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52.とろける
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困ったなぁ。これじゃあ、全く口を挟めないじゃない。
目の前で繰り広げられるエイデンとカイルのバトルを見つめながら頰に手を当てた。
「カイル!! お前は何年俺の側についてるんだ。これくらい何とかうまく処理しろよ」
「そう言われましても……先に結婚の儀だけ済ますというのはいかがかと。ここはきちんと手順を踏んでいただかないと困ります」
大声で怒鳴るエイデンに対して、カイルはいつもの通り冷静だ。
「きちんと手順を踏むと半年以上かかるじゃないか。そんなに待てるか!!」
二人は今、エイデンと私の結婚式にむけてのスケジュールで揉めている。国王であるエイデンの結婚となると色々決まりがあるそうで、最短でも準備に半年はかかるらしい。エイデンはそれが気に入らず、先に結婚だけしてしまいたいと言っているのだ。
「それでも待っていただかなくてはいけません」
叫ぶエイデンに、カイルはきっぱりと言い切った。
「ただでさえ新年の儀に婚約者であるレイナ様がいらっしゃらず、貴族の方々から不満の声が出ているのです。この状態で勝手に結婚の儀まで済ませてしまうと、貴族の方々も黙ってはいないでしょう」
「あの……私のせいで何か問題が起こってるの?」
私の名前が出てきた以上、二人のやりとりを静観するわけにもいかず口を開いた。
「……新年の儀は王族の義務ですので、陛下の婚約者であるレイナ様も同席して然るべきと考える貴族も多数いるんですよ」
新年の儀とは、年の初めに人々が国王を始めとする王族に謁見することだ。初日は貴族、2日目は一般の人々がエイデンに挨拶をするため城に集まると聞いている。
「もうエイデンったら。言ってくれれば喜んで同席したのに」
「今年はレオナルドとジョアンナもいたからな。お前が来る必要はなかった」
エイデンのそっけない答えが少しだけ寂しい。
「陛下はレイナ様を皆に見せたくないんですよ」
カイルの瞳がメガネの奥でキラリと輝いた。
「そうですよね、陛下?」
カイルと私の視線がエイデンに集まった。うっと言葉に詰まりながら、エイデンがカイルに向かって叫ぶ。
「あー。もういいからさっさと出て行け」
「おやすみなさいませ」
にっこりと笑いながら丁寧にお辞儀をしたカイルが部屋を出て行く。
「くそっ。カイルのやつ」
ソファーにどさっと座り込んだエイデンの口から、はぁっと小さなため息が漏れた。年明けから新年の儀で多くの人の相手をしているのだから疲れていても当然だ。
「疲れてるでしょ? 今お茶いれるね」
そう言って動き出そうとする私をエイデンが呼び止めた。
「お茶より……お前が欲しい」
あっと思った時にはもうエイデンの上に倒れこんでいた。はだけてしまったスカートの裾を慌ててなおす。
って、きゃー!! 私ってばエイデンに膝枕されてるじゃない。
「ご、ごめんなさい」
慌てて体を起こすと、今度はエイデンに後ろから抱きしめられた。
「どうして逃げるんだ? 癒してくれるんじゃないのか?」
もう、やだ……
エイデンが私をからかってるって分かってるけど、悪戯っ子みたいに笑うエイデンの顔がかっこよすぎて頭がクラクラしちゃう。
燃えるように熱くなった顔を背ける私を見て軽く笑ったエイデンが、後ろから私の髪の毛に優しくキスをした。ソファーに体を投げ出したエイデンを背もたれにする形で座らされたまま、エイデンの両腕に閉じ込められる。
「レイナは温かいな……」
エイデンが私の頰に手を当て、首の向きを変えさせた。エイデンの唇が私の唇に重なり、ちゅっという軽快な音を立てる。
エイデンも温かいよ……
もたれかかったエイデンの広い胸から、力強い心臓の音を感じる。
「エイデンごめんね。来年の新年の儀までには、人前に出しても恥ずかしくないと思ってもらえるよう、私頑張るから」
「あー……さっきのカイルの話は気にしなくていいぞ。あいつは俺を困らせたくて、ああ言っただけだからな」
どういうことかと尋ねる私に、エイデンは言いにくそうにしながらも渋々言葉を続けた。
「新年の儀はあれだ……挨拶に来た者と握手をだな……」
「エイデン?」
エイデンがこんな風にボソボソと話すのは珍しい。しかも何が言いたいのかよく分からない話だし。
「あー、もう!! だから俺が嫌だったんだ。お前が誰彼構わず握手するのも、綺麗に着飾ったお前を皆に見せるのもな」
振り返るとエイデンの顔がほんのりと赤くなっているように見えたのは気のせいかしら?
