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静かな隣室

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王城での事を思い出し、少々苛立ちを見せながらも、騎士達に稽古をつけ、身体を動かしたから一休みと思っていた。静かに目蓋を閉じても眠気はやってこない。リオネルは目を閉じたまま、一つ気になっていることがあった。


(隣は随分と静かだな・・・)


リオネルが横になっていた部屋は、いわゆる夫婦の寝室と呼ばれるもので、リオネルの自室とスティファニアの部屋になるはずだった・・・・・部屋の間にある。隣から何の音も声もしない事を不思議に思うが、よくよく考えてみれば王都育ちのお嬢様だ。つまらないとばかりに街にでも出掛けたのだろうと結論付けた。何せ、いつも仕事しろとうるさいレスタがいない。レスタを伴って出掛けているのなら困ることはないだろう。ふとリオネルの脳裏にレスタを伴って歩く女をイメージする。だがなにも浮かばない。それもそのはず。リオネルはスティファニアの顔を知らないのだ。想像もなにもできたものではない。


「くそっ・・・」


何かわからないが、むしゃくしゃする、
こういう時は身体を動かすに限ると言うものだ。リオネルは寝台から出ると、自室に向かい動きやすい服装へと着替えた。そして屋敷を一人出ていった。リオネルが向かったのは領民の家の畑である。


「おい、クワを貸せ」

「領主様!いつも手伝って貰ってばかりですみません」

「何、気にするな。俺もストレス発散といい気分転換になるんだ」

「そう言ってもらえるとありがたいです」


リオネルは時々こうやって領民達の手伝いのようなことをする。元々平民で、傭兵だったリオネルにすれば、こっちの方が気安くて性に合うのだ。特にレスタからの言いつけの仕事が増えれば、逃げるようにして街に繰り出す。領民を助けるのも領主の務めとそれらしいことを言って。


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