4 / 86
4.お披露目会
しおりを挟む
「いいですか? 何度も言いますが、失敗してもらっては困ります」
カイルの口調はいつになく厳しい。
「全く……視察から帰ってみたらこんな厄介なことになってるとは……」
エイデンは椅子に腰をおろし、大きなため息をついた。
「お披露目会まであと数時間しかないのよ。それまでに皆を納得させるような淑女になれっていうのは絶対に無理だから」
「あの大臣の目的は、大勢の前でレイナ様を馬鹿にして王妃にふさわしくないと思わせることです。おそらく娘のエリザベス様もいらっしゃるでしょう」
目をぎらつかせて絶対に負けてはならないと言うカイルは、温和そうに見えて結構な負けず嫌いなのかもしれない。
「一応頑張ってはみるけど……うまくいかなくてもがっかりしないでね」
「がっかりなどしない。レイナが他の女に負けるなど、ありえないからな」
うわぁ。エイデンってば、嫌な奴!!
思ってもない事言って、私にめちゃくちゃプレッシャー与えてくるんだから。
エイデンは言うだけ言うと、自分も準備があるからとカイルを引き連れ出ていってしまった。
すぐにドアが開き、再びカイルが顔をのぞかせる。
「エリザベス様に勝ったら、三食昼寝付きの生活を保障いたします。死ぬ気で頑張ってください」
三食昼寝付きって……それで私がやる気を出すと思ってるの? 人のことなんだと思ってるんだか。まぁ、そりゃ全然惹かれないってわけじゃないけど……
トントントンっとドアを叩く音で現実に戻される。エイデン付きだという侍女数人が私の準備の手伝いに来たのだ。
「レイナ様の評価が陛下の評価にもつながります。さぁ、全身磨くところから始めましょう!」
「いや~!! もう無理、無理だからぁ!!」
皆で寄ってたかって容赦なく体を擦ったり、髪を洗ったり……痛すぎて悲鳴が出ちゃう。
お風呂が終わった時点ですでにぐったりしてしまった。もうこのまま休んじゃいたい……ベッドに体を投げだし、うつ伏せのまま大きなため息をついた。
「レイナ、分かってる? あなたが馬鹿にされるってことは、あなたに仕えている私達も馬鹿にされてるってことなのよ」
ミアの言葉にビビアンも頷いている。
「レイナ様が大臣に馬鹿にされて、私達がどんなに悔しかったか……」
「そうね……頑張らなくちゃね」
エリザベスがどんな女性かは分からない。でも私のことを応援してくれるミアとビビアンのためにも負けるわけにはいかない。決意を新たにし、鏡の前に立った。
そうこうしている間に時間はたち、早くもお披露目会の時間がきてしまった。
日に焼けた私にもあうようにと、ミア達が選んでくれたのは黄色いフリルがたくさんついたドレスだった。明るい黄色は私の気持ちまで明るくしてくれる。
「ものすごくお綺麗ですよ」
ビビアンはそう言ってくれたし、エイデン付きの侍女達も仕上がりに満足そうにしてたけど、皆の値踏みするような視線がいたたまれない。
ああん。もう部屋に帰りたい……
だいたいエイデンはどこにいるのよ? プロポーズまでした相手をエスコートもしないなんて、ちょっと酷すぎじゃないかしら?
