11 / 86
11.誘拐
しおりを挟む
追手の気配を感じながら森を走る。ここで捕まったら最後、きっともう逃げるチャンスはないだろう。
「たすけて!!」
私の声が届いたのか、焚き火を囲んでいる二人の人物がこちらを向くのが見えた。
やった、やっと森を抜けた。そう思った所で、追ってきた男によって体を引っ張られる。バランスを崩し、男と共に地面に倒れこんだ。
「手間かけさせやがって」
私の手にくくりつけられている縄を引っ張りながら、男が忌々しげに吐き捨てる。地面に体を押し付けられて痛くてたまらない。
「お願い……たすけて……」
押さえつけられているせいで見えないけど、きっとすぐ近くにいるはずの誰かに助けを求める。
「申し訳ありませんね。お騒がせして」
私を押さえつけている男が、えらく愛想のよい声を出した。
「今助けてと聞こえた気がしますが?」
あれ? この声って……
聞き覚えのある声に胸がトクンとする。声の主を見たいのに、がっちりと押さえられていて動くことができない。
「ちょいとイカれた女なもんで。気になさらんでくださいな」
「イカれてなんかないわ。私は攫われ……」
しぼり出した声は、言い終わる前に男達によって消されてしまった。口を塞がれて息が苦しい。涙が滲んでくる。もうダメかも。お願い、たすけて……
「うわぁ」
男の悲鳴に近い声が聞こえ、急に体が軽くなった。
「けほっ……」
はぁ……助かった……
見ると私を押し付けていた男は、目の前でしりもちをついている。
「おい、大丈夫か?」
細身の青年が私を見下ろしている。苦しくて声は出せないけど大丈夫。地面に座ったまま無言で頷いた。
「てめぇ、何しやがる!!」
青年は殺気立つ男達を気にする事なく、私の手の縄を切った。そうしている間にも男達はジリジリにじり寄ってくる。
「おい、おめーら、やめとけ」
私達を取り囲む男達の後ろから、一人の中年男性が歩み出た。
「申し訳ありませんが、その女をこちらに返していただけませんかねぇ?」
口調は丁寧だが、その鋭い目つきに思わず身が硬くなる。私を助けてくれた少年は、無言でもう一人のフードを被った人物を見た。
「もちろんタダでとは言いませんよ」
うわぁ。すっごーい!!
男が開いてみせたカバンの中には、ブレスレットや大きなダイヤのついたネックレスなど、数多くの宝石が見えた。この宝石と私を交換しようってことなのね。
「返す前に、お前らは何者なのか説明してもらおうか」
助けてくれた青年が、ぐいっと私の腕を後ろで掴んだ。あまりの痛さに思わず顔が歪む。
あー、これはこっちも悪人だったってパターンかしら? 両方悪人じゃあ、結局私は助かりそうもないわね。
「あっしらは、ある人に頼まれてこの女をレイクスター王国まで運んでるんですよ」
レイクスター王国? それって確か水の一族が治めている大国のはずだけど……
「ある人って、一体誰に頼まれたの?」
しまったぁぁぁ。気になって、つい普通に会話に入っていっちゃった。
男達と、私を助けてくれた青年が私を見た。皆驚きというか、あきれというか、微妙な表情をしている。こんな時によく普通にしてられるな? 的な感情かもしれない。
「ゆ、誘拐されて大変な思いをしてるんだから、私には知る権利があるはずよ」
私の言葉に納得したのかどうなのか、男は私の質問に答えた。
「フレイムジールのエイデン王さ」
はぁ?
一瞬思考が停止する。いやいやいや……エイデンが私を誘拐させるはずなんてないじゃない?
「フレイムジールの王が、なぜ彼女を攫う必要があるのですか?」
フードを被った男が口をひらいた。
この声……やっぱりエイデンに似てる……
じっとフードの男を見つめるが、影になっていてフードの下の顔は見えない。
「ここだけの話、この女はエイデン王の愛人だったんですがね、婚約の邪魔になるってんで始末したいらしいんですよ」
別に殺してもよかったのだが、このレベルなら売れないこともないだろうと隣国に連れて行く途中だったそうだ。
よかったぁ。自分でも前より綺麗になったと思ってたのよね。最近栄養状態もいいし、たくさん寝てるおかげだわ。メイドの時だったら、悩むまでもなく瞬殺されてたに違いない。
「そんなわけでこの女、返してもらってもいいですかね?」
私を含めた全員の視線がフードの男に向けられている。
お願いだから、どうかノーと言って!!
