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マリアンヌの涙

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「そんなっ!・・・せっかく頻繁にお会いできるようになりましたのに・・・っ」


悲痛な叫びとともに涙目で訴えてくるのは、ローゼリアをお姉様と慕う、レヴィス公爵家の令嬢、マリアンヌだ。ローゼリアは、領地へと移る事を知らせに来たのだが、それを聞いたマリアンヌが、必死に涙を堪えながら、ローゼリアに会えなくなる事を嘆いている。侯爵領は王都から馬車で1日、単騎で駆けても半日はかかる距離だ。おいそれと気軽に会える距離ではない。


「マリアンヌ様、ずっとお会いできないわけでもございませんわ。たまにはこうしてお会いしましょう。日帰りができる距離ではありませんから・・・そうですね、その際はお泊まりなどどうでしょうか?」

「お、お泊まり?」

「えぇ、ぜひ侯爵領に遊びにいらしてください。領地を案内致しますわ。侯爵領の屋敷に泊まって頂いて、そうですね。誰も叱るものもおりませんし、おしゃべりして夜更かししちゃいましょう」


マリアンヌにとってはこれ以上ない提案だった。ローゼリアに会えるだけでも嬉しいのに、まるで本当の姉妹であるかのような過ごし方を無邪気にはしゃいだ様子での提案。断る理由もない。


「いいのですか!?」

「えぇ、失礼なことかもしれませんが、マリアンヌ様の事は実の妹のように思っていますのよ?」

「・・・お、お姉さまぁー!!」


もうマリアンヌの涙腺は崩壊である。


「マリアンヌ様、泣かないでくださいませ。淑女に涙は似合いませんわ」

「うっ、ぐすっ、ご、ごめんなさいっ」

「本当に泣き虫な妹です事」


ローゼリアは優しく背中に手を当てながらマリアンヌの頭を撫でた。公爵家の夫人、つまりリチャードとマリアンヌの母は、マリアンヌを産んですぐに儚くなった。故に二人は幼い頃から母親の愛に飢えているといってもいいだろう。マリアンヌはローゼリアをお姉様と呼びながらも、母のように慕っているのかもしれない。


「一生ついていきますわぁぁぁ~!」

「はいはい」


こんなにも自分を慕ってくれる人がいる。ローゼリアは心があたたかくなっていくのを感じていた。




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