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お手本で友達で
しおりを挟むローゼリアがレヴィス公爵家を訪れてから、またお会いしたいと令嬢マリアンヌから毎日手紙が届く。その度に口許が緩み、ペンを取る。お時間ができましたら是非にと返事をしながらも、マリアンヌに毎回課題のようなものを出すのだ。この小説のここがいいとか、この刺繍の図案が難しいが、刺し終えると達成感があるだとか、このお茶はあまり好まれて飲まれてはいないが、この菓子にとても合うだとか。ローゼリアにとってはただの近況報告。だが公爵家側からしてみれば、マリアンヌの自己啓発には多いに役立っている。だから、公爵家にとって、ローゼリアはマリアンヌのよい手本であり、よき友達であって欲しいと願うのだ。あわよくば息子のリチャードの婚約者にと。だが、王子との婚約が解消された事は、まだ周知されておらず、公爵夫妻は表立っては口にはしない。だが、もしも公の事実となれば、我先に婚約をと話を持ってくるであろう事は目に見えている。だからこそ、ローゼリアもマリアンヌとは会いたいが、自制しているといった所だ。
「マリアンヌ公爵令嬢様も、ローゼリアお嬢様に会いたくて仕方がないのですね」
返事を書いた手紙を届けて貰うようにと呼び出したメイドが声をかける。
「でも嬉しいわ。私には弟しかいないから、妹ができたみたいで嬉しいもの」
嬉しそうに話すローゼリアを見て、これはもしかするとと、使用人達も期待をしてしまう。解消となった王子との婚約。婚約者に選ばれてからと言うもの、年頃の女の子としての時間を持つこともできないまま、勉強に教育にと時間を割いてきた。淑女の仮面を被り、無邪気な笑顔など見せなくなったのは一体いつからだっただろうと思い出せなくなるほどだ。
「毎日お手紙が送られてきますものね、そのうち手紙ではなくご本人が来てしまいそうですね」
クスクスっと笑うメイド。それもあながち冗談ではない気がする。
「だからよ。私が好きなもの、得意なもの、興味のあるもの、また今度お会いするときにそのお話もしましょうねとお手紙には書いてるの。まぁ、毎日送ってくる手紙で、話すことがなくなるほどに熱く語られてしまっているけれどね」
ローゼリアが手紙の内容を思い出し苦笑する。
「それだけお嬢様と懇意にしたいのですわ。上位貴族でありながら、それをひけらかさずに、ただただお嬢様を慕っておいでですからね」
ローゼリアの私室でほのぼのとした会話が行われ、メイドは手紙を持って部屋を出ていった。
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