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ため息の数

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寝台にすがるように身体を預けていたレイドルート。


「陛下お茶が・・・何をなさっているのですか・・・」


レイドルートが手ずからお茶を入れることのできるように準備をしたルゼが部屋へと入ってきた。目にしたのは寝台にすがるレイドルートの姿。ルゼは残念なものを見るような目でレイドルートを見ていた。


「そこに置いててくれ」

「承知しました。全く、こんなお姿をお嬢様が見れば呆れられるかもしれませんよ」

「呆れられるか・・・」

「毅然とした態度でおられてくださいませ。惚れ直させるぐらいでないと」

「うるさい・・・」

「はいはい・・・冷めないうちに飲まれてくださいませね」


部屋の中にあるテーブルセット。カチャカチャと準備の音がし、静まるとルゼは一礼して部屋を出ていった。レイドルートはのそりと起き上がると、テーブルへと向かう。椅子を引き、力なくドスンと座ると、茶器をじっと見つめる。


「私が茶を淹れてやろう・・・」


ポツリとそうこぼすと、茶器を手にとって茶葉を入れると蒸らしていく。しばらくたち、コポコポと音をたてながらカップへ注ぐ。ルゼの気遣いで、二つ置かれたカップのもう一つにも注いでいく。庭園でも、中庭でも、穏やかな笑みを浮かべたり、他愛もない話もした。婚約者である息子のライモンドについて問えば、困ったような表情を浮かべることもあった。この部屋では、自身が淹れたお茶をおいしいと飲んでくれた。なにもかも、どんな表情でさえ愛おしい。


「・・・はぁ・・・」


どんなに声をかけても、どんなに見つめても。目の前にローゼリアはいない。その現実が、レイドルートに影をおとさせる。今日、 何度目かもわからないため息をつく。昼食程度の時間だと宰相ロドルフォに継げていたため、あまり長居もできないなと考えながらも身体が重く感じられ、立ち上がるのも億劫だった。活力がわかない。そんな言葉が当てはまるだろう。小一時間経っただろうか。レイドルートはゆっくりと立ち上がり、部屋をあとにした。テーブルの上には、手もつけられないままの冷えきった茶が入ったカップが二つ並んでいた。


「お戻りですか」


離宮を出ようとしたレイドルートに料理人ライルが声をかけた。


「あぁ・・・」

「どんなに食欲がわかずとも、食べないといけませんよ」

「・・・そう、だな」


力なく返事をして歩きだしたレイドルートの背中を、ライルは心配そうに眺めていた。




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