しい者をクリスティーナに近づけるなんて危険ですわ」
「う、うむ。まぁそうなんだが……」
シャーナの言いなりになりそうな国王を心配したのか、ロナウドが口をはさんだ。
「シャーナ様、私達ではクリスティーナに近づけない以上彼等にお願いするしかないと思いますよ」
「でもクリスティーナを刺したのは、エイデンの婚約者なんですよ」
本当にレイナが刺したのかどうか、クリスティーナが回復すればすぐに分かることだ。アラン頼む。シャーナが邪魔する前に何とかしてくれ。
目を瞑り手を合わせていたアランがクリスティーナの腕を掴んだ。その途端、見ている皆が言葉を失ってしまうほど美しい7色の光が、アランとクリスティーナを包み込んだ。
カッ。
一瞬の激しい光線に思わず瞳を閉じる。
瞳をあけると光は全て消え、アランがはぁはぁと肩で息をしていた。
「お、終わったのか?」
長距離でも走ったかのような息の上がり方をしながらアランは頷いた。あんなに激しかった風もいつの間にか消滅している。
「クリスティーナ!!」
ロナウドが妹の名前を呼びながら、部屋に駆け込んで来た。
「んっ」
目を開いたクリスティーナが、まぶしそうに目を細めている。
「よかった……クリスティーナ……本当に良かった」
「お兄様? 一体どうしたんです?」
涙を流すロナルドをきょとんとした顔で見つめるクリスティーナは、さっきまで瀕死状態だったとは思えないほど血色がいい。
「エイデン様!?」
凄まじく散らかった部屋を訝しむように辺りを見回していたクリスティーナが俺を見て止まった。
「や、やだ。こんな見苦しい姿……」
そう言って布団に潜り込んでしまったクリスティーナに思わず笑みが浮かぶ。布団から出てこないクリスティーナの側に寄り、ロナウドが涙をぬぐう。
ロナルドから刺されたという話を聞いたクリスティーナが布団から顔を出した。
「わたくし刺されたんですか?」
記憶が曖昧なのだろうか? クリスティーナは首を傾げている。
「クリスティーナ、あぁ、心配したんですよ」
いつの間に側に来たのか、シャーナがクリスティーナの手を握った。
「クリスティーナ、あなたはエイデンの婚約者、レイナさんに刺されたんですよ」
なっ!? あくまでもレイナのせいにして逃げ切るつもりなのか!!
っと、クリスティーナがシャーナの手を振り払った。
「違うわ。わたくしを刺したのは……」
ガッチャーン
クリスティーナの言葉を遮るように、外から何かが投げ込まれ窓が割れた。
「クリスティーナ!!」
ロナウドから巻き上がった疾風が飛んできたナイフを跳ね返す。次から次へとクリスティーナを狙って飛びこんでくるナイフは、全て風の力によって吹き飛ばされた。
黒い影が窓の外で素早く動く。何があってもいいようにと、レオナルドに頼んでクロウを借りておいて正解だった。クリスティーナを狙った奴が捕まるのも時間の問題だろう。
残念だったな……
何を思っているのだろうか? 母は窓を見つめたまま微動だにしなかった。
頭は痛いが悩んでいても始まらない。とりあえず手をつけられるところから始めるしかない。
「エイデン王がクリスティーナ様の風を抑え込んでくれたら、後は僕がクリスティーナ様の治療をします」
「治療って……お前は医者なのか?」
見るからに頼りなげだが大丈夫なのだろうか?
「いいえ。僕は医者じゃありませんよ。ただリフランスの力を持っています」
リフランス……癒しの力を使うということか?
リフランスは大国会議に参加する国の一つで、王族は癒しの力をもつとされている。癒しの力は薬や治療で治らないような傷や病気まで治せると言われているが、実際にその力を見たことなどない。確か国外の人間には力を使うことも、その様子を見せるのも禁じられていたはずだ。
「そうなんですけど……僕、王族じゃないんで構わないかなって」
「王族じゃない?」
王族じゃないのに癒しの力を持っているというのか?
「あっ。もちろん王族の血は入ってますよ。僕の父親は、現国王の父親である先の国王ですから」
先の国王って確かジジイと同じくらいじゃなかったか?
