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新しいサロン
しおりを挟む淑女らしくない様子に、メイドから諌められ、シュンとしてしまったマリアンヌ。
「マリアンヌ様、私はとても嬉しかったですわ。さぁ、早く沢山お話をしましょう?ご案内頂けますか?」
マリアンヌは、ぱぁっと笑顔になる。しかし、笑顔を作り直す。朗らかに穏やかに。淑女の笑顔を見せた。
「勿論です。美味しい菓子とお茶をご準備しておりますわ」
マリアンヌは思うのだ。目の前の女神のようなローゼリアのようになりたい。そして尊敬の眼差しを送る。擁護しつつも、注意も含めてくれるローゼリアは、公爵家の使用人達からも絶大な信頼がある。マリアンヌの淑女らしさ、頑張ろうとする姿勢は、あの時ローゼリアに憧れを抱いたから。
「ローゼリアお姉様、こちらですわ」
「ふふっ、いつまで経ってもお姉様呼びは変わらないのですね」
「ローゼリアお姉様はローゼリアお姉様です」
自信満々に言ってのけるマリアンヌを可愛いと思いつつ、案内されたサロンに入る。サロンの一面のガラス窓からは、整えられた庭に、バラの花が咲き乱れていた。
「いつものサロンと違いますのね?」
以前から、ローゼリアが公爵家を訪れる際は、庭園が広く見渡せる大きなサロンに通されていた。だが、今日は、これまでとは違うサロンだ。少し小さなサロンではあるが、趣が全く違っていた。
「そうなのです。ローゼリアお姉様が来られる際は、今後はこのサロンを使用しろと、お兄様からの厳命なのです」
「リチャード様が?」
そう、双子であるマリアンヌとアーノルドには、2つ上のリチャードという兄がいた。リチャードは、王子であるライモンドの側近であるリチャードその人だ。
「この部屋は元はサロンではなく、ただの客室だったのです。この部屋はサロンに改装されて、ローズルームと名前がつきましたの。お兄様曰く、ローゼリアお姉様のお名前にあやかったのだと」
「私の名前にですか?」
「はい、リチャードお兄様は、あれでいて、ロマンチックなところがありますの。きっと、私にローゼリアお姉様のような淑女になれと言う事なのですわ」
苦笑するマリアンヌに、ローゼリアも笑みを返す。リチャードは、いつもライモンドの側に控えており、毎日のように会っていた。言付けぐらいしか言葉を交わしたこともなければ、彼の表情が変わったところを見たことがなかった。何故彼がそんなことをしたのか、ローゼリアは何も検討がつかず、思い当たる事はなかった。
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