43 / 66
チャンス到来
しおりを挟む王子であるライモンドとの婚約がなくなり、婚約者がいない状態となったことを聞いたマリアンヌはあまりの衝撃に固まったが、しばらくすると冷静になってくる。
「お姉様は婚約者がいない・・・」
「えぇ、ですから、王子妃教育もなくなりましたの。だから今回のお茶のお誘いを受け」
「だったら、なおさらお兄様はどうですか!?」
身を乗り出して俄然兄をどうだと進めて来るマリアンヌ。まぁまぁと納めようとしたとき、後方から声がした。
「なおさらお兄様はどうだって、なんの話だ?」
声のした方を振り向くと、入口に腕を組み、少しだけ首を傾げ、怪訝そうな表情でリチャードが立っていた。
「お兄様!大変ですわ!」
「何だ?話が全く見えないが」
「大変ですのよ!」
興奮しすぎてマリアンヌの語彙がめちゃくちゃだ。
「だから何が大変なんだ」
「お姉様がお姉様になれますわ!」
「はぁ?」
「だから、待ち望んだお姉様なんですの!」
「・・・意味がわからん」
「もう!お兄様っ、チャンスがやって来ましたのよ!ローゼリアお姉様、ライモンド殿下と婚約を解消されたそうですの!」
「・・・えっ?」
「だから!お姉様には今婚約者がいないと言うことです!」
公爵令息リチャードの目が途端に見開かれる。バッとローゼリアを見ると、苦笑しながら小さく頷かれた。
「・・・本当・・・なのですか?」
「えぇ、まだ周知はされていませんが、昨日解消の手続きを行ったと父から聞きましたの」
「そうでしたか・・・」
リチャードは、そっぽを向き、口許を手で隠した。そう、リチャードは、このサロンをローゼリアを出迎えるためだけに改装する程にローゼリアに傾倒していたのだ。素肌で絡み合う二人を直に見ているリチャードは、ローゼリアが不憫でならなかった。何故こんな男の婚約者なんだと。俺だったらもっと大事にするのにと。
「その・・・お辛くはありませんか?」
「辛い・・・ですか・・・気持ちとしては複雑という言葉の方があいますでしょうね。殿下の婚約者でなくなったことは、残念には思ってはおりませんが、これまでの努力が報われないのは、非常に辛いですね」
「・・・無駄にはなりませんよ」
「え?」
「きっと、これからの糧になります。いつしか役に立つときがありますよ」
リチャードは、今自分ができる最大の笑顔を見せた。王子の婚約者でなくなった今、妃教育を完了させるほどの優秀なローゼリアを欲しがる家は多いだろう。妹が仲良くしていてよかったとこれほどまでに思った事はなかった。どこの誰よりも、愛してやまないローゼリアの事を早く知れたのだから。
56
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる