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親と親
しおりを挟む「すまないな、侯爵」
「いえ、しかし、離宮は、王宮とは違って落ち着きますな」
「そうだろう。俺がそうしたんだから」
ローゼリアの父である侯爵が離宮に招かれた。王子ライモンドとローゼリアの婚約解消の為だ。
「ロドルフォ、書類を」
「はい、こちらにございます」
宰相ロドルフォは侯爵に向けて書類を置く。
「侯爵、これには婚約解消後の事が書いてある。よく読んでくれ」
「はい、では失礼します」
侯爵は書類を手にとってじっくりと読む。
「・・・陛下、これは随分とローゼリアに利があるようですね」
「当たり前だろう。こちらの有責なんだ。なんだったら解消ではなく、破棄として事を荒立ててもよかったのだが・・・ローゼリア嬢にわざわざ悪い風評を立てずともよかろうと思う」
婚約解消の書類には、王子ライモンドとカルストフ侯爵家ローゼリアとの婚約を解消する旨が記載されていた。そしてその文言に続いていた文章に侯爵が反応したのだ。
「・・・国王レイドルート・イレイアは、カルストフ侯爵家ローゼリアの願いを聞き入れる・・・」
「あぁ、ローゼリア嬢が願うことは叶えてやりたい。どんな小さな事も、例え無謀な願いであってもだ」
「何故そこまで・・・」
「・・・これまで彼女は大変な努力をしてきた。苦労も多々かけた。賠償金や慰謝料として金銭を渡してもいいだろうとも思う。だが、ローゼリア嬢は、きっと、そんなもの受け取ってはくれぬだろうと思ったのだ。だったら、ローゼリア嬢が困ったとき、手を貸して欲しいときに手助けできればいいと思う。いつでも味方だと示しておきたいのだ」
侯爵も一理あると思った。そして力なく笑みを浮かべたレイドルートであったが、その望みは、願わくば、レイドルートを選んでくれたらなどと、淡い期待も込められていた。もしローゼリアが己を望んでくれれば、大手を降って願いを聞き入れるのにと。
「それはそうと、ローゼリア嬢の今後の予定は?」
「今は、とりあえずこれまでできなかったことをやっておるようです」
「できなかったこと?」
「えぇ、妃教育で、まともに時間もとれず、街に買い物に言ったり、カフェに行ったり・・・明日は公爵家に呼ばれていると言っていましたね」
「そうか・・・」
レイドルートは、近況を聞いたつもりではなかった。知りたかったのは、王都に残るのか、領地に行ってしまうのか。ここでもレイドルートは何も聞けなかった。できれば王都に留まって欲しい。何ならこの手で守りたい。気持ちばかりが大きくなって行くのに、行動にはまったく移せずにいた。
「侯爵、了承できたならサインをくれるか」
「はい、ただいま」
侯爵がサインをし、一枚は侯爵、一枚はレイドルートが控えとして持つ。これにより、正式に婚約が解消となったのだった。
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