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【エイデン視点】本編67と68の間の話
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「あれ? エイデン、そんな所で何をしてるんですか?」
俺を呼ぶレオナルドの声が聞こえ、無言のまま手で合図をした。
「またレイナのことを覗いていたんですか? エイデンは本当にレイナの事が好きですねぇ」
俺の様子を笑いながらも、なぜかレオナルドも一緒になってカーテンの隙間から庭で笑うレイナ達の様子をうかがっている。
あぁ、レイナのあの楽しそうな笑顔。なんて可愛いんだ。一日中こうやって覗いていても全く飽きないな。
「わーお。アイリン姫だけでなく、クリスティーナ姫も一緒なんですか? レイナとクリスティーナ姫が仲良くなったなんて、驚きですよね」
それには俺も驚いた。レイナはクリスティーナのせいで何度も嫌な思いをしたはずなのに。なぜだかクリスティーナに心を開いている。
クリスティーナは俺の元婚約者だぞ!! 仲良くするのに複雑な思いとかないのかよと、俺が戸惑うくらい2人は意気投合している。
「まぁ、レイナが楽しいならそれでいい」
レイナの眩しい笑顔は俺を幸せにしてくれる。
「おふたりとも……」
ひどく沈んだ声に振り向くと、カイルが暗い顔で俺達を見ていた。
「カ、カイル……どうしたんですか?」
カイルのダークな迫力に押されたレオナルドが少し怯んだ。
「お二人とも何ですか、その双眼鏡は? カーテンの隙間からこっそり覗くだけでもみっともないのに、双眼鏡まで持ちだすなんて……」
ああ……と首を振りながら、
「あなた方は一国の王と大臣なんですよ。それなのに……」
まぁいつもの如くカイルの説教が始まり、レオナルドと2人顔を見合わせて肩をすくめた。
「仕方ないだろ。今日は遠くて見えにくいんだよ」
今日レイナがお茶をしているのはバラ園だ。ここからだと離れた場所にあるせいで、レイナの表情が肉眼でははっきり分からない。
「レイナ様とは毎晩一緒に寝てらっしゃるんですから、少しの間くらい顔を見なくてもいいじゃないですか」
いやいや、そういうもんじゃない。
「俺以外の人間といる時のレイナの様子も気になるだろ」
カイルのことは無視だ無視。再び双眼鏡を手にレイナを覗く。
「皆楽しそうですねぇ」
レオナルドの言う通りだ。レイナが楽しそうに大きな口をあけて笑っている。
「なぁ……レイナの奴、なんか俺といる時より笑ってないか?」
あまりにも楽しそうなレイナの様子に思わずモヤモヤしてしまう。
「一体何を話してるんでしょうね?」
うーん。さすがに遠すぎてレイナ達の声は聞こえない。
「次は双眼鏡だけじゃなくて、声も聞こえるようにするか……」
「それはいいですね」
どうやればレイナの声が聞こえるか……
「おい、カイル!!」
俺の呼びかけに、カイルは嫌そうな顔を向けた。
「残念ですが、いい案なんてありませんよ」
俺が尋ねるより前にカイルは返事をした。
「そもそも女性陣の話を盗み聞きしようとするのが間違ってます」
「カイルは彼女達が話している内容が気にならないんですか?」
「全く気になりませんね!!」
キッパリと答えて、カイルは大きなため息をついた。
「いいですか? 女性が盛り上がっている時の話題ほど、怖ろしいものはありませんよ」
なんじゃそりゃと首をかしげる俺達にカイルは力説する。
「女性が盛り上がっている時の話題というのは決まって夫や恋人の悪口なんです。盗み聞きなんかしたら後悔するに決まってます」
そういえば、カイルは家で嫁の尻に敷かれてるんだったな。
「では今レイナ達はエイデンとアランの悪口で盛り上がってるってことですか……そう思うと余計に話を聞きたくなりますね」
再び双眼鏡を手に取りながらレオナルドが笑った。
「ジュアンナがアランの悪口を言うのは分かるが、レイナが俺の悪口を言うわけがないだろう」
双眼鏡のレンズの向こうでは、レイナが頰をうっすらと染めて照れ笑いをしている。
「ほらな。見てみろあのレイナの顔を。俺の話をしているとしたら、惚気に決まっている」
自信満々な俺に、「では確かめてみますか?」とレオナルドが笑った。
「確かめてみるって、どうすんだよ?」
「いい方法があります。クロウ!!」
窓を開け、影の名を呼ぶ。
ヒュッと窓から吹き込む風に思わず目を瞑る。目を開けた時には一体どこから現れたのか、レオナルドの影であるクロウが側に控えていた。
「クロウならレイナ達が何を話しているのか、口の動きで分かりますよね?」
「読唇術はあまり得意ではありませんが……」
クロウはそう言いながらも窓際に、立ちレイナ達の方を見る。
「おい、これ使っていいぞ」
手渡そうとした双眼鏡は必要ないと返された。
すげえな、こいつ。こんなに離れた場所からでも、レイナの口の動きが分かるのか。
「……おしり……」
静かにレイナ達を見つめていたクロウが一言だけ呟いた。
おしり? お知り合い……だろうか?
続きを待つ俺に、クロウは突然頭をさげた。
「陛下、申し訳ありません。陛下の希望とは言え、私の口からはとても……失礼いたします」
それだけ言うとクロウは来た時と同様、あっという間にいなくなってしまった。
「お、おい、言えない話って……一体?」
レイナ達は知り合いについて話してるんじゃなかったのか?
