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想い合っていた恋人だった二人
子爵令息ハリーの本音
しおりを挟むエリアナには密かに想いを寄せていた相手がいた。領地が隣であり、幼い頃から行き来していた幼馴染のハリー・ユリシール子爵令息。彼に密かに想いを寄せていた。しかし、幼馴染という関係上、中々、恋愛という言葉が合うような関係には発展しなかった。時が経てば、もしかしたらそういう事になって、婚約者になってゆくゆくは・・・などと考えていた。そんなその想いが無惨にも粉々に砕かれてしまった。丸一日泣いた。でも、時間は待ってくれない。メイド達に手伝ってもらいながら出発の準備は進められていった。
出発の前夜、アカシア家にハリーが訪れた。二人は屋敷の近くの、小高い丘の上に並んで座る。
「エリー・・・聞いたよ、殿下の婚約者になる事・・・」
「・・・えぇ・・・」
「・・・辛いかい?」
「どう・・かしら」
「・・・無理・・・してるんだろう?」
「・・・」
「・・・」
「ハリー・・・私、ずっとこっちにいると思っていたわ」
「・・・あぁ」
「ゆっくり関係を築いて、普通の幸せな家庭をもって・・・」
「・・・うん」
「子どもは三人くらいかしらね・・・とっても賑やかで・・・」
「・・・」
「歳をとっても、お互いを大事に過ごせる未来を想像してたわ」
「・・・」
「・・・どうして・・・どうしてこうなってしまったの・・・」
「・・・エリー」
「私・・・何か悪い事したの?」
「エリー、聞いてくれるかい?」
それまで静かに話を聞いていたハリーが話し出す。
「僕が5歳の頃、ある日屋敷に女の子が来たんだ・・・赤い髪で緑の瞳の可愛い女の子。表情がくるくる変わって、見ていて飽きなかった。好きになるのにそう時間はかからなかったよ・・・」
ハリーは想い出をぽつり、ぽつりと語っていく。
「小さかった僕は、その女の子と一緒にいられればよかった・・・でも、歳を重ねるごとに成長していくその子を見ていて、段々と将来を考えるようになった。その事を父上に話したんだ。そしたら、相手の家とは家格が違いすぎる。難しいと言われたよ」
エリアナはハリーの気持ちを知る事ができ、嬉しかった。いつか一緒になれたらと思っていた。きっとハリーは父親の言葉に諦めたのだろうと思っていた。
「でもね・・・気持ちって、簡単には変わらないんだ・・・諦めきれなかった。それは今でも」
ハリーはエリアナの瞳を見つめる。
「ハリー・・・」
「大人になって、当主として領地を引き継いで、自分で力をつければきっと婚約者の座を得ることができると思っていたんだ。まさか・・・横から掻っ攫われるなんて思いもしなかった・・・悔やんでも悔やみきれない・・・もっとはやく行動に移していれば・・・僕の家の爵位がもっと高ければ!」
無言の時間が流れる。
「エリー・・・王命は覆す事はできない。互いに違う相手と結婚する事になる・・・なぁ・・・約束をしないか?」
「約束・・・?」
ーーーーーーーーーーーーーー
次回
結婚する相手に情を持っても、愛は他にあっても許して欲しいと思うんだ・・・
誰にも邪魔されない、僕達だけの時間だ・・・
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