そりゃ私は産まれた時は王女だったかもしれないけど、こんな華やかな夜会に出るのは初めてなんだから、少しくらい気にかけてくれたっていいのに。
エイデンに対する恨み事は次から次へとわいてくる。その怒りがパワーになっているのか、ビクビクすることなく会場内を進んでいけた。
エイデンはどこかしら? こんなに人が多いんじゃ見つからないわ。
「こんなに綺麗なんだから、きっとエイデン様も惚れ直すこと間違いなしよ!」
ミアの言葉を思い出すと、何だかむずがゆくなる。でももともとエイデンは私の事なんて好きでもなんでもないんだし、惚れ直すってのはおかしいわよね。
それでも少しは褒めてもらえるかななんて、期待と共にエイデンの姿を探す。
「お一人ですか?」
突然見知らぬ男性から声をかけられた。
「え、ええ……」
まぁ一人といえば、一人だわね。
「よかったら僕と踊っていただけませんか?」
見るからに育ちの良さそうな男性が、人懐っこそうな笑みを浮かべて私を見ている。
えっ!? 踊り? 踊りはまずい。だって私、ダンスなんてしたことないもの。
だけど困ったな。声をかけられるなんて思ってなかったから、断り方も教わっていない。
「失礼……ひどくお困りのような顔をしてらいらっしゃるようですが……」
よかった。助け船かとほっとしたのも束の間、話に割って入った男性から一緒に飲まないかと誘われてしまった。
「いえ、それは……」
どう断るのが無難なのかと頭を悩ませているうちに、あれよあれよと6人の男性に囲まれてしまった。馬鹿にされないようにとだけ考えていたので、この状況は想定外だ。
男性に言い寄られるのは初めてだけど、これじゃ嬉しいっていうよりちょっと怖いわ。冴えないメイドを短時間でモテ女に仕上げてくれる、侍女パワーおそるべし!!
「レイナ」
しつこい男性達に囲まれている私の耳に、少し怒ったような鋭い声が響く。その声の主が分かるやいなや、私を取り囲んでいた男性達が蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「エイデン!!」
うわぁ。正装したエイデンってば、めちゃくちゃかっこいい。刺繍の入った漆黒のロングジャケットがよく似合っている。
「何をヘラヘラしているんだ」
「えっ!? 別にヘラヘラなんか……」
「していただろう。男をはべらせて嬉しそうにしやがって。とんだ男たらしだな」
えっ!? 何なの一体? 一人で放置されて困ってたのに、そんな軽蔑した目で見るなんて酷くない?
「いいか、自分に魅力があるなんておかしな勘違いはするなよ。あいつらはお前が俺のものだから興味があるだけだからな」
ひどい。そんなに馬鹿にして笑わなくてもいいじゃない……
エイデンなんかに見惚れて損しちゃったわ。私のトキメキを返せ!!
そりゃ私は魅力的じゃないわよ。そんな事は分かってる。でもミア達が頑張って綺麗にしてくれたんだから、少しくらい褒めて欲しかった。エイデンにほめてほしいと思っていた自分がなんだか馬鹿みたいだ。
「陛下、ここでしたか」
落ち込んでいる私をさらに暗い気持ちにさせる人物の登場に、心の中で大きなため息をついた。
「これはこれは、メイドの姫もご一緒でしたか?」
私を蔑む大臣の言葉に、クスクスという笑い声が聞こえてくる。
「エイデン様、お久しぶりでございます」
「あぁ、エリザベスか……」
エイデンの言葉で、大臣の横にいるのがカイルが負けるなと言っていたエリザベスなのだと気づいた。
いや、これはもう完敗だわ……
エリザベスはもう見た瞬間に負けを認めざるを得ないくらいに可愛かった。まるでお人形さんみたい。くりくりした瞳に小さな唇、綺麗に巻かれた金の髪の毛。華奢な体型にピンクのボリュームのあるドレスがよく似合っている。さすが大臣の娘だけあって、身につけている宝石も見事だ。
「エイデン様、よろしければわたくしとダンスをしていただけませんか?」
エリザベスの白くてすべすべの肌はエイデンに会えて嬉しいのか、ほんのりと赤く色づいている。それがまた一段と可愛らしい。
「悪いが俺はレイナとしか踊るつもりはない」
えぇー!! もったいない。こんな可愛い子の誘いを断っちゃうの?