ここで引き渡されてはたまらない。
「どうしましょうかねぇ?」
そう言いながら男は被っていたフードを外した。焚き火に照らされたその顔を見た途端、急に力がわいてくる。
エイデン……
体の後ろで掴まれていた腕を引き戻し、必死でその胸に飛び込んだ。
えっ? 何この感じ……
ばっと体を離してその顔を見つめると、チョコレート色の瞳がおかしそうに私を見下ろしていた。
「エイデン、じゃない……?」
エイデンに見えるけれど何かが違う気がして思わずあとずさりする。エイデンの顔をした男はクスクスと楽しそうに声を出して笑った。
「よく違うって分かりましたね」
エイデンにそっくりな男は私の方へ一歩踏み出し、警戒する私の手をとった。
「プリンセス レイナ、お会いできて光栄です」
手の甲にキスをされ、思わず顔がかぁっと火照る。
「プリンセス レイナ?」
誘拐犯達がざわつき始めた。
「ちっ、仕方ない。お前ら、用意はいいか?」
どうやら男達は話し合いではなく、力で解決することにしたらしい。
「マルコ!!」
エイデンそっくりさんは、私の手を握ったままもう一人の男の名を呼んだ。
すごい……
私達の方へ向かってきた男達は、マルコと呼ばれた青年によって一瞬で片付けられた。
「くそっ。覚えてろよ」
男達は捨て台詞を吐き、森の中へ逃げて行く。
「追いますか?」
マルコが尋ねると、エイデンに似た男性は首を横に振り上を見あげた。
「クロウ、頼みましたよ」
その声に応えるように、大きな黒い物体が木の上で素早く動いた。
何だかよく分からないけれど、とにかく助かってよかったぁ。口からほうっと大きなため息が漏れた。
「大変でしたね。大丈夫ですか?」
そう話しかけられ、まだ手を握られたままだと思い出した。綺麗なチョコレート色の瞳に見つめられ、何だか急に恥ずかしくなる。
「助けていただき、ありがとうございました」
「どういたしまして」
そう答えた男の顔も声も、やっぱりエイデンにそっくりだった。でも一つだけ違うところがある。さっきはこの暗さで気づかなかったけれど、髪の毛の色が違うのだ。
エイデンの髪の毛は燃えるような赤い色をしているけど、この男の髪色は赤というより茶色に見える。それに何だろ? この人の方が話し方や身のこなしに気品がある気がする。
「どうしたんですか? ボーっとして」
低く色気のある声が、私の思考を遮った。
「レオ様に見とれてるんじゃないですか?」
私を見るマルコの瞳はやけに冷たい。
「レオ様?」
「そうそう。挨拶がまだでしたね。私はレオナルド。そしてこっちは従者のマルコです」
「あの……あなたはどうして……?」
「エイデンにそっくりかってことですか?」
私の頭の中はお見通しってわけね。
レオナルドがおかしそうに笑うのを見ながら、コクンと頷いた。
「エイデンから聞いていないんですね。私はエイデンの双子の兄なんですよ」
「えっ!?」
思わず声を出して驚いてしまった。
エイデンってば兄弟がいるなんて、全く教えてくれなかったじゃない。しかも双子だなんて。
「あなたのことは聞いていますよ。エイデンの言う通り、本当に可愛いらしい方ですね」
エイデンと同じ顔、同じ声で可愛いなんて言われたら、照れちゃうじゃない。
「寒くなってきましたし、夕飯にしましょうか?」
レオナルドの言葉を合図に、マルコが焚き火に鍋をかけた。
「あっ、私も手伝います」
「大丈夫ですよ。マルコは仕事が早いから」
にっこり笑って私を見るレオナルドの顔は、エイデンよりやや柔らかだがやはりよく似ている。
「エイデンって、双子だったんですね」
「そうです。でも残念ですね。せっかくレイナが抱きついてくれたのに、すぐエイデンじゃないとバレてしまいました」
「あ、あれは……」
恥ずかしすぎて、レオナルドの顔がまともに見れない。
「こんなに暗くなかったら、絶対間違えてません」
きっぱりと言い切った私に、レオナルドは声をあげて笑った。
「たすけて!!」
私の声が届いたのか、焚き火を囲んでいる二人の人物がこちらを向くのが見えた。