「だーっ、向こうむいてろ」
エイデンは掌で顔を隠すようにして横を向いた。そんなエイデンが可愛らしくて、思わずクスっと笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
「だって何だか嬉しくって……」
エイデンが私を恥ずかしいと思ってるんじゃなくてよかったぁ。それに私の事を独り占めしたいと思ってくれてるなんて嬉しい。
エイデンの大きな手が指輪に触れるようにしながら私の左手を優しく包み込んだ。
「ねぇ、エイデン?」
「なんだ?」
エイデンの視線が振り返った私の視線とぶつかった。
「私のこと好き?」
「ばっ!?」
私の言葉が予想外だったのか、エイデンは狼狽えている。
「い、いきなり何言ってんだ」
「だって……聞きたいんだもん」
エイデンが記憶をなくしてから私に好きだって言ってくれたのは、指輪をプレゼントしてくれたあの夜だけだ。言葉はなくてもエイデンの愛情はたっぷり感じてるし、不安になることもないんだけど、やっぱりたまには言葉だって欲しい。
エイデンにもたれていた体を起こし、エイデンの隣に座りなおしてエイデンの方へ体をむけた。
「ねぇエイデン教えて? 私の事好き?」
うーん。狼狽えているエイデンを見るのもなかなか楽しいじゃない。なぁんて余裕ぶっていると、急に引き寄せられ、エイデンの広い胸の上に倒れこんでしまった。
ソファーの上で、まるで私がエイデンを押し倒したかのような体勢だ。慌てて逃げようとするけど、エイデンの腕に捕まって動けない。
一気に形成逆転してしまい、今度は私が狼狽える番になってしまった。エイデンの身体の上でジタバタともがく私を見ながらエイデンが声を出して笑った。
「もう……エイデンの意地悪……」
エイデンの上に乗っている恥ずかしさで涙目になる私を見て、もう一度エイデンが声をあげて笑った。
うー、ムカつく!!
反撃とばかりにエイデンの脇腹をくすぐると、エイデンが「うおっ」っと声を出し、焦ったように身をよじった。
あはっ。なんか新鮮な反応。
もう一度くすぐると、「やめろよ」っと言いながらエイデンが体をひっくり返した。その拍子に、今度は私がエイデンに押し倒されてしまった。
こ、これは……
身体を密着させたままエイデンに見おろされていると、体中の血が沸騰してるんじゃないかと思うほどに熱くなる。心臓は破裂しちゃいそうな程ドキドキしてるのに、もっと触れて欲しくてたまらない。
エイデン……キスして……
口に出すのは恥ずかしいので、少し唇を突き出すようにして目を閉じた。エイデンは何も言わず唇を重ねた。密着した身体から感じるエイデンの重みが心地よい。
「まずいな」
唇を離したエイデンが体を起こし、私を横抱きにかかえあげる。
「エ、エイデン?」
エイデンは私をベッドの上に優しく横たえ、まっすぐに私を見つめた。
「結婚の儀まで待つつもりだったが、もう我慢できそうもない」
エイデンが私の手を握り指を絡ませた。
「嫌か?」
エイデンの意図する事は分かってる。嫌なわけないじゃない。絡ませた指に力をいれ、エイデンの手を握り返す。
ほっとしたような嬉しそうな顔でエイデンが微笑み、そっと私の唇にキスをした。
「レイナ、愛してるよ」
エイデン、私も愛してるわ。
その夜、私は体中にエイデンのキスを受けながら、今までにないとろけるほど甘い夜を過ごしたのだった。
目の前で繰り広げられるエイデンとカイルのバトルを見つめながら頰に手を当てた。
「カイル!! お前は何年俺の側についてるんだ。これくらい何とかうまく処理しろよ」
「そう言われましても……先に結婚の儀だけ済ますというのはいかがかと。ここはきちんと手順を踏んでいただかないと困ります」
大声で怒鳴るエイデンに対して、カイルはいつもの通り冷静だ。
「きちんと手順を踏むと半年以上かかるじゃないか。そんなに待てるか!!」
