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【リチャードside】喜びと疑惑

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「やっと・・・やっとだ・・・」


妹マリアンヌとのお茶から帰っていったローゼリアを見送り、リチャードは自室に戻ってきていた。部屋に入ると、ぽつりと言葉を呟いた。ローゼリアを招くためだけに部屋をサロンに改装したリチャード。自身が仕える王子の婚約者であったローゼリアは、どうやっても手に入れる事ができずにいたのだ。ライモンドとローゼリアの婚約がいずれ解消されるかもしれない期待はあった。だが、ライモンドの不貞は公にはされてはいないし、婚約解消の事実も公表されていない。考えようによっては秘密裏に解消されたような状況だ。本来ならば、王子であるライモンド本人が知る話なのである。ローゼリア本人も、帰る前に、この話はまだ内密にお願いしますねと釘を刺された。きっとライモンドに知られたくないのだろう。まぁ、知られたところで、ライモンドは喜ぶだけのような気がする。


「しかし・・・中々難しい状況だ・・・」


リチャードがそう言うのも頷ける。これまではローゼリアは毎日王宮に妃教育を受けに登城していた。だからこそ、何もなくとも会うことはできたし、姿を見ることもできた。だが、それもなくなれば、会うことにすら理由が必要になる。ローゼリアが国王のお気に入りである事。幼い頃にその人柄を気に入られ息子の婚約者にと選ばれた事は周知の事実だ。だから、王子のライモンドが不貞を犯そうが、多少の不祥事を起こそうが、この婚約は解消されることはないと思っていた。お気に入りのローゼリアを手放すことを決めた国王の心境はなんなのか。リチャードは何か意図があるのかもしれないと考えていた。


「まさか、本当に、ミレーヌ様の変わりに他国へ・・・?」


まさかとは思うが、不貞を犯した相手である公爵家の令嬢の変わりに他国へと嫁がせようというのであろうか。だとすれば手に入れるどころが、会うこと自体がままならない。真意がわからない。リチャードは変な焦りを感じていた。まずはそこから確かめないといけない。だが、婚約が解消されたことはまだ内密にと言っていた。だから、この事実を知っているのは、こっそりと聞かされた自分達と、国王、ローゼリアの家の侯爵家ぐらいかもしれない。だとすると、情報収集は難しいかもしれない。リチャードは部屋の中をうろうろし、何か策はないかと頭をフル回転させるのだった。




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