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理由も想いも人それぞれ
しおりを挟む「なんだ、随分と賑やかだな」
稽古場を眺めていたレスタの後ろからリオネルがあらわれ声をかけてきた。
「見ればわかりますよ」
レスタの視線をたどって行くと、そこには騎士達をなぎ払ってまわるダンテが見えた。ダンテは鍛練をとレスタに焚き付けられてやってきたのだが、騎士達にしてみれば、今は滅多に表に出てこない辺境伯相手に手合わせできると言うのだから盛り上がらないわけがない。血気盛んに立ち向かう者、ダンテの剣さばきに見とれる者。様子は様々であるが盛り上がっている理由は間違いなくダンテである。
「んなっ!?何故辺境伯が稽古場に・・・どういう風の吹きまわしだ」
「私がお誘いしたのですよ」
「これまで何を言っても顔すら見せようとしなかったのにか」
リオネルは訝しげな様子でダンテを見つめる。
「目的があれば辺境伯様だってやる気が出ると言うものです」
自信ありげな、そして満足気なレスタ。
「目的とはなんだ?」
「可愛い孫娘ができたんですよ」
「何を言ってるんだ、辺境伯は独身だろう・・・隠し子か」
「違います。でも、可愛い可愛い孫娘です」
とうとうイカれたかとレスタを残念なものを見るような目で見ていた。
「私もレタスになった甲斐があると言うものです」
さらにおかしな発言をしてきたレスタ。
「医者を呼んでやろう」
「いえ、お構い無く。いたって平常ですので」
それでもレスタはニコニコと稽古風景を眺めていた。そんなレスタを怪訝に思いながらも、リオネルはいつでも医者を呼べるようにしておかなくてはいけないなと思いながら去っていった。
「主は辺境伯様と剣を交えてみたいとは思わないのでしょうかね」
「興味と言うのは人それぞれ違うものですからね」
独り言のつもりだった呟きに返事があった。驚いて振り返るとそこにはスティファニアがいた。
「お嬢様!いつからそこに!?」
「ついさっきです」
「何かお聞きに?」
「会話は聞こえませんでした。お話の邪魔になってはいけないと思って近付きはしませんでしたから」
「そ、そうですか」
まさかレタスと呼ばれていたと言ったのを聞かれたのではないかと焦ったが、何も聞こえてはいないと言ったスティファニア。レスタは半信半疑も、その言葉を信じることにした。
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