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13.生誕祭
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「素晴らしい!! レイナ、とっても綺麗ですよ」
準備が整った私を見たレオナルドが、拍手をしながら褒めてくれるもんだから照れてしまう。
「ありがとうございます。あの、お待たせして申し訳ありませんでした」
さっさと準備しなきゃと思ってたのに、時間がかかってしまったのには訳がある。お風呂に入った途端にほっとしたのか、ついウトウトしてしまったのだ。
「気にしなくていいですよ。おかげで私も少し休む事ができましたから」
そう言って私の気を楽にしてくれるんだから、レオナルドってとても優しいわね。
生誕祭のパーティー会場はとても華やかだった。華やかすぎて足を踏み入れるのに一瞬躊躇したほどだ。もしレオナルドにエスコートしてもらってなかったら、私は気後れして小さくなってたかもしれないわ。
「さぁて、私の可愛い弟はどこでしょうね」
お茶目に笑うレオナルドと一緒だと、自然と笑う事ができた。
エイデンの姿はすぐに見つけることができた。なんせ格好いいもんだから、すぐ目についてしまう。私がエイデンの方へ足を踏み出した時、エイデンがこちらを向いた。
目が合った瞬間、エイデンは信じられないとでもいうような顔をした。人をかき分けこちらへ向かってくるエイデンの必死な姿を見て視界が滲む。 駆け寄ったエイデンが力いっぱいに私を抱きしめた。
「レイナ……無事でよかった……」
エイデンの声は小さく震えている。
「心配かけてごめんなさい」
私のできる限りの力でエイデンを抱きしめかえしながら、その大きな胸に顔を埋めた。
あたたかい……
エイデンの胸の温かさにほっとする。
「エイデン、私のお土産は気に入ってもらえたみたいですね」
そう言えばレオナルドと一緒だったんだ。レオナルドだけじゃない。ここにはたくさん人がいたんだった!!
こんな人前で私ったらなんて事を。エイデンから離れ少し距離をとろうとするが、エイデンはがっちりと私を抱きしめたまま逃してくれない。
「レオナルドがレイナを見つけてくれたのか? 感謝するぞ」
「私が見つけたわけじゃないですよ。レイナが私達を見つけたんですから」
エイデンはより詳しい説明を求めたが、レオナルドは給仕係を呼び止め、シャンパンを受け取った。
「詳しい話はまた後にしましょう。久しぶりの再会なんですし、まずは乾杯しませんか?」
レオナルドの提案に、エイデンは嬉しそうに笑った。
はぁ……こんなに綺麗な顔がこの世に二つもあるなんて、なんて贅沢なの。
二人と乾杯しながら大切な事を思い出した。私はまだ大切なことを伝えていない。
「エイデン、レオナルド様、お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
レオナルドが嬉しそうに私の頭をぽんっと叩くと、エイデンの眉がピクっと動いた。
「おいレオナルド。気安くレイナに触りすぎじゃないか?」
ちょ、ちょっとエイデン? その言い方は大袈裟じゃない?
焦る私の頭を、なぜだかレオナルドが再びポンと叩いた。
「だからレイナに触るなって言ってるだろ」
「エイデンったら、そんな言い方しなくても……」
「なんだよレイナ!! レオナルドに触られて嬉しいのか?」
だ、誰もそんな事言ってないんだけど……
「せっかくの生誕祭なんですから、そんなにカリカリしたらつまらないですよ。さぁレイナ、エイデンの怒りが鎮まるまで二人で踊ってきましょうか」
そんな事言ったら余計エイデンが怒っちゃうんじゃ……
私の想像通り、エイデンの怒りはレベルアップしたようだ。レオナルドに対して感情を爆発させている。怒られているレオナルドはというと、何故だかとっても楽しそうだ。
どうしよう。なんだか面倒な事になってきちゃった。
思わずため息をついた時、たくさんいる人の中に見知った顔を発見した。その人物が私に向かって手をあげ合図をしたので、私も笑顔で手を振り返す。
「おいレイナ。誰に手を振ってんだ?」
「ウィリアム様よ。ほらあそこ」
知り合いと楽しそうに話しているウィリアムのいる方向に目を向けると、エイデンはあからさまに嫌そうな顔をした。
「なんだって、あんな奴に手を振る必要があるんだ?」
「知り合いなんだし、手を振るくらい普通の事じゃない?」
あぁ。もっと面倒くさい事になっちゃったな。今度はエイデンのイライラの対象が私になっちゃったみたいだ。
「へぇ。レイナとウィリアムは知り合いなんですね」
私とエイデンの会話に入ってきたレオナルドがうまくエイデンの気をそらせてくれるといいんだけど。
私がガラス作りでウィリアムにお世話になったという話をすると、レオナルドはひどく興味を示した。
「いいですね。誕生日プレゼントに手作りグラスですか」
「あんまり出来はよくないんですけど……」
「手作りなんですから、それも味じゃないですか。プレゼントに手作り品をあげるなんて、とても素敵だと思いますよ」
本当にレオナルドは褒めるのが上手いんだから。とっても気分がよくなっちゃ……うわっ。エイデンってば、めちゃくちゃ悪人顔になってる!!