「だから言ったじゃないですか。女性が盛り上がっている時の話は毒しかないんですよ」
呆然とする俺の横で、カイルが少しだけ勝ち誇ったような顔をしていた。
俺を呼ぶレオナルドの声が聞こえ、無言のまま手で合図をした。
「またレイナのことを覗いていたんですか? エイデンは本当にレイナの事が好きですねぇ」
俺の様子を笑いながらも、なぜかレオナルドも一緒になってカーテンの隙間から庭で笑うレイナ達の様子をうかがっている。
あぁ、レイナのあの楽しそうな笑顔。なんて可愛いんだ。一日中こうやって覗いていても全く飽きないな。
「わーお。アイリン姫だけでなく、クリスティーナ姫も一緒なんですか? レイナとクリスティーナ姫が仲良くなったなんて、驚きですよね」
それには俺も驚いた。レイナはクリスティーナのせいで何度も嫌な思いをしたはずなのに。なぜだかクリスティーナに心を開いている。
クリスティーナは俺の元婚約者だぞ!! 仲良くするのに複雑な思いとかないのかよと、俺が戸惑うくらい2人は意気投合している。
「まぁ、レイナが楽しいならそれでいい」
レイナの眩しい笑顔は俺を幸せにしてくれる。
「おふたりとも……」
ひどく沈んだ声に振り向くと、カイルが暗い顔で俺達を見ていた。
「カ、カイル……どうしたんですか?」
カイルのダークな迫力に押されたレオナルドが少し怯んだ。
「お二人とも何ですか、その双眼鏡は? カーテンの隙間からこっそり覗くだけでもみっともないのに、双眼鏡まで持ちだすなんて……」
ああ……と首を振りながら、
「あなた方は一国の王と大臣なんですよ。それなのに……」
まぁいつもの如くカイルの説教が始まり、レオナルドと2人顔を見合わせて肩をすくめた。
「仕方ないだろ。今日は遠くて見えにくいんだよ」
今日レイナがお茶をしているのはバラ園だ。ここからだと離れた場所にあるせいで、レイナの表情が肉眼でははっきり分からない。
「レイナ様とは毎晩一緒に寝てらっしゃるんですから、少しの間くらい顔を見なくてもいいじゃないですか」
いやいや、そういうもんじゃない。
「俺以外の人間といる時のレイナの様子も気になるだろ」
カイルのことは無視だ無視。再び双眼鏡を手にレイナを覗く。
「皆楽しそうですねぇ」
レオナルドの言う通りだ。レイナが楽しそうに大きな口をあけて笑っている。
「なぁ……レイナの奴、なんか俺といる時より笑ってないか?」
あまりにも楽しそうなレイナの様子に思わずモヤモヤしてしまう。
「一体何を話してるんでしょうね?」
うーん。さすがに遠すぎてレイナ達の声は聞こえない。
「次は双眼鏡だけじゃなくて、声も聞こえるようにするか……」
「それはいいですね」
どうやればレイナの声が聞こえるか……
「おい、カイル!!」
俺の呼びかけに、カイルは嫌そうな顔を向けた。
「残念ですが、いい案なんてありませんよ」
俺が尋ねるより前にカイルは返事をした。
「そもそも女性陣の話を盗み聞きしようとするのが間違ってます」
「カイルは彼女達が話している内容が気にならないんですか?」
「全く気になりませんね!!」
キッパリと答えて、カイルは大きなため息をついた。
「いいですか? 女性が盛り上がっている時の話題ほど、怖ろしいものはありませんよ」
なんじゃそりゃと首をかしげる俺達にカイルは力説する。
「女性が盛り上がっている時の話題というのは決まって夫や恋人の悪口なんです。盗み聞きなんかしたら後悔するに決まってます」
そういえば、カイルは家で嫁の尻に敷かれてるんだったな。
「では今レイナ達はエイデンとアランの悪口で盛り上がってるってことですか……そう思うと余計に話を聞きたくなりますね」
再び双眼鏡を手に取りながらレオナルドが笑った。
「ジュアンナがアランの悪口を言うのは分かるが、レイナが俺の悪口を言うわけがないだろう」
双眼鏡のレンズの向こうでは、レイナが頰をうっすらと染めて照れ笑いをしている。
「ほらな。見てみろあのレイナの顔を。俺の話をしているとしたら、惚気に決まっている」
自信満々な俺に、「では確かめてみますか?」とレオナルドが笑った。
「確かめてみるって、どうすんだよ?」
「いい方法があります。クロウ!!」
窓を開け、影の名を呼ぶ。
ヒュッと窓から吹き込む風に思わず目を瞑る。目を開けた時には一体どこから現れたのか、レオナルドの影であるクロウが側に控えていた。
「クロウならレイナ達が何を話しているのか、口の動きで分かりますよね?」
「読唇術はあまり得意ではありませんが……」
クロウはそう言いながらも窓際に、立ちレイナ達の方を見る。
「おい、これ使っていいぞ」
手渡そうとした双眼鏡は必要ないと返された。
すげえな、こいつ。こんなに離れた場所からでも、レイナの口の動きが分かるのか。
「……おしり……」
静かにレイナ達を見つめていたクロウが一言だけ呟いた。
おしり? お知り合い……だろうか?
続きを待つ俺に、クロウは突然頭をさげた。
「陛下、申し訳ありません。陛下の希望とは言え、私の口からはとても……失礼いたします」
それだけ言うとクロウは来た時と同様、あっという間にいなくなってしまった。
「お、おい、言えない話って……一体?」
レイナ達は知り合いについて話してるんじゃなかったのか?
「だから言ったじゃないですか。女性が盛り上がっている時の話は毒しかないんですよ」
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