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受け入れて貰わねばいけないと言うこと
しおりを挟むそれからと言うもの、屋敷の中では腫れ物を触るような扱いだった。特に妹ミレイニアにはひと目も触れないような徹底ぶり。逆上したスティファニアが危害でも加えるかもしれないと思ったのだろう。侯爵家全体で守られている。そんな印象さえ受けた。自分はもう蚊帳の外の人間なのだと思うほど。それに反してスティファニアは静かなものだった。未来への諦め。もうここへは戻ってこないだろうなどと考えながら身の回りの整理や辺境へ持っていくものの準備をしていた。そして一月はあっという間に過ぎ、出立の日が来た。見送りに出てきたのは丁寧な態度を崩さずにいてくれた老執事のみ。
「・・・お世話になったわね」
「お嬢様、お身体はご自愛ください」
執事はただそれだけを言った。嫁に行くご令嬢の見送りとしてはあまりにもさみしい光景。結局、この日まで結婚相手となる辺境を守る男爵本人には会えず終い。どんな男だろうと受け入れて貰うしかないのだ。受け入れる側ではない。スティファニアには帰る場所はもうそこしかないのだから。
涙も出ないまま、感傷に浸る事もないまま振り返り、待っていた馬車に歩を進める。馬車の前で、爽やかな青年が待っていた。まさかこの人が夫になるのかと伺うような目で見ていると、青年は言った。
「主に仕えておりますレスタと申します。本日は辺境を離れることのできない主の代わりにお迎えに上がりました」
恭しく礼をされるが、スティファニアは思う。少なくとも、花嫁は男爵本人には歓迎されていないのだろうと。
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