「まぁまぁ陛下、一度くらい、いいではありませんか。どうせメイドの姫は踊れないでしょうし」
大臣が馬鹿にしたような目で私を見た。でも私としては後ろから聞こえてくるクスクス笑いの方が不快だ。
「おい、お前今レイナの事を馬鹿にしただろ?」
エイデンの怒りのこもった低い声に場がしんと静まった。
「いいか、皆に言っておく。レイナは俺の妻になる女だ。馬鹿にするならそれなりの覚悟があるんだろうな」
エイデンの溢れ出る怒りにも大臣は狼狽える様子はない。それどころか信じられないというような顔をしている。
「陛下!! 陛下はこんなメイドを本気で妻にと考えてらっしゃるんですか?」
「当たり前だ。前から言っているだろう。俺はレイナ以外とは結婚するつもりはない」
どうしよう。これはちょっと嬉しいかも。
キッパリと言い切ったエイデンの言葉に、胸がキュとなる。
「そうですか……まぁ結婚については後日考えることにして、せっかくのお披露目会です。レイナ様のダンスでも見せていただきましょうか」
あら、大臣ってば私の名前知ってたんだ。って今はそれどころじゃないわね。
「……行くぞ」
エイデンはダンスする気満々みたいだけど、絶対に無理だから。
「エイデン、あの、私ダンスはちょっと……」
「何だ? 俺と踊りたくないのかよ?」
踊りたいとか踊りたくないとか、そういう問題じゃないの。私は踊れないのよ~。
でもこんな事、大臣達に知られたら何を言われるか……
エイデンにだけ聞こえるように踊れない事を伝えると、エイデンは驚いたような顔で私を見た。
「踊れないだって?」
「はい」
というか踊った事がないって言った方が正しいかな。
「じゃあ今までの夜会はどうしてたんだよ?」
「夜会なんて出たことないわ。こんな華やかな場に来たこと自体初めてよ」
エイデンってば、私が住み込みの貧乏メイドだったって事忘れてるのかしら?
「初めてか……いい響きだな」
エイデンはニヤリと笑うと私を引き寄せ、頬に軽いキスをした。
「なっ!?」
何事!?
思わず頬に触れる。多分私は今恥ずかしいくらいに赤い顔をしてるはず。
「男避けだ。これで他の男はもう声をかけてこないだろうな」
そう言うとエイデンは満足そうに笑った。
カイルの口調はいつになく厳しい。
「全く……視察から帰ってみたらこんな厄介なことになってるとは……」
エイデンは椅子に腰をおろし、大きなため息をついた。
「お披露目会まであと数時間しかないのよ。それまでに皆を納得させるような淑女になれっていうのは絶対に無理だから」
「あの大臣の目的は、大勢の前でレイナ様を馬鹿にして王妃にふさわしくないと思わせることです。おそらく娘のエリザベス様もいらっしゃるでしょう」
目をぎらつかせて絶対に負けてはならないと言うカイルは、温和そうに見えて結構な負けず嫌いなのかもしれない。
「一応頑張ってはみるけど……うまくいかなくてもがっかりしないでね」
「がっかりなどしない。レイナが他の女に負けるなど、ありえないからな」
うわぁ。エイデンってば、嫌な奴!!
