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公爵令嬢ナディアに恋した伯爵令息
正直で優しい人
しおりを挟む「ナディア様・・・私を選んでくれませんか?・・・と言っても世界一幸せにはなれません」
自身の手をとって欲しいというマルクスは、何故か幸せにできないと言う。ナディアはその意味がわからず次の言葉を待つ。
「?」
「ナディア様を妻にする私が世界一の幸せを手にするんです。ナディア様は私に愛されますが、世界一は譲れないのです。二番目にしか・・・できません。図々しいお願いではあるのですが、それでも・・・私を選んで欲しいんです。私は騎士達のように強くありません。王族ほどの権力はありません。知恵と人脈と計算で、あなたの盾になります。傷ついても倒れません。でも、私はあまり強くないので、側で支えて頂けると嬉しいのです」
「・・・」
ナディアは言葉に詰まった。絶対幸せにするなどの言葉ではない本音。絶対なんてないと、傷ついたナディアには、心にすっと入ってくる正直な言葉だった。こんなにも優しく強く生きていける人が、自分はあまり強くないと言う。きっと、この人は正直な人。そして自身を認めてくれる人。
「マルクス様・・・嬉しいです」
「ナディア様!!」
マルクスは立ち上がり、ナディアの側に歩み寄る。膝をつき、ナディアの手をとり、瞳を見つめる。
「ナディア様、私と恋を・・・しましょう・・・あなたを誰かの後妻になんてさせません。歳の離れた殿方の所へは行かせません」
マルクスは真剣な顔付きから、ふわりと微笑みを浮かべた。
「馬に乗って遠出して、天気のいい日はピクニックしましょう。湖のほとりで涼みましょう。あなたにはサファイアを。私はアメジストを身につけたい。記念日には王都のレストランでディナーをしましょう。あなたとしたい事がたくさんあります」
にこやかに話していたマルクスが、とっていたナディアの手の甲に自身の額を擦り付けた。
「私は、そんなに身目麗しくもありません。剣術も得意ではありません。女性には慣れていないので、楽しませることは苦手です。面白い事も、冗談の一つも言えません・・・ですが、ナディア様への想いは、誰にも負けません。だって、7年も片想いしてきたんです!負けるはずがありませんよ!」
「・・・私でよろしいんですか?」
ナディアからの問いにマルクスが顔を上げる。
「ナディア様がいいんです」
「・・・でも、婚約破棄されるような女ですよ?」
「殿下に見る目がなかっただけです」
「私は・・・美人ではありません・・・」
「ナディア様はお美しいです。見た目はもちろん、心も」
「・・・」
「もう、言っておきたい事はありませんか?返事は、はいしか聞きたくありません。僕と・・・婚約してください」
「・・・・・はい」
マルクスは喜びのあまり、膝をついたまま、ナディアの腰に手をまわし抱きついた。胸に顔を埋め、子どもが甘えるように。ナディアは驚いたが、まるで黒毛の大型犬がなでてほしそうに甘えているようで、可愛くてしかたがなかった。マルクスの黒い髪を手に絡ませて、梳きながら優しく撫でる。マルクスは・・・赤面していた。
(し、しまった・・・抱きつくところを・・・間違えた!)
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
断じて覗いてなどおりましぇん!!
(噛んだわ・・・)
(噛んだわね・・・)
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