二人は今、エイデンと私の結婚式にむけてのスケジュールで揉めている。国王であるエイデンの結婚となると色々決まりがあるそうで、最短でも準備に半年はかかるらしい。エイデンはそれが気に入らず、先に結婚だけしてしまいたいと言っているのだ。
「それでも待っていただかなくてはいけません」
叫ぶエイデンに、カイルはきっぱりと言い切った。
「ただでさえ新年の儀に婚約者であるレイナ様がいらっしゃらず、貴族の方々から不満の声が出ているのです。この状態で勝手に結婚の儀まで済ませてしまうと、貴族の方々も黙ってはいないでしょう」
「あの……私のせいで何か問題が起こってるの?」
私の名前が出てきた以上、二人のやりとりを静観するわけにもいかず口を開いた。
「……新年の儀は王族の義務ですので、陛下の婚約者であるレイナ様も同席して然るべきと考える貴族も多数いるんですよ」
新年の儀とは、年の初めに人々が国王を始めとする王族に謁見することだ。初日は貴族、2日目は一般の人々がエイデンに挨拶をするため城に集まると聞いている。
「もうエイデンったら。言ってくれれば喜んで同席したのに」
「今年はレオナルドとジョアンナもいたからな。お前が来る必要はなかった」
エイデンのそっけない答えが少しだけ寂しい。
「陛下はレイナ様を皆に見せたくないんですよ」
カイルの瞳がメガネの奥でキラリと輝いた。
「そうですよね、陛下?」
カイルと私の視線がエイデンに集まった。うっと言葉に詰まりながら、エイデンがカイルに向かって叫ぶ。
「あー。もういいからさっさと出て行け」
「おやすみなさいませ」
にっこりと笑いながら丁寧にお辞儀をしたカイルが部屋を出て行く。
「くそっ。カイルのやつ」
ソファーにどさっと座り込んだエイデンの口から、はぁっと小さなため息が漏れた。年明けから新年の儀で多くの人の相手をしているのだから疲れていても当然だ。
「疲れてるでしょ? 今お茶いれるね」
そう言って動き出そうとする私をエイデンが呼び止めた。
「お茶より……お前が欲しい」
あっと思った時にはもうエイデンの上に倒れこんでいた。はだけてしまったスカートの裾を慌ててなおす。
って、きゃー!! 私ってばエイデンに膝枕されてるじゃない。
「ご、ごめんなさい」
慌てて体を起こすと、今度はエイデンに後ろから抱きしめられた。
「どうして逃げるんだ? 癒してくれるんじゃないのか?」
もう、やだ……
エイデンが私をからかってるって分かってるけど、悪戯っ子みたいに笑うエイデンの顔がかっこよすぎて頭がクラクラしちゃう。
燃えるように熱くなった顔を背ける私を見て軽く笑ったエイデンが、後ろから私の髪の毛に優しくキスをした。ソファーに体を投げ出したエイデンを背もたれにする形で座らされたまま、エイデンの両腕に閉じ込められる。
「レイナは温かいな……」
エイデンが私の頰に手を当て、首の向きを変えさせた。エイデンの唇が私の唇に重なり、ちゅっという軽快な音を立てる。
エイデンも温かいよ……
もたれかかったエイデンの広い胸から、力強い心臓の音を感じる。
「エイデンごめんね。来年の新年の儀までには、人前に出しても恥ずかしくないと思ってもらえるよう、私頑張るから」
「あー……さっきのカイルの話は気にしなくていいぞ。あいつは俺を困らせたくて、ああ言っただけだからな」
どういうことかと尋ねる私に、エイデンは言いにくそうにしながらも渋々言葉を続けた。
「新年の儀はあれだ……挨拶に来た者と握手をだな……」
「エイデン?」
エイデンがこんな風にボソボソと話すのは珍しい。しかも何が言いたいのかよく分からない話だし。
「あー、もう!! だから俺が嫌だったんだ。お前が誰彼構わず握手するのも、綺麗に着飾ったお前を皆に見せるのもな」
振り返るとエイデンの顔がほんのりと赤くなっているように見えたのは気のせいかしら?
