離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】

文字の大きさ
上 下
22 / 66

娘の幸せを願う

しおりを挟む


「ローゼリア、陛下のお言葉お前はどう考える?」


レイドルートが侯爵邸を出た後、屋敷では神妙な面持ちで侯爵夫妻とローゼリアが向かい合っていた。


「・・・よくわからないと言ったところが正直な気持ちです」

「ローゼリア、あなたは私達の宝よ。たった一人の娘。幸せになって欲しい。私達が願うのはそれだけ」

「お母様・・・」

「そうだぞ、ローゼリア。領地にこもっても、陛下が仰られたように、婚約の打診をいつまでも断り続けるのにも限界はある。陛下の妃となれば守っていただけるだろう・・・だが」


侯爵はうつむき何かを考えているようだ。


「陛下のお言葉を信じるなら、ローゼリアに対して親身に思って頂けているのは確かだ。しかし、妃となれば、一度は婚姻した身となる。先の事はわからないが、初婚でないというのは後に悪条件となりかねないと懸念がある」

「えぇ・・・格好の噂のまとになるでしょうね。目先の安全をとるべきか、未来を見据えてじっと耐えるか・・・何が一番ローゼリアにとってよいのでしょうね・・・」


自分の幸せを願って大いに悩んでくれている。両親に愛されている。心からローゼリアは嬉しく思っていた。貴族の娘であれば望まぬ政略結婚だってある。だが両親は、これまでもローゼリアに政略結婚を無理強いはしてこなかった。侯爵夫妻は恋愛結婚でおしどり夫婦として社交界でも有名である。ローゼリアに王家からの婚約打診があった時も、何度も本当にいいのかと訪ねてくれた。


「お父様、お母様。心配してくれている事、幸せを願ってくれている事、しっかりと感じておりますわ。悔いのないように、しっかりと私自身の今後を考えてみようと思います。少しだけお時間を下さい。答えが出るまで大いに悩んでみようと思います」


娘の柔らかな笑みに、夫妻は少しだけ安堵していた。


「ローゼリア、一人で抱え込まずに何でも話しておくれ」

「そうよ。あなたは私達の大事な可愛い可愛い娘よ。あなたの出す答えに反対するつもりはないわ。しっかりと考えて、自分で納得のいく答えを出しなさい」

「ありがとうございます。あまり気負わずに考えてみようと思います」


ローゼリアは両親と別れ、自身の部屋に向かった。部屋にたどり着くと、そのまま倒れこむように寝台へ身を投げ出した。


「・・・いろいろありすぎて心が追い付かないわ・・・」


しばらくそのままモヤモヤと考えていたが、自分が思った以上に疲れがあったのだろう。ローゼリアは気付けばそのまま眠ってしまっていた。









しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

盲目の令嬢にも愛は降り注ぐ

川原にゃこ
恋愛
「両家の婚約破棄をさせてください、殿下……!」 フィロメナが答えるよりも先に、イグナティオスが、叫ぶように言った──。 ベッサリオン子爵家の令嬢・フィロメナは、幼少期に病で視力を失いながらも、貴族の令嬢としての品位を保ちながら懸命に生きている。 その支えとなったのは、幼い頃からの婚約者であるイグナティオス。 彼は優しく、誠実な青年であり、フィロメナにとって唯一無二の存在だった。 しかし、成長とともにイグナティオスの態度は少しずつ変わり始める。 貴族社会での立身出世を目指すイグナティオスは、盲目の婚約者が自身の足枷になるのではないかという葛藤を抱え、次第に距離を取るようになったのだ。 そんな中、宮廷舞踏会でフィロメナは偶然にもアスヴァル・バルジミール辺境伯と出会う。高潔な雰囲気を纏い、静かな威厳を持つ彼は、フィロメナが失いかけていた「自信」を取り戻させる存在となっていく。 一方で、イグナティオスは貴族社会の駆け引きの中で、伯爵令嬢ルイーズに惹かれていく。フィロメナに対する優しさが「義務」へと変わりつつある中で、彼はある決断を下そうとしていた。 光を失ったフィロメナが手にした、新たな「光」とは。 静かに絡み合う愛と野心、運命の歯車が回り始める。

癒しの花嫁は幼馴染の冷徹宰相の執愛を知る

はるみさ
恋愛
伯爵令嬢のメロディアは、公爵で若き宰相のアヴィスへ嫁ぐことになる。幼い頃から婚約者と決まっていた、いわば幼馴染の二人だったが、彼が公爵家を継いでからは多忙ゆえにまともに会うこともできなくなっていた。しかし、王太子が結婚したことで幼い頃からの予定通り二人は結婚することになる。 久しぶりの再会も結婚式も全く嬉しそうではないアヴィスにメロディアは悲しくなるが、初恋を遂げることができた初夜、感極まったメロディアがある奇跡を起こして……?! 幼馴染に初恋一途なメロディアとアヴィスの初恋じれキュンストーリー♪ ※完結まで毎日6話配信予定です。 ※期間限定での公開となります。

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

騎士団長の幼なじみ

入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。 あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。 ある日、マールに縁談が来て……。 歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。

冷遇された妻は愛を求める

チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。 そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。 正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。 離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。 しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。 それは父親の死から始まった。

人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない

望月 或
恋愛
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」 ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。 まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。 彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。 そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。 仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。 そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。 神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。 そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった―― ※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。 ※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

処理中です...