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おすすめの食堂
しおりを挟む結局街に詳しくはないローゼリアとメイドのララは、パン屋の息子であるといったイアンに案内され、おすすめだと言う食堂へと入店した。
「いらっしゃいま・・・とうとう彼女ができたのかい!?」
「大袈裟な・・・旅のお嬢さん方を案内しただけさ」
イアンは、食堂の女将さんであろう、恰幅のいい女性に対して、気安い言葉で返し、苦笑いしている。
「なんだい・・・女性の視線を集めるような美丈夫が、彼女もいないなんて、男色を疑っちまうね・・・」
女将さんらしき人は、イアンを残念そうな目で見ている。
「俺が相手を作らない話は今どうだっていいだろう?それよりも、お嬢さん方が肉料理をご所望だ」
「はいよっ、だが、うちは労働者の男達のような大食らいが来るような店だが、本当によかったのかい?イアンももっと洒落た店に案内すればよかっただろうにねぇ」
女将は相変わらず、イアンを残念な男だと評価している。
「ふふっ」
「どうかしたか?」
「いえ、とても元気な方で、とても楽しくなりますわ」
ローゼリアはお女将に向かい、声をかけた。
「イアンさんがおすすめだと言われるのですから、きっと味は間違いないのですわ。ララがお肉を食べたいと言うのですけれど、おすすめはありますか?」
「お肉かい。じゃあ、鴨のステーキなんてどうだい?お嬢さん方なら、ハーブなんかの香草焼きなどが食べやすいかもね」
「では私はそれで。ララは?」
「女将さん、香草焼きもすてがたいのですが、私は味の濃いお肉が食べたいです」
冷静に話しているようでも、ララのテンションは最高潮だ。瞳の奥が爛々と輝いている。
「お?行ける口だね。うちは体力勝負の労働者の胃袋を満たす料理が中心さ。そっちのお嬢さんは、ガーリックソースなんてどうだい?」
「はい、それにします!」
間髪いれず返事をするララに、ローゼリアも笑みがこぼれる。
「じゃあ、出来上がるまで待ってな」
颯爽と女将が去っていく中、ローゼリアは視線を移す。
「イアンさんもご一緒されませんか?」
「いや、僕はいいよ」
「そうですか?人数は多いほど楽しいと思ったのですが」
「・・・仕方ないな・・・じゃあ、特別だ。僕も料理を頼んでくるよ」
そう言って立ち去るイアンを横目に、メイドのララが訪ねてくる。
「イアンさん、いい人でしたね」
「えぇ、こういう出会いもいいものね」
「でも、お嬢様、人は皆いい人ばかりとは限りませんから、知らない殿方に着いていってはダメですよ?」
「わかってるわ」
笑い合う二人。そんなローゼリアとララを、イアンと食堂の女将が、探るような視線でキッチンの影から見ていた。
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