「何でも村を通りかかった父が母を気に入って、僕が産まれたって聞いてます」
ざっくりとした説明に、はぁ……としか答えようがない。
「リフランスでは正式な婚姻関係の元に産まれた子供のみが王族として認められるんです。なので僕はリフランス王家の人間ってわけじゃないんです。父は女好きだったようで、王族じゃない兄弟姉妹がたくさんいるみたいですよ」
そうか。だから顔に見覚えがなかったのか。
「それで何故王族でもないアランが大国会議に同行してるんだ?」
「あー、それはですね。ジョアンナ様がいらっしゃると聞いて、国王に無理言ってついて来たんです。王族ではありませんが、現在一番強力な癒しの力を持っているのは僕ですから、色々融通はきくんですよ」
へらへらっと笑いながらアランが嬉しそうに目を細めた。
「こんな時じゃないとジョアンナ様に会えないですからね」
その言葉にジョアンナが思いっきり顔をしかめた。
「あなたがいるって知ってたら、私は来なかったわよ」
「またまたぁ」
邪険にされても、アランはニコニコ顔だ。
全く物好きな奴もいたもんだ。こんな煩い女の何がそんなにいいんだか……
「あの、エイデン王……」
声の主に気がついて、「わかっています」と返事をした。ロナウドが俺の横で辛そうな顔をしていたのだ。いけない、いけない。アランの登場で色々なことが頭から抜け落ちるところだった。
気を引き締め直し、横たわるクリスティーナの様子を観察する。
「……で、俺がこいつを連れてクリスティーナ姫の側まで行ければいいってことだな」
「そうよ」
「そうです」
ジョアンナとアランが同時に返事をした。
「もし僕がクリスティーナ様を回復させる事ができたら、ジョアンナ様との結婚を認めてくれますか?」
「ああ。クリスティーナ姫が回復してレイナを助ける事ができたら、結婚でも何でも認めてやるよ」
アランの顔が文字通りキラキラと輝いた。反対にジョアンナがブスっとした顔を見せる。
「ちょっとエイデン、何言ってんのよ!! 私の結婚にあんたの許可とか関係ないじゃない」
まぁそれもそうなのだが……
ジョアンナの結婚には、王である俺よりもジョアンナの父である俺の祖父の許可が必要だろう。でも今はアランにやる気を出させることの方が重要だ。
アランについてくるよう指示し、意を決して部屋へ足を踏み入れる。
ひゅっ。風を感じた次の瞬間、パラリと髪の毛が数本床に落ちた。
あっぶねぇ……鼻がなくなるところだった。
「あっ。もし怪我しても僕が治しますんで、チャチャっと行っちゃいましょうよ」
アランのガッツポーズに何だか気がぬける。
「じゃあお前が切られて瀕死になったら誰が助けるんだ?」
「あ……」
どうやら自分が怪我をする可能性は考えていないらしい。緊張感のないアランに何だか不安が募る。
さて、どうするか……
だいたい家族でも近づけないのに、俺がクリスティーナに近づけるんだろうか? 元婚約者ったって形だけのもんだったんだ。クリスティーナが俺を好きだったかなんて分からないじゃないか。
それでも消えてしまって行方の分からないレイナのためには、どうしてもクリスティーナの意識が戻る事が必要だ。
「……クリスティーナ姫!!」
近づけないなら叫ぶしかない。ベッドに横たわるクリスティーナに大きな声で呼びかける。
「聞こえていますか? フレイムジールのエイデンです」
もちろんクリスティーナから返事はない。試しに一歩近づくと、小さな旋風が巻き起こった。
「クリスティーナ姫……あの時は婚約解消して申し訳ありませんでした。あなたを傷つけた償いを今させて欲しい。あなたを助けるために、私をあなたの側に行かせてくれ!!」
俺の言葉が届いたのだろうか? 旋風が消滅した。その隙にアランの腕を引き、クリスティーナのベッドサイドまで投げ飛ばす。アランは体制を崩しながらも、なんとかクリスティーナに触れられる位置にたどりついた。
アランが瞳を閉じた。合わせた手のひらに微かに光が集まってくる。皆が息をひそめ、アランの力の発動を待った。
「何してるのよ!!」
突然の甲高い声にアランの光が消滅する。見るとシャーナがクリスティーナの部屋に足を踏み入れようとしているところだった。
「きゃっ」
シャーナに反応したのか、クリスティーナの風が再び巻き起こる。荒れ狂うような風に阻まれ、体をよろけさせたシャーナをエメリッヒが抱きとめた。
「くそっ」
これじゃ俺達も微塵切りにされちまう。
「アラン。俺の体が持つ間に、さっさとやってくれ」
男を、というよりレイナ以外を抱きしめるのは嫌だが仕方ない。アランが切り刻まれないよう覆いかぶさる形で盾になる。
激しい風の音に混じり、シャーナとエメリッヒ国王の声が聞こえてくる。
「シャーナ、大丈夫か?」
「わたくしは大丈夫です。それよりあんな怪しい者をクリスティーナに近づけるなんて危険ですわ」
「う、うむ。まぁそうなんだが……」
シャーナの言いなりになりそうな国王を心配したのか、ロナウドが口をはさんだ。
「シャーナ様、私達ではクリスティーナに近づけない以上彼等にお願いするしかないと思いますよ」
