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困って頼る相手とは
しおりを挟む私の妃のなればいい発言から、侯爵邸を後にして、レイドルートは馬車の中、放心状態だ。つい言ってしまった言葉だったが、今となっては取り消しはきかないし、親子ほど歳の離れたオジサンが何を言っているんだと思われただろうなどと考えると気が滅入る。ぼんやりと外を眺めていると、視界に多彩な色が飛び込んできた。赤に黄色に水色に桃色。その鮮やかさにハッとする。
「おい、止めてくれ!」
レイドルートの一声で御者は馬を止める。
「陛下、いかがなさいましたか?」
馬車の外から、護衛で並走してきていた近衛騎士が声をかけてくる。
「花・・・」
「花・・・ですか?」
騎士はぐるりと見渡すと、街道に花屋を見つけた。
「欲しいものがおありでしたら私目が手に入れて参りますが?そうですね、王宮の庭にもいくらでも咲いているのでは?」
「・・・そう、だったな」
「どうなされます?」
「あ、あぁ、王宮に戻って良い。止めてすまなかったな」
騎士は一礼し、御者に再度王宮へ進むように声をかけた。侯爵邸での話は、屋敷の外で待機していた騎士達や御者は知らない。だからこそ、国王がなぜ急に花に興味をもったのかがわからなかった。ここに宰相がいれば、うまいこと言ってレイドルートを宥めたであろう。適当に思い付きで手に入れた花などでお心が掴めますか?花にも意味があります、お渡しになるには最適なものを選んだ方がよろしいかと。そう言ってくれたはず。しかしレイドルートの頭のなかは花の事でいっぱいになっていた。ただ贈り物をしたい。そんなささやかな気持ちもあり、もしローゼリアが自分に興味をもってくれたならと期待もある。そして、その心をごまかすように、これは詫びなのだ。息子ライモンドがしでかした事への詫び。そう自分に言い訳するかの如くに何度もそう言い聞かせるように反芻していた。そして王宮に到着するやいなや、レイドルートは急いで執務室へと駆け込む。
「ロドルフォ!」
勢いよくドアをあけ駆け込んできたレイドルートに、宰相ロドルフォは何事かと驚く。
「お帰りなさいませ、どうなされたのです?」
「花だ!」
「花、とは?」
「ローゼリア嬢に花を贈りたい!」
「・・・歳の差を考えておられますかな?受け入れてもらえる自信がおありだと?」
「そ、そうじゃない。ライモンドのやらかしへの詫びだ。形の残らぬ花や菓子なら構わぬだろう」
「そういう事でしたか。それでどのような花を?」
「・・・どうすればいいかわからないからお前のところに来たんだろう・・・」
恨みがましくそう言ったレイドルートに、宰相は呆れにも似たため息をつき、仕方ないですねと重い腰を上げた。
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