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傷をつける場所さえない

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「陛下ははじめ、侯爵家にとって後継ぎとなる長女のお前を王都に残す事を提案された」

「跡継ぎ・・・」


そして次の言葉で自らの自信までも粉々に砕かれる事となる。


「長女であるから家を継がせるつもりなのだろう?とな。そうおっしゃったという事は、お前は婿をとるのだろうと思われているという事だ。あれだけ側に置いて貰いながら、候補の一人にすら入っていないとは・・・本当に嘆かわしい」


国王に王太子の婚約者候補として、数に入れてももらえていなかった。その事実がスティファニアに重くのしかかる。


「だが、ミレイニアの身体の事を考えると、ミレイニアを辺境にはやれない。侯爵家には男児はいないからな。ミレイニアに婿を迎えるか・・・縁戚から養子をもらうか考えていると陛下には話してある」


父の中ではもうこれは決定事項なのだ。何を言っても覆す事の許されないものだ。


「陛下はそれで・・・良いと?」

「あぁ、侯爵家がそれでよいのならとおっしゃってな。それに、もしかするとミレイニアが王太子妃候補として婚約者に選ばれるかもしれん」

「・・・え?」

「だってそうだろう?王太子殿下にはまだお相手はいない。ずっとお側にいながらお前にはその話はこなかった。だとすると、ミレイニアがデビュタントを迎えるのを待っておられたと考えてもおかしくないんだぞ?婚約者のいない家格の釣り合う令嬢はほぼいないんだ。そう考えるのが自然だろう?」


もう、何を言われても傷つく事はなかった。傷がつきすぎて、新たな傷を作る場所が見つからないのだ。妹が王太子妃候補として選ばれるという期待に、侯爵がご機嫌に高らかに笑う中、スティファニアは静かにそうですねと言い、執務室を後にした。



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