思ってもない事言って、私にめちゃくちゃプレッシャー与えてくるんだから。
エイデンは言うだけ言うと、自分も準備があるからとカイルを引き連れ出ていってしまった。
すぐにドアが開き、再びカイルが顔をのぞかせる。
「エリザベス様に勝ったら、三食昼寝付きの生活を保障いたします。死ぬ気で頑張ってください」
三食昼寝付きって……それで私がやる気を出すと思ってるの? 人のことなんだと思ってるんだか。まぁ、そりゃ全然惹かれないってわけじゃないけど……
トントントンっとドアを叩く音で現実に戻される。エイデン付きだという侍女数人が私の準備の手伝いに来たのだ。
「レイナ様の評価が陛下の評価にもつながります。さぁ、全身磨くところから始めましょう!」
「いや~!! もう無理、無理だからぁ!!」
皆で寄ってたかって容赦なく体を擦ったり、髪を洗ったり……痛すぎて悲鳴が出ちゃう。
お風呂が終わった時点ですでにぐったりしてしまった。もうこのまま休んじゃいたい……ベッドに体を投げだし、うつ伏せのまま大きなため息をついた。
「レイナ、分かってる? あなたが馬鹿にされるってことは、あなたに仕えている私達も馬鹿にされてるってことなのよ」
ミアの言葉にビビアンも頷いている。
「レイナ様が大臣に馬鹿にされて、私達がどんなに悔しかったか……」
「そうね……頑張らなくちゃね」
エリザベスがどんな女性かは分からない。でも私のことを応援してくれるミアとビビアンのためにも負けるわけにはいかない。決意を新たにし、鏡の前に立った。
そうこうしている間に時間はたち、早くもお披露目会の時間がきてしまった。
日に焼けた私にもあうようにと、ミア達が選んでくれたのは黄色いフリルがたくさんついたドレスだった。明るい黄色は私の気持ちまで明るくしてくれる。
「ものすごくお綺麗ですよ」
ビビアンはそう言ってくれたし、エイデン付きの侍女達も仕上がりに満足そうにしてたけど、皆の値踏みするような視線がいたたまれない。
ああん。もう部屋に帰りたい……
だいたいエイデンはどこにいるのよ? プロポーズまでした相手をエスコートもしないなんて、ちょっと酷すぎじゃないかしら?
そりゃ私は産まれた時は王女だったかもしれないけど、こんな華やかな夜会に出るのは初めてなんだから、少しくらい気にかけてくれたっていいのに。
エイデンに対する恨み事は次から次へとわいてくる。その怒りがパワーになっているのか、ビクビクすることなく会場内を進んでいけた。
エイデンはどこかしら? こんなに人が多いんじゃ見つからないわ。
「こんなに綺麗なんだから、きっとエイデン様も惚れ直すこと間違いなしよ!」
ミアの言葉を思い出すと、何だかむずがゆくなる。でももともとエイデンは私の事なんて好きでもなんでもないんだし、惚れ直すってのはおかしいわよね。
それでも少しは褒めてもらえるかななんて、期待と共にエイデンの姿を探す。
「お一人ですか?」
突然見知らぬ男性から声をかけられた。
「え、ええ……」
まぁ一人といえば、一人だわね。
「よかったら僕と踊っていただけませんか?」
見るからに育ちの良さそうな男性が、人懐っこそうな笑みを浮かべて私を見ている。
えっ!? 踊り? 踊りはまずい。だって私、ダンスなんてしたことないもの。
だけど困ったな。声をかけられるなんて思ってなかったから、断り方も教わっていない。
「失礼……ひどくお困りのような顔をしてらいらっしゃるようですが……」
よかった。助け船かとほっとしたのも束の間、話に割って入った男性から一緒に飲まないかと誘われてしまった。
「いえ、それは……」
どう断るのが無難なのかと頭を悩ませているうちに、あれよあれよと6人の男性に囲まれてしまった。馬鹿にされないようにとだけ考えていたので、この状況は想定外だ。
男性に言い寄られるのは初めてだけど、これじゃ嬉しいっていうよりちょっと怖いわ。冴えないメイドを短時間でモテ女に仕上げてくれる、侍女パワーおそるべし!!
「レイナ」
しつこい男性達に囲まれている私の耳に、少し怒ったような鋭い声が響く。その声の主が分かるやいなや、私を取り囲んでいた男性達が蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「エイデン!!」
うわぁ。正装したエイデンってば、めちゃくちゃかっこいい。刺繍の入った漆黒のロングジャケットがよく似合っている。
「何をヘラヘラしているんだ」
「えっ!? 別にヘラヘラなんか……」
「していただろう。男をはべらせて嬉しそうにしやがって。とんだ男たらしだな」
えっ!? 何なの一体? 一人で放置されて困ってたのに、そんな軽蔑した目で見るなんて酷くない?
「いいか、自分に魅力があるなんておかしな勘違いはするなよ。あいつらはお前が俺のものだから興味があるだけだからな」
ひどい。そんなに馬鹿にして笑わなくてもいいじゃない……
エイデンなんかに見惚れて損しちゃったわ。私のトキメキを返せ!!