「でもクリスティーナを刺したのは、エイデンの婚約者なんですよ」
本当にレイナが刺したのかどうか、クリスティーナが回復すればすぐに分かることだ。アラン頼む。シャーナが邪魔する前に何とかしてくれ。
目を瞑り手を合わせていたアランがクリスティーナの腕を掴んだ。その途端、見ている皆が言葉を失ってしまうほど美しい7色の光が、アランとクリスティーナを包み込んだ。
カッ。
一瞬の激しい光線に思わず瞳を閉じる。
瞳をあけると光は全て消え、アランがはぁはぁと肩で息をしていた。
「お、終わったのか?」
長距離でも走ったかのような息の上がり方をしながらアランは頷いた。あんなに激しかった風もいつの間にか消滅している。
「クリスティーナ!!」
ロナウドが妹の名前を呼びながら、部屋に駆け込んで来た。
「んっ」
目を開いたクリスティーナが、まぶしそうに目を細めている。
「よかった……クリスティーナ……本当に良かった」
「お兄様? 一体どうしたんです?」
涙を流すロナルドをきょとんとした顔で見つめるクリスティーナは、さっきまで瀕死状態だったとは思えないほど血色がいい。
「エイデン様!?」
凄まじく散らかった部屋を訝しむように辺りを見回していたクリスティーナが俺を見て止まった。
「や、やだ。こんな見苦しい姿……」
そう言って布団に潜り込んでしまったクリスティーナに思わず笑みが浮かぶ。布団から出てこないクリスティーナの側に寄り、ロナウドが涙をぬぐう。
ロナルドから刺されたという話を聞いたクリスティーナが布団から顔を出した。
「わたくし刺されたんですか?」
記憶が曖昧なのだろうか? クリスティーナは首を傾げている。
「クリスティーナ、あぁ、心配したんですよ」
いつの間に側に来たのか、シャーナがクリスティーナの手を握った。
「クリスティーナ、あなたはエイデンの婚約者、レイナさんに刺されたんですよ」
なっ!? あくまでもレイナのせいにして逃げ切るつもりなのか!!
っと、クリスティーナがシャーナの手を振り払った。
「違うわ。わたくしを刺したのは……」
ガッチャーン
クリスティーナの言葉を遮るように、外から何かが投げ込まれ窓が割れた。
「クリスティーナ!!」
ロナウドから巻き上がった疾風が飛んできたナイフを跳ね返す。次から次へとクリスティーナを狙って飛びこんでくるナイフは、全て風の力によって吹き飛ばされた。
黒い影が窓の外で素早く動く。何があってもいいようにと、レオナルドに頼んでクロウを借りておいて正解だった。クリスティーナを狙った奴が捕まるのも時間の問題だろう。
残念だったな……
何を思っているのだろうか? 母は窓を見つめたまま微動だにしなかった。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
【完結】私の婚約者はもう死んだので
miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」
結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。
そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。
彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。
これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。
【完結】ドケチ少女が断罪後の悪役令嬢に転生したら、嫌われ令息に溺愛されました。
やまぐちこはる
恋愛
仁科李依紗は所謂守銭奴、金を殖やすのが何よりの楽しみ。
しかし大学一年の夏、工事現場で上から落ちてきた鉄板に当たり落命してしまう。
その事故は本当は男子学生の命を奪うものだったが、李依紗が躓いた弾みで学生を突き飛ばし、身代わりになってしまったのだ。
まだまだ寿命があったはずの李依紗は、その学生に自分の寿命を与えることになり、学生の代わりに異世界へ転生させられることになった。
異世界神は神世に現れた李依紗を見て手違いに驚くが今回は李依紗で手を打つしかない、いまさらどうにもならぬと、貴族令嬢の体を与えて転生させる。
それは李依紗の世界のとある小説を異世界神が面白がって現実化したもの。
李依紗も姉のお下がりで読んだことがある「帝国の気高き薔薇」という恋愛小説。
それは美しい子爵令嬢と王太子のラブストーリー。そして李依紗は、令嬢を虐めたと言われ、嫌われることになるありがちな悪役令嬢リイサ・サレンドラ公爵令嬢の体に入れ替わってしまったのだ。
===============================
最終話まで書き終え、予約投稿済です。年末年始は一日3〜4話、それ以外は毎日朝8時に更新です。
よろしくお願い致します。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる