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恋した君と愛する君
サイラスを取り巻く環境
しおりを挟むサイラスは敷地内にある別邸に移された。昼間に食事、身の回りの世話を行う使用人以外は誰も寄り付かず、基本サイラスは一人で過ごしていた。
サイラスが屋敷にこもっているという話を聞き、幼馴染のシルフィが訪ねてくる。彼女は親交のある家の令嬢で、宰相の娘でもあった。
「サイラス様、お加減はいかがです?最近暖かくなってきたので、お庭の花が綺麗に咲いておりますよ」
「サイラス様、最近、王都に新しいお店ができて、若いご令嬢に人気なんですって」
「サイラス様、学園では・・・」
シルフィは学園を卒業するまでの一年半、必死にサイラスに話しかけるが、サイラスは虚無を見つめたままほとんど反応しなかった。シルフィが学園を卒業すると、彼女も屋敷を訪れなくなった。
サイラスには弟がいた。弟のクライスは次男である為、婿に入る家を探していた。なかなか縁がなく、難航していたが、次期当主となる事が決まると、それまでとは変わって釣書が山のように送られてくるようになった。
すぐに婚約者が決まり、夫婦となるも、二人の間には一年の間、子ができる兆しがなく、夫婦仲が悪くなり離縁となった。二人目の妻を迎え一年半が経つが、まだ子供ができた兆しはない。そして医師から告げられる。
「僕が機能不全!?」
「えぇ、検査の結果、奥様ではなくクライス様のようです」
「・・・そんな・・・」
「クライス」
「・・・父上」
「こればかりはどうにもできんな・・・養子を迎える事もできるが、できれば正当な血筋で後継が欲しい。そこでだ、サイラスに子を持たせ、いずれ公爵家の跡取りとして迎えようと思う。異論はないな?」
「・・・はい」
クライスは二人目の妻とは関係は良好だった。クライスの事も理解し、寄り添ってくれた。
「サイラス」
「父上・・・」
「お前に話がある」
「・・・話・・・ですか?」
滅多に別邸に来ない父親に、あからさまに怪訝な顔を向けるサイラス。
「まぁ、そうイラつくな。お前に釣書を持ってきた。好きな娘を選べ」
「なんですか・・・急に」
「お前も閉じこもってばかりだろう。誰か側におれば気も変わろう」
「・・・」
「明日また来るからな」
そう言い残し、公爵は出ていった。
「今さらなんだと言うんだ・・・ん・・・?・・・マーガ・・・レット」
たくさんの釣書の中に、赤い髪と紺に近い色の瞳の令嬢の姿があった。
「そっくりだ・・・マーガレット」
その令嬢は、かつてサイラスが執着した、第一王女マーガレットに見目そっくりな少女だった。
「サイラス、どうだ、気にいる娘はいたか?」
サイラスは無言で一枚の釣書を差し出した。
「マーガレット・・・驚くほど似ておるな。まだ諦めきれぬか・・・まぁ、よい、似ておっても別人だ。近いうちに顔合わせをする」
そう言い残し父は去って行った。
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次回
俺は君の事をレットと呼ぶ
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