「行くぞ」
般若のような顔をしたエイデンが、私の手を掴んで歩き出す。
「ちょ、ちょっとエイデンってば。レオナルド様に会うのは久しぶりだったんじゃないの?」
兄弟の再会をもう少し楽しめばいいのに。エイデンはレオナルドを振り返ることなく、さっさと生誕祭の会場を出てしまった。
「ねぇ、エイデン。エイデンってば……あっ」
無言のまま歩き続けるエイデンに手を掴まれ、早足で歩いたからだろうか。何もない廊下でヒールが滑り、足首がぐにゃっと曲がってしまった。
いったぁぁぁぁい!!
「レイナ、どうした?」
異変を感じとったエイデンが足を止め、心配そうな顔で私の顔を覗き込むが痛さで声なんか出ない。
「足か? 挫いたのか?」
痛む方の足をかばいながら、片足立ちになった私をエイデンが横抱きに抱えた。
「すまない……俺のせいだな……」
まぁ確かに半分はエイデンのせいかも。引っ張られなきゃ足を挫かなかったかもしれないし。でもこの足の痛みの半分は、歩きすぎによるものなのよね。
なんたって、私は今日朝早くから半日以上森の中を歩き続けたんだから。疲れ果てた状態でヒールを履いたせいで、パーティー開始前から少し足は痛んでいたのだ。
「エイデン、ちゃんと歩けるからもう下ろしていいよ」
「痛いんだろ。無理すんな」
「でも、主役のエイデンが途中でぬけたらダメなんじゃ……」
「うるさい。黙って俺に抱かれてろ」
私を見つめるエイデンの瞳は、口調とは裏腹にとても優しい。でもでも、お姫様抱っこは恥ずかしいんだもん。それにパーティーはまだ始まったばかりなんだから、主役のエイデンがいなきゃマズイんじゃないのかしら?
「ねぇエイデン、やっぱり……」
「なんだ? そのうるさい口を今すぐ塞いでほしいのか?」
エイデンの顔が近づいてきて、思わず身体を固くする。エイデンがふっと軽く笑った。
「心配しなくても生誕祭は俺がいなくても大丈夫だ。カイルとレオナルドがうまくやるさ」
「あ、そ、そうなんだ……」
なんだぁ。キスされるかと思っちゃった。ほっとしたような残念なような……
変なの。
たった一日離れていただけなのに、エイデンに会うのはずいぶん久しぶりみたいに感じちゃうなんて。
エイデンは私をお姫様抱っこしたまま部屋に入り、肩でドアを閉めた。
「エイデンありが……んんっ」
お礼の言葉はエイデンの唇によって遮られた。その熱い口づけにクラクラと目眩がする。
「エイデン……」
エイデンは私をソファーの上におろすと、跪き、私のヒールを優しく脱がした。
エイデンが私の痛む足を癒すかのように優しく撫でた。無意識に身体がピクっと震える。足の先から身体が熱くなっていく。
恥ずかしい。恥ずかしくって、エイデンの顔を見ることができない。エイデンは私の横にそっと腰をかけた。
「レイナ……」
エイデンの手が優しく私の頬に触れる。
「レイナ、俺を見ろ」
いつもより優しい声でエイデンが私を誘う。躊躇いながらも、顔をあげエイデンを見つめた。
エイデンのチョコレート色の瞳がじっと私を見つめている。その澄んだ瞳から目がはなせない。吸い込まれてしまいそう……
ゆっくりとエイデンの顔が近いてきて、私は静かに目を閉じた。
準備が整った私を見たレオナルドが、拍手をしながら褒めてくれるもんだから照れてしまう。
「ありがとうございます。あの、お待たせして申し訳ありませんでした」
さっさと準備しなきゃと思ってたのに、時間がかかってしまったのには訳がある。お風呂に入った途端にほっとしたのか、ついウトウトしてしまったのだ。
「気にしなくていいですよ。おかげで私も少し休む事ができましたから」
そう言って私の気を楽にしてくれるんだから、レオナルドってとても優しいわね。
生誕祭のパーティー会場はとても華やかだった。華やかすぎて足を踏み入れるのに一瞬躊躇したほどだ。もしレオナルドにエスコートしてもらってなかったら、私は気後れして小さくなってたかもしれないわ。
「さぁて、私の可愛い弟はどこでしょうね」
お茶目に笑うレオナルドと一緒だと、自然と笑う事ができた。