そりゃ私は魅力的じゃないわよ。そんな事は分かってる。でもミア達が頑張って綺麗にしてくれたんだから、少しくらい褒めて欲しかった。エイデンにほめてほしいと思っていた自分がなんだか馬鹿みたいだ。
「陛下、ここでしたか」
落ち込んでいる私をさらに暗い気持ちにさせる人物の登場に、心の中で大きなため息をついた。
「これはこれは、メイドの姫もご一緒でしたか?」
私を蔑む大臣の言葉に、クスクスという笑い声が聞こえてくる。
「エイデン様、お久しぶりでございます」
「あぁ、エリザベスか……」
エイデンの言葉で、大臣の横にいるのがカイルが負けるなと言っていたエリザベスなのだと気づいた。
いや、これはもう完敗だわ……
エリザベスはもう見た瞬間に負けを認めざるを得ないくらいに可愛かった。まるでお人形さんみたい。くりくりした瞳に小さな唇、綺麗に巻かれた金の髪の毛。華奢な体型にピンクのボリュームのあるドレスがよく似合っている。さすが大臣の娘だけあって、身につけている宝石も見事だ。
「エイデン様、よろしければわたくしとダンスをしていただけませんか?」
エリザベスの白くてすべすべの肌はエイデンに会えて嬉しいのか、ほんのりと赤く色づいている。それがまた一段と可愛らしい。
「悪いが俺はレイナとしか踊るつもりはない」
えぇー!! もったいない。こんな可愛い子の誘いを断っちゃうの?
「まぁまぁ陛下、一度くらい、いいではありませんか。どうせメイドの姫は踊れないでしょうし」
大臣が馬鹿にしたような目で私を見た。でも私としては後ろから聞こえてくるクスクス笑いの方が不快だ。
「おい、お前今レイナの事を馬鹿にしただろ?」
エイデンの怒りのこもった低い声に場がしんと静まった。
「いいか、皆に言っておく。レイナは俺の妻になる女だ。馬鹿にするならそれなりの覚悟があるんだろうな」
エイデンの溢れ出る怒りにも大臣は狼狽える様子はない。それどころか信じられないというような顔をしている。
「陛下!! 陛下はこんなメイドを本気で妻にと考えてらっしゃるんですか?」
「当たり前だ。前から言っているだろう。俺はレイナ以外とは結婚するつもりはない」
どうしよう。これはちょっと嬉しいかも。
キッパリと言い切ったエイデンの言葉に、胸がキュとなる。
「そうですか……まぁ結婚については後日考えることにして、せっかくのお披露目会です。レイナ様のダンスでも見せていただきましょうか」
あら、大臣ってば私の名前知ってたんだ。って今はそれどころじゃないわね。
「……行くぞ」
エイデンはダンスする気満々みたいだけど、絶対に無理だから。
「エイデン、あの、私ダンスはちょっと……」
「何だ? 俺と踊りたくないのかよ?」
踊りたいとか踊りたくないとか、そういう問題じゃないの。私は踊れないのよ~。
でもこんな事、大臣達に知られたら何を言われるか……
エイデンにだけ聞こえるように踊れない事を伝えると、エイデンは驚いたような顔で私を見た。
「踊れないだって?」
「はい」
というか踊った事がないって言った方が正しいかな。
「じゃあ今までの夜会はどうしてたんだよ?」
「夜会なんて出たことないわ。こんな華やかな場に来たこと自体初めてよ」
エイデンってば、私が住み込みの貧乏メイドだったって事忘れてるのかしら?
「初めてか……いい響きだな」
エイデンはニヤリと笑うと私を引き寄せ、頬に軽いキスをした。
「なっ!?」
何事!?
思わず頬に触れる。多分私は今恥ずかしいくらいに赤い顔をしてるはず。
「男避けだ。これで他の男はもう声をかけてこないだろうな」
そう言うとエイデンは満足そうに笑った。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】私の婚約者はもう死んだので
miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」
結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。
そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。
彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。
これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる