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妃にと言った経緯

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「どうしてその様なことをおっしゃられたのですか・・・」

「それは・・・ライモンドとの事で、ローゼリア嬢は相手がいないと言うことになる。数多の貴族家が我先にと縁談を持ちかけてくるはずだ」

「ないとは言えませんな」

「だろう?意に沿わぬ縁談で心を痛めることになるのではないかと思ったんだ」

「確かに一理あります。ですが、陛下。カルストフ家は侯爵家です。断れない縁談があるとするならば、この国では公爵家か筆頭であるデュタン侯爵家くらいでしょう。ローゼリア嬢と歳の釣り合う令息はおりませんよ」

「・・・それはそうなのだが・・・」


レイドルートは考え込む表情を見せる。


「陛下?」

「あぁ、いや、婚約破棄や解消とは、その後の女性にとっては不利に働く事もあると言うだろう?」

「そうですね、女性に瑕疵がなくともそうとられることもあると聞きますな」

「それを気にしてか、ローゼリア嬢は領地に籠るつもりだと言っていたのだ」

「社交界からは離れるおつもりなのでしょうな」

「会えなくなるではないか・・・」


先ほどまで苦々しい表情も見せていたレイドルートの威厳はどこへやら。今のレイドルートは、まるで耳の垂れ下がった犬のよう。今にもクゥ~ンとでも聞こえてきそうだ。


「これまでは会いに行かずとも、毎日王城でお姿を拝見できましたからな」

「それが姿も見れなくなるのだぞ?私は何を糧に励めばいい?」

「・・・それで妃になれと」

「いや、そうではないのだ!決して無理矢理手篭めにしようなどと思ったわけではない!」

「何もそこまでは言っておりませんよ」

「・・・すまん・・・だが、数多の縁談を断り続けるのも限界があると思うのだ。いずれ侯爵も神経をすり減らすだろう。優しいローゼリア嬢の事だ。侯爵が疲れでも見せれば、自分が嫁げば侯爵は縁談を断ることから解放されるとでも考えそうだ」

「そうですね・・・ローゼリア嬢ならそう考えるやもしれませんね」

「だから傷も癒えぬうちは、離宮に籠っていればよいと言ったのだ。私が守ると。籠るのならば領地でも、私の離宮でも同じであろう?」

「同じではないかもしれませんが、陛下が許可する方以外は、誰一人として立ち入ることができない離宮は確かにうってつけ・・・それでローゼリア嬢はなんと?」

「断られた・・・いや、考える時間をくれと」

「そうなのですね」

「離宮に籠って滞在する自分は何なのかと聞かれた。私の大事な客だと。茶飲み友達に会えないのは寂しいと言ったのだが・・・離宮に滞在するも、領地に籠るも同じだ。だからと断られた。焦った私は、客というのがダメならば、妃であれば離宮に滞在する理由にもなると言った。だから妃になればよいのだと・・・」


どうすればその思考になったのか。宰相ロドルフォは頭を抱えた。巻き返せるだろうか。一国の長であるレイドルートの初めての恋。叶えてやりたい気持ちはあるのだが。





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