エイデンの姿はすぐに見つけることができた。なんせ格好いいもんだから、すぐ目についてしまう。私がエイデンの方へ足を踏み出した時、エイデンがこちらを向いた。
目が合った瞬間、エイデンは信じられないとでもいうような顔をした。人をかき分けこちらへ向かってくるエイデンの必死な姿を見て視界が滲む。 駆け寄ったエイデンが力いっぱいに私を抱きしめた。
「レイナ……無事でよかった……」
エイデンの声は小さく震えている。
「心配かけてごめんなさい」
私のできる限りの力でエイデンを抱きしめかえしながら、その大きな胸に顔を埋めた。
あたたかい……
エイデンの胸の温かさにほっとする。
「エイデン、私のお土産は気に入ってもらえたみたいですね」
そう言えばレオナルドと一緒だったんだ。レオナルドだけじゃない。ここにはたくさん人がいたんだった!!
こんな人前で私ったらなんて事を。エイデンから離れ少し距離をとろうとするが、エイデンはがっちりと私を抱きしめたまま逃してくれない。
「レオナルドがレイナを見つけてくれたのか? 感謝するぞ」
「私が見つけたわけじゃないですよ。レイナが私達を見つけたんですから」
エイデンはより詳しい説明を求めたが、レオナルドは給仕係を呼び止め、シャンパンを受け取った。
「詳しい話はまた後にしましょう。久しぶりの再会なんですし、まずは乾杯しませんか?」
レオナルドの提案に、エイデンは嬉しそうに笑った。
はぁ……こんなに綺麗な顔がこの世に二つもあるなんて、なんて贅沢なの。
二人と乾杯しながら大切な事を思い出した。私はまだ大切なことを伝えていない。
「エイデン、レオナルド様、お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
レオナルドが嬉しそうに私の頭をぽんっと叩くと、エイデンの眉がピクっと動いた。
「おいレオナルド。気安くレイナに触りすぎじゃないか?」
ちょ、ちょっとエイデン? その言い方は大袈裟じゃない?
焦る私の頭を、なぜだかレオナルドが再びポンと叩いた。
「だからレイナに触るなって言ってるだろ」
「エイデンったら、そんな言い方しなくても……」
「なんだよレイナ!! レオナルドに触られて嬉しいのか?」
だ、誰もそんな事言ってないんだけど……
「せっかくの生誕祭なんですから、そんなにカリカリしたらつまらないですよ。さぁレイナ、エイデンの怒りが鎮まるまで二人で踊ってきましょうか」
そんな事言ったら余計エイデンが怒っちゃうんじゃ……
私の想像通り、エイデンの怒りはレベルアップしたようだ。レオナルドに対して感情を爆発させている。怒られているレオナルドはというと、何故だかとっても楽しそうだ。
どうしよう。なんだか面倒な事になってきちゃった。
思わずため息をついた時、たくさんいる人の中に見知った顔を発見した。その人物が私に向かって手をあげ合図をしたので、私も笑顔で手を振り返す。
「おいレイナ。誰に手を振ってんだ?」
「ウィリアム様よ。ほらあそこ」
知り合いと楽しそうに話しているウィリアムのいる方向に目を向けると、エイデンはあからさまに嫌そうな顔をした。
「なんだって、あんな奴に手を振る必要があるんだ?」
「知り合いなんだし、手を振るくらい普通の事じゃない?」
あぁ。もっと面倒くさい事になっちゃったな。今度はエイデンのイライラの対象が私になっちゃったみたいだ。
「へぇ。レイナとウィリアムは知り合いなんですね」
私とエイデンの会話に入ってきたレオナルドがうまくエイデンの気をそらせてくれるといいんだけど。
私がガラス作りでウィリアムにお世話になったという話をすると、レオナルドはひどく興味を示した。
「いいですね。誕生日プレゼントに手作りグラスですか」
「あんまり出来はよくないんですけど……」
「手作りなんですから、それも味じゃないですか。プレゼントに手作り品をあげるなんて、とても素敵だと思いますよ」
本当にレオナルドは褒めるのが上手いんだから。とっても気分がよくなっちゃ……うわっ。エイデンってば、めちゃくちゃ悪人顔になってる!!