「だーっ、向こうむいてろ」
エイデンは掌で顔を隠すようにして横を向いた。そんなエイデンが可愛らしくて、思わずクスっと笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
「だって何だか嬉しくって……」
エイデンが私を恥ずかしいと思ってるんじゃなくてよかったぁ。それに私の事を独り占めしたいと思ってくれてるなんて嬉しい。
エイデンの大きな手が指輪に触れるようにしながら私の左手を優しく包み込んだ。
「ねぇ、エイデン?」
「なんだ?」
エイデンの視線が振り返った私の視線とぶつかった。
「私のこと好き?」
「ばっ!?」
私の言葉が予想外だったのか、エイデンは狼狽えている。
「い、いきなり何言ってんだ」
「だって……聞きたいんだもん」
エイデンが記憶をなくしてから私に好きだって言ってくれたのは、指輪をプレゼントしてくれたあの夜だけだ。言葉はなくてもエイデンの愛情はたっぷり感じてるし、不安になることもないんだけど、やっぱりたまには言葉だって欲しい。
エイデンにもたれていた体を起こし、エイデンの隣に座りなおしてエイデンの方へ体をむけた。
「ねぇエイデン教えて? 私の事好き?」
うーん。狼狽えているエイデンを見るのもなかなか楽しいじゃない。なぁんて余裕ぶっていると、急に引き寄せられ、エイデンの広い胸の上に倒れこんでしまった。
ソファーの上で、まるで私がエイデンを押し倒したかのような体勢だ。慌てて逃げようとするけど、エイデンの腕に捕まって動けない。
一気に形成逆転してしまい、今度は私が狼狽える番になってしまった。エイデンの身体の上でジタバタともがく私を見ながらエイデンが声を出して笑った。
「もう……エイデンの意地悪……」
エイデンの上に乗っている恥ずかしさで涙目になる私を見て、もう一度エイデンが声をあげて笑った。
うー、ムカつく!!
反撃とばかりにエイデンの脇腹をくすぐると、エイデンが「うおっ」っと声を出し、焦ったように身をよじった。
あはっ。なんか新鮮な反応。
もう一度くすぐると、「やめろよ」っと言いながらエイデンが体をひっくり返した。その拍子に、今度は私がエイデンに押し倒されてしまった。
こ、これは……
身体を密着させたままエイデンに見おろされていると、体中の血が沸騰してるんじゃないかと思うほどに熱くなる。心臓は破裂しちゃいそうな程ドキドキしてるのに、もっと触れて欲しくてたまらない。
エイデン……キスして……
口に出すのは恥ずかしいので、少し唇を突き出すようにして目を閉じた。エイデンは何も言わず唇を重ねた。密着した身体から感じるエイデンの重みが心地よい。
「まずいな」
唇を離したエイデンが体を起こし、私を横抱きにかかえあげる。
「エ、エイデン?」
エイデンは私をベッドの上に優しく横たえ、まっすぐに私を見つめた。
「結婚の儀まで待つつもりだったが、もう我慢できそうもない」
エイデンが私の手を握り指を絡ませた。
「嫌か?」
エイデンの意図する事は分かってる。嫌なわけないじゃない。絡ませた指に力をいれ、エイデンの手を握り返す。
ほっとしたような嬉しそうな顔でエイデンが微笑み、そっと私の唇にキスをした。
「レイナ、愛してるよ」
エイデン、私も愛してるわ。
その夜、私は体中にエイデンのキスを受けながら、今までにないとろけるほど甘い夜を過ごしたのだった。
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