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25、騎士として一人の男として

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サファイア宮の部屋に戻り、ベッドのフチにミーティアを座らせる。

バージルはミーティアの前に膝をつき、俯いたまま話し始める。

「おれはティアの騎士なのに・・・守れなかった」

「ジル、あなたはちゃんと守ってくれたわ」

「いや、もっと早くに気付けたはずなんだ。今朝サファイア宮にいた騎士達が、いつもと違う様子だとすぐに気付いていれば!サファイア宮から離れたりはしなかった!」

「・・・ジル」

「・・・騎士失格だ」

ミーティアはベッドから立ち上がると、床に膝をつき、バージルの首の後ろに腕をまわしてしっかりと抱きしめた。

「いいえ、あなたはわたくしの騎士よ。わたくしの騎士はあなただけ。助けに来てくれてどれだけ嬉しかったか。もうダメだって思ったの・・・助けに来てくれて抱きしめられた時、あぁここが、ジルの腕の中が私の居場所なんだって思ったわ」


「・・・ティア」

「だから自分を責めないで」

「でも・・・」

「わたくし頑張ったわよ。まだご褒美貰ってないのだけれど?」

「ティア?」

「キスして・・・」

「・・・ティア」

「キスしてよ・・・」

静かに唇を重ねる。一度は離れたが、すぐにまた互いを求め合う。何度も何度も、確かめるように、不安を消すかにように。


「ごめん、ちょっとやりすぎた」

「いいえ、もっとご褒美貰わないと足りないくらいよ」

「ああ、ティアは頑張ったよ」


そう言って、また何度か口づけを交わし、互いをしっかりと抱きしめた。



コンコンコン。

ノックする音がして、国王が入ってくる。


「ミーティア、バージル」

「お父様」

「落ち着いたか?」

「ジルがいるから大丈夫」

「わしよりバージルか、少し妬いてしまうな」

「お父様に嫉妬されても嬉しくないわ」

「父は悲しいぞ」



「陛下、ライアン殿下は・・・」

「ああ、殿下は貴族牢で近衛に監視させておる。明日にでも隣国に送り返す。もちろん厳重に抗議し、しばらくは入国を拒否する」

「そう、ですか」

「今回はわしが招いた失態だ。ミーティアすまなかった。国交を優先し、お前の気持ちや意志は全く考えておらんだった。バージルがおるから大丈夫であろうとたかを括っておった。婚約の話も最初から断るつもりであった。まさか何度も顔を合わせておる国賓なのに、こんな事になろうとは・・・」

「お父様、起きた事は仕方ありませんが、わたくしに二度と縁談は持ってこないでくださいませ!わたくしにはジルがいるのです。ジルではないとダメなのです。これはお父様でも譲れません」

アルフレッドは、国王であると同時に親である。あんなに小さかった娘が、愛する者を守ろうとする強い意志を見せている。



「ミーティア!」

「お母様!」

「怖い思いをさせましたわね・・・私が早くに気付いていれば、こんな事にはならなかったのに・・・これも全て陛下の落ち度です!反省しているのですか!」

「すまない・・・」

「お母様、怖い思いはしましたが、結果何もなかったのです」

「ええ、本当によかった・・・バージル感謝します」


「いえ、俺にも落ち度がありました。異変に気付いていれば、もっと早い段階で食い止める事ができたのです。本当に申し訳ありません」


「頭を上げて、バージル。あなたはきちんとミーティアを守ってくれているわ。この子が泣くだけではなく、きちんと意志を示している。あなたを守ろうとしている。こんな強い子になったのは、バージル、あなたの存在があるからよ。これからもミーティアの側で支えてくれるかしら?」

「俺は王女殿下に騎士の忠誠を誓いました。お望みならばいつまでもお側に仕えましょう」

「いいえ、騎士としてだけではなく、一人の男性として、心も守ってあげて」

「はい、王妃殿下のお心のままに」

「さぁ、陛下、後処理があります、行きますよ!」

(王妃様怒ってるな・・・陛下より王妃様の方が強い・・・うん、怖い)

「ああ、ミーティアよ、ゆっくり休んでおくれ。バージル頼んだ」

「御意」

二人は1日、部屋の中で寄り添うようにして過ごした。







ーーーーーお知らせーーーーー

近日、新作投稿開始します

仮タイトル

【影、落ちました】

王家の侍従で影としての裏の顔も持つノアール。ある日、落ちてしまう。屋根から!?

感情を表に出さないノアールは、ある1人の令嬢から絆され、感情に抑えが効かなくなってしまう。

別人のようになってしまったノアールは、独占欲丸出しの、まるでじゃれつく大型犬!?

女性にべったり独占欲丸出し、怖がり甘えたな年上男子が好きな方は是非!!


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