「行くぞ」
般若のような顔をしたエイデンが、私の手を掴んで歩き出す。
「ちょ、ちょっとエイデンってば。レオナルド様に会うのは久しぶりだったんじゃないの?」
兄弟の再会をもう少し楽しめばいいのに。エイデンはレオナルドを振り返ることなく、さっさと生誕祭の会場を出てしまった。
「ねぇ、エイデン。エイデンってば……あっ」
無言のまま歩き続けるエイデンに手を掴まれ、早足で歩いたからだろうか。何もない廊下でヒールが滑り、足首がぐにゃっと曲がってしまった。
いったぁぁぁぁい!!
「レイナ、どうした?」
異変を感じとったエイデンが足を止め、心配そうな顔で私の顔を覗き込むが痛さで声なんか出ない。
「足か? 挫いたのか?」
痛む方の足をかばいながら、片足立ちになった私をエイデンが横抱きに抱えた。
「すまない……俺のせいだな……」
まぁ確かに半分はエイデンのせいかも。引っ張られなきゃ足を挫かなかったかもしれないし。でもこの足の痛みの半分は、歩きすぎによるものなのよね。
なんたって、私は今日朝早くから半日以上森の中を歩き続けたんだから。疲れ果てた状態でヒールを履いたせいで、パーティー開始前から少し足は痛んでいたのだ。
「エイデン、ちゃんと歩けるからもう下ろしていいよ」
「痛いんだろ。無理すんな」
「でも、主役のエイデンが途中でぬけたらダメなんじゃ……」
「うるさい。黙って俺に抱かれてろ」
私を見つめるエイデンの瞳は、口調とは裏腹にとても優しい。でもでも、お姫様抱っこは恥ずかしいんだもん。それにパーティーはまだ始まったばかりなんだから、主役のエイデンがいなきゃマズイんじゃないのかしら?
「ねぇエイデン、やっぱり……」
「なんだ? そのうるさい口を今すぐ塞いでほしいのか?」
エイデンの顔が近づいてきて、思わず身体を固くする。エイデンがふっと軽く笑った。
「心配しなくても生誕祭は俺がいなくても大丈夫だ。カイルとレオナルドがうまくやるさ」
「あ、そ、そうなんだ……」
なんだぁ。キスされるかと思っちゃった。ほっとしたような残念なような……
変なの。
たった一日離れていただけなのに、エイデンに会うのはずいぶん久しぶりみたいに感じちゃうなんて。
エイデンは私をお姫様抱っこしたまま部屋に入り、肩でドアを閉めた。
「エイデンありが……んんっ」
お礼の言葉はエイデンの唇によって遮られた。その熱い口づけにクラクラと目眩がする。
「エイデン……」
エイデンは私をソファーの上におろすと、跪き、私のヒールを優しく脱がした。
エイデンが私の痛む足を癒すかのように優しく撫でた。無意識に身体がピクっと震える。足の先から身体が熱くなっていく。
恥ずかしい。恥ずかしくって、エイデンの顔を見ることができない。エイデンは私の横にそっと腰をかけた。
「レイナ……」
エイデンの手が優しく私の頬に触れる。
「レイナ、俺を見ろ」
いつもより優しい声でエイデンが私を誘う。躊躇いながらも、顔をあげエイデンを見つめた。
エイデンのチョコレート色の瞳がじっと私を見つめている。その澄んだ瞳から目がはなせない。吸い込まれてしまいそう……
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