16 / 39
自室となった部屋で考える事
しおりを挟む使用人部屋の一番奥の部屋に住まうことになったスティファニア。ここなら誰にも邪魔されずに、平穏な日々を毎日過ごせるかもしれない。そのうち男爵本人にも忘れられ、捨て置かれ、本当に使用人になってもいいかもしれないなどと考えを巡らせていた。そうすれば、好きになった相手と結婚できて、贅沢はできなくとも、穏やかに幸せな毎日を送れるかもしれないと想像する。どんな相手がいいだろうか。騎士はダメ。いつ命を落とすかわからない。知らない土地に来て、一人取り残されて生きていく自信はない。貴族の妻などもっての他だ。これまで十分と言うほどに家族に疎まれてきた。同じ父と母の子であると言うのに、目にかけてもらえるのは嫡男で後継者でもある兄と、幼い頃病弱で両親がかかりっきりだった妹だけ。今回のこの辺境への嫁入りも、本当は妹であるミレイニアへとやって来た縁談だった。だが、両親の中では、妹のミレイニアはいまだに病弱だと言うことらしい。辺境の土地はミレイニアには過酷だと。では私は?スティファニアは、ボーッと壁を見つめながらそんな問いが頭を横切った。考えても無駄だとため息をつく。
「・・・もうどうでもいいわ。幸せなんて望んでも良いことない。だって・・・私じゃなくてよかったって事だもの」
スティファニアの呟きは何を示しているのか。男爵が自分に姿を見せないことで気落ちしているのか。それとも、王太子の婚約者の座を掴むことができなかったからなのか。どちらにせよ、スティファニアの中では、自分は誰にも選ばれない女なのだと結論付けた。婚約者もいないまま、この地へと嫁ぐことになった。いきなり妻。だが、男爵本人が姿をあらわさない。望まぬ花嫁など迷惑極まりないという事だろう。そうやって自分の心と折り合いをつけるように静かに毎日を過ごしていった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
103
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる