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公爵令嬢ナディアに恋した伯爵令息
賑やかで楽しい毎日
しおりを挟む想いが通じ合った二人。そこへ近づいてくる男がいた。
「くっくっくっ・・・話は上手くいったようだが、少々格好悪いな?マルクス」
「ち、父上!」
マルクスは慌ててナディアから離れる。
「宰相様!お茶をご馳走になっておりました」
ナディアは慌てて立ち上がり、カーテシーにて挨拶をする。
「そうかしこまらずとも良いのですよ。息子から話は聞いておりました。来る縁談を全て断り、何も聞き入れず、どうしたものかと頭を抱えておりました。しかし、話を聞いて納得いたしました。半年前に王太子殿下とナディア様の婚約が解消となったときに、息子からもう少し待ってくれと懇願されたのです。いますぐは動けない。ナディア様のお気持ちが落ち着くまではと。淑女の鏡であるようなあなたが、感情を露わにされるほどに傷ついていたのでしょう?それを無理強いはできないと言われたものでしてね。格下の伯爵家ではありますが、ナディア様さえよければ、エレノス伯爵家は歓迎いたしますよ。なぁ、ダリア?」
宰相は、後ろを振り向き声をかけた。
「えぇ、ナディア様、いえ、ナディアちゃん!歓迎も歓迎!うちは息子しかいなくてむさ苦しいの。こんなに可愛らしい子が娘になるなんて嬉しいわ。もう、うちに住んでくれないかしら?たくさんお出かけして、おいしいものを食べましょう?演劇もいいわね。一緒にお菓子作りなんてどうかしら?」
「母上、それでは、私との時間がなくなります!」
「もう、いいじゃないの!初めての娘なのよ?」
「ダメです、ナディア様が減ります!」
「嫉妬深い男は嫌われてしまうわよ?」
「なっ!?・・・・・ナディア様・・・嫌わないでください・・・」
「そんな事で嫌いにはなれませんわ。好きだという事ゆえでしょう?嬉しいだけですわ」
「・・・ナディア様・・・」
「ふふっ・・・賑やかな毎日が遅れそうで楽しみです」
「さぁ、そうと決まればワルシャワ公爵家に婚約の打診をするぞ!マルクス」
「はい!」
公爵家はエレノス伯爵家からの縁談に、大手を振って喜んだ。二人は婚約者となり、早く一緒に住みたいと言うマルクスの母の熱望により、婚約の書面を交わすとすぐにナディアは伯爵家へと移り住んだ。
「ディア?・・・あれ、ディアー?」
「なんだ、マルクス。ナディアちゃんなんらダリアと出掛けてるぞ?」
「はぁ・・・もう、また母上ですか!」
「父上、ディア見ませんでしたか?先程から姿が見えなくて・・・」
「あぁ・・・それなら、ドレスを扱ってる商会の者が来ているとかで、ダリアと一緒にいるはずだが?」
マルクスは応接間に走った。
「母上!!いい加減にしてください、私のディアを連れ回さないでく」
「ちょっと、マルクス!女性の着替え中に覗くんじゃありません!!」
「なっ・・・覗いてなど!断じて覗いてなどおりましぇん!!」
(噛んだわ・・・)
(噛みましたわ・・・)
母に注意されてその方向を向いてしまったマルクスの目線の先には、今まさにドレスを試着しようと薄着姿のナディアがいた。
「マルクス・・・恥ずかしいので・・・その・・・」
「・・・す、すみませんっ!!」
マルクスは勢いよく部屋から出ていった。部屋の中からは賑やかな笑い声が聞こえていた。ナディアは毎日笑顔になり、楽しい日々を過ごしていった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
・・・私のせいよ・・・
君のせいじゃない
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