やった、やっと森を抜けた。そう思った所で、追ってきた男によって体を引っ張られる。バランスを崩し、男と共に地面に倒れこんだ。
「手間かけさせやがって」
私の手にくくりつけられている縄を引っ張りながら、男が忌々しげに吐き捨てる。地面に体を押し付けられて痛くてたまらない。
「お願い……たすけて……」
押さえつけられているせいで見えないけど、きっとすぐ近くにいるはずの誰かに助けを求める。
「申し訳ありませんね。お騒がせして」
私を押さえつけている男が、えらく愛想のよい声を出した。
「今助けてと聞こえた気がしますが?」
あれ? この声って……
聞き覚えのある声に胸がトクンとする。声の主を見たいのに、がっちりと押さえられていて動くことができない。
「ちょいとイカれた女なもんで。気になさらんでくださいな」
「イカれてなんかないわ。私は攫われ……」
しぼり出した声は、言い終わる前に男達によって消されてしまった。口を塞がれて息が苦しい。涙が滲んでくる。もうダメかも。お願い、たすけて……
「うわぁ」
男の悲鳴に近い声が聞こえ、急に体が軽くなった。
「けほっ……」
はぁ……助かった……
見ると私を押し付けていた男は、目の前でしりもちをついている。
「おい、大丈夫か?」
細身の青年が私を見下ろしている。苦しくて声は出せないけど大丈夫。地面に座ったまま無言で頷いた。
「てめぇ、何しやがる!!」
青年は殺気立つ男達を気にする事なく、私の手の縄を切った。そうしている間にも男達はジリジリにじり寄ってくる。
「おい、おめーら、やめとけ」
私達を取り囲む男達の後ろから、一人の中年男性が歩み出た。
「申し訳ありませんが、その女をこちらに返していただけませんかねぇ?」
口調は丁寧だが、その鋭い目つきに思わず身が硬くなる。私を助けてくれた少年は、無言でもう一人のフードを被った人物を見た。
「もちろんタダでとは言いませんよ」
うわぁ。すっごーい!!
男が開いてみせたカバンの中には、ブレスレットや大きなダイヤのついたネックレスなど、数多くの宝石が見えた。この宝石と私を交換しようってことなのね。
「返す前に、お前らは何者なのか説明してもらおうか」
助けてくれた青年が、ぐいっと私の腕を後ろで掴んだ。あまりの痛さに思わず顔が歪む。
あー、これはこっちも悪人だったってパターンかしら? 両方悪人じゃあ、結局私は助かりそうもないわね。
「あっしらは、ある人に頼まれてこの女をレイクスター王国まで運んでるんですよ」
レイクスター王国? それって確か水の一族が治めている大国のはずだけど……
「ある人って、一体誰に頼まれたの?」
しまったぁぁぁ。気になって、つい普通に会話に入っていっちゃった。
男達と、私を助けてくれた青年が私を見た。皆驚きというか、あきれというか、微妙な表情をしている。こんな時によく普通にしてられるな? 的な感情かもしれない。
「ゆ、誘拐されて大変な思いをしてるんだから、私には知る権利があるはずよ」
私の言葉に納得したのかどうなのか、男は私の質問に答えた。
「フレイムジールのエイデン王さ」
はぁ?
一瞬思考が停止する。いやいやいや……エイデンが私を誘拐させるはずなんてないじゃない?
「フレイムジールの王が、なぜ彼女を攫う必要があるのですか?」
フードを被った男が口をひらいた。
この声……やっぱりエイデンに似てる……
じっとフードの男を見つめるが、影になっていてフードの下の顔は見えない。
「ここだけの話、この女はエイデン王の愛人だったんですがね、婚約の邪魔になるってんで始末したいらしいんですよ」
別に殺してもよかったのだが、このレベルなら売れないこともないだろうと隣国に連れて行く途中だったそうだ。
よかったぁ。自分でも前より綺麗になったと思ってたのよね。最近栄養状態もいいし、たくさん寝てるおかげだわ。メイドの時だったら、悩むまでもなく瞬殺されてたに違いない。
「そんなわけでこの女、返してもらってもいいですかね?」
私を含めた全員の視線がフードの男に向けられている。
お願いだから、どうかノーと言って!!
