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二人が感じた違和感
しおりを挟む「はぁぁぁぁ・・・美味しかったですぅ~」
向かいの席で満足そうな笑みを浮かべてメイドのララがお腹をさすっている。
「ふふっ、満足できたようでなによりだわ」
「もう食べに来れないのが残念で仕方ないです・・・」
「領地から近いのだから、また来ればいいだけのことでしょう?」
「いいんですかっ!?」
そんな賑やかなやり取りを眺めていたイアン。
「そんなにここの料理が気に入ったのなら連れてきて正解だったよ。店の雰囲気はお嬢さん方にはどうだろうと思っていたけど、味は確かだからね」
朗らかに笑みを浮かべながら頬杖をついているイアンは、お世辞にも上品とは言えない。だが、先ほど目の前で食事をするイアンの作法が、あまりにも洗練されており、ローゼリアはそれに対して違和感を感じていた。
「えぇ、とても美味しかったです。しかし・・・」
「なんだ?やっぱり女性は雰囲気が大事だったか?」
イアンが少しだけ気まずそうな表情で、頭を搔いている。
「いえ、それはいいのです。こういった場所はこれまではあまり来れませんでしたし、新鮮でよかったですわ」
「じゃあ、何が気になるんだ?」
「イアン様ですわ」
「僕?」
イアンは内心ドキリとしていた。自分の何かが気に障ったのだろうか。
「イアン様は、本当にパン屋の息子さんなんですの?」
「それ、私も思いました!」
メイドのララも、違和感に感じていたようだ。
「なんだ?パン屋の息子には見えないって言いたいのかい?」
「えぇ」
「この顔のせいか?」
イアンは納得がいかないといった様子で、首をかしげている。
「顔?顔は関係ありませんわ」
「じゃあ、なんでそう思うんだ?」
「私とララは何に見えますか?」
「君たち二人かい?ん・・・私服だが、ご令嬢と付き従っているメイドってところか?」
「えぇ、当たりです」
「だろうな。特にあんたの言動が、お嬢様そのものだ。しかも、随分と教育がしっかりなされたな」
「それです」
「それ、とは?」
「私たちが令嬢とメイドだとわかって接しているわりに、イアン様は堂々とされています。高位貴族であられるか、貴族だと気付いていないのか。どちらかだと思いました。ですが、聞けば、私たちがどこぞかの令嬢とメイドだと気付いておられた。だとしたら、私達よりご身分が上だという事です。それに、何よりも、食事の作法が洗練されすぎていましたので」
イアンは、目を見開いたが、さすがだなと感心していた。ますます手に入れたい存在だと、目の前のローゼリアを見つめていた。
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