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チャンス到来
しおりを挟む王子であるライモンドとの婚約がなくなり、婚約者がいない状態となったことを聞いたマリアンヌはあまりの衝撃に固まったが、しばらくすると冷静になってくる。
「お姉様は婚約者がいない・・・」
「えぇ、ですから、王子妃教育もなくなりましたの。だから今回のお茶のお誘いを受け」
「だったら、なおさらお兄様はどうですか!?」
身を乗り出して俄然兄をどうだと進めて来るマリアンヌ。まぁまぁと納めようとしたとき、後方から声がした。
「なおさらお兄様はどうだって、なんの話だ?」
声のした方を振り向くと、入口に腕を組み、少しだけ首を傾げ、怪訝そうな表情でリチャードが立っていた。
「お兄様!大変ですわ!」
「何だ?話が全く見えないが」
「大変ですのよ!」
興奮しすぎてマリアンヌの語彙がめちゃくちゃだ。
「だから何が大変なんだ」
「お姉様がお姉様になれますわ!」
「はぁ?」
「だから、待ち望んだお姉様なんですの!」
「・・・意味がわからん」
「もう!お兄様っ、チャンスがやって来ましたのよ!ローゼリアお姉様、ライモンド殿下と婚約を解消されたそうですの!」
「・・・えっ?」
「だから!お姉様には今婚約者がいないと言うことです!」
公爵令息リチャードの目が途端に見開かれる。バッとローゼリアを見ると、苦笑しながら小さく頷かれた。
「・・・本当・・・なのですか?」
「えぇ、まだ周知はされていませんが、昨日解消の手続きを行ったと父から聞きましたの」
「そうでしたか・・・」
リチャードは、そっぽを向き、口許を手で隠した。そう、リチャードは、このサロンをローゼリアを出迎えるためだけに改装する程にローゼリアに傾倒していたのだ。素肌で絡み合う二人を直に見ているリチャードは、ローゼリアが不憫でならなかった。何故こんな男の婚約者なんだと。俺だったらもっと大事にするのにと。
「その・・・お辛くはありませんか?」
「辛い・・・ですか・・・気持ちとしては複雑という言葉の方があいますでしょうね。殿下の婚約者でなくなったことは、残念には思ってはおりませんが、これまでの努力が報われないのは、非常に辛いですね」
「・・・無駄にはなりませんよ」
「え?」
「きっと、これからの糧になります。いつしか役に立つときがありますよ」
リチャードは、今自分ができる最大の笑顔を見せた。王子の婚約者でなくなった今、妃教育を完了させるほどの優秀なローゼリアを欲しがる家は多いだろう。妹が仲良くしていてよかったとこれほどまでに思った事はなかった。どこの誰よりも、愛してやまないローゼリアの事を早く知れたのだから。
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