ここで引き渡されてはたまらない。
「どうしましょうかねぇ?」
そう言いながら男は被っていたフードを外した。焚き火に照らされたその顔を見た途端、急に力がわいてくる。
エイデン……
体の後ろで掴まれていた腕を引き戻し、必死でその胸に飛び込んだ。
えっ? 何この感じ……
ばっと体を離してその顔を見つめると、チョコレート色の瞳がおかしそうに私を見下ろしていた。
「エイデン、じゃない……?」
エイデンに見えるけれど何かが違う気がして思わずあとずさりする。エイデンの顔をした男はクスクスと楽しそうに声を出して笑った。
「よく違うって分かりましたね」
エイデンにそっくりな男は私の方へ一歩踏み出し、警戒する私の手をとった。
「プリンセス レイナ、お会いできて光栄です」
手の甲にキスをされ、思わず顔がかぁっと火照る。
「プリンセス レイナ?」
誘拐犯達がざわつき始めた。
「ちっ、仕方ない。お前ら、用意はいいか?」
どうやら男達は話し合いではなく、力で解決することにしたらしい。
「マルコ!!」
エイデンそっくりさんは、私の手を握ったままもう一人の男の名を呼んだ。
すごい……
私達の方へ向かってきた男達は、マルコと呼ばれた青年によって一瞬で片付けられた。
「くそっ。覚えてろよ」
男達は捨て台詞を吐き、森の中へ逃げて行く。
「追いますか?」
マルコが尋ねると、エイデンに似た男性は首を横に振り上を見あげた。
「クロウ、頼みましたよ」
その声に応えるように、大きな黒い物体が木の上で素早く動いた。
何だかよく分からないけれど、とにかく助かってよかったぁ。口からほうっと大きなため息が漏れた。
「大変でしたね。大丈夫ですか?」
そう話しかけられ、まだ手を握られたままだと思い出した。綺麗なチョコレート色の瞳に見つめられ、何だか急に恥ずかしくなる。
「助けていただき、ありがとうございました」
「どういたしまして」
そう答えた男の顔も声も、やっぱりエイデンにそっくりだった。でも一つだけ違うところがある。さっきはこの暗さで気づかなかったけれど、髪の毛の色が違うのだ。
エイデンの髪の毛は燃えるような赤い色をしているけど、この男の髪色は赤というより茶色に見える。それに何だろ? この人の方が話し方や身のこなしに気品がある気がする。
「どうしたんですか? ボーっとして」
低く色気のある声が、私の思考を遮った。
「レオ様に見とれてるんじゃないですか?」
私を見るマルコの瞳はやけに冷たい。
「レオ様?」
「そうそう。挨拶がまだでしたね。私はレオナルド。そしてこっちは従者のマルコです」
「あの……あなたはどうして……?」
「エイデンにそっくりかってことですか?」
私の頭の中はお見通しってわけね。
レオナルドがおかしそうに笑うのを見ながら、コクンと頷いた。
「エイデンから聞いていないんですね。私はエイデンの双子の兄なんですよ」
「えっ!?」
思わず声を出して驚いてしまった。
エイデンってば兄弟がいるなんて、全く教えてくれなかったじゃない。しかも双子だなんて。
「あなたのことは聞いていますよ。エイデンの言う通り、本当に可愛いらしい方ですね」
エイデンと同じ顔、同じ声で可愛いなんて言われたら、照れちゃうじゃない。
「寒くなってきましたし、夕飯にしましょうか?」
レオナルドの言葉を合図に、マルコが焚き火に鍋をかけた。
「あっ、私も手伝います」
「大丈夫ですよ。マルコは仕事が早いから」
にっこり笑って私を見るレオナルドの顔は、エイデンよりやや柔らかだがやはりよく似ている。
「エイデンって、双子だったんですね」
「そうです。でも残念ですね。せっかくレイナが抱きついてくれたのに、すぐエイデンじゃないとバレてしまいました」
「あ、あれは……」
恥ずかしすぎて、レオナルドの顔がまともに見れない。
「こんなに暗くなかったら、絶対間違えてません」
きっぱりと言い切った私に、レオナルドは声をあげて笑った。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!
参
恋愛
男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。
ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。
全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?!
※結構ふざけたラブコメです。
恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。
ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。
前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……
木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。
恋人を作ろう!と。
そして、お金を恵んでもらおう!と。
ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。
捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?
聞けば、王子にも事情があるみたい!
それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!
まさかの狙いは私だった⁉